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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

ドラマで知るアメリカの死刑制度

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 お国が違えば法律も実践も違う。印象深いドラマのシーンを2つ。

 まずCSI:マイアミ(シーズン2)の第23話、マイアミとNYで合同捜査をすることになったエピソード。マイアミで事件が発生し容疑者を追ってホレイショがNYまで足を運び、NYのマックと一緒に捜査する。その一場面の会話、記憶からの記述なので多少言い回しが正確ではないのでご容赦を。

ホレイショ「今回の事件はマイアミで起訴したい。マイアミなら死刑制度がある」
マック「ニューヨークにだってあるさ」
ホレイショ「ああ。だが、XX年いらい、執行していないだろう」

 ここがアメリカ“合衆国”らしい。州ごとに死刑制度の有無で差があり、実際にどれだけ執行しているかどうかも分かれる。それを強く再認識させられるシーンだった。

 次にボストン・リーガル(シーズン1)の最終話、ボストンにある法律事務所の弁護士・アランが友人に頼まれてテキサスに飛ぶ。ある殺人事件の容疑者は知能が低く、検察の強要で自白してしまい、弁護側はなすすべもない。新たな容疑者をうかがわせる証拠が出たが有罪が確定し、執行が間近に迫っていた。主人公たちはなんとか執行を差し止めようとするのだが、テキサスの判事たちはにべもない。アランは必死の抵抗を試みる。

 「去年の死刑執行の半分はテキサス州ですよ。50州もあるのに1つの州で半分だなんて、おかしいと思いませんか?」

 最後は「どうして彼を殺せるんですか?」とまで懇願した。だが結果は無力さに肩を落とす結果になった。ちなみにドラマの放送は2005年3月、今年のニュースになるが「米テキサス州が死刑を執行、制度復活以降で400人目(AFP)」というのがあった。ドラマはフィクションだが、データは実情をそのまま示しているようだ。多くの国や州が死刑執行を取りやめていくなか、テキサス州だけは違うらしい。

 また友人のチェリーナが「なぜテキサス州に最高裁がないと思う?」とアランに泣きながら話した。まさに驚愕の内容だった。

 「死刑をすぐ執行できるようにするためよ」

 最高裁といっても連邦最高裁ではなく、その州の刑事裁判所として最高裁がないということらしい。つまり控訴は1回のみということか。早く判決と刑罰を確定し、執行も早くやるのだとチェリーナが言っていた。

Boston_legal さらにチェリーナは「テキサスで刑事の弁護士の報酬は低くて、数も足りない。なのに検察の予算は無尽蔵」とも言う。本当だろうか。そこまでシステムと環境が違うというのも驚きだが、それでその執行数になるのかと思えば妙に納得してしまう。テキサス州の風潮を考えると西部劇に出てくるアウトローな保安官のような荒々しさが頭によぎる。

 このボストン・リーガルは一風変わっているが、それは一興であり、とても面白いドラマとなっている(ひょっとしたら「弁護士のくず」が面白いと思う人には合うかも)。特にこの最終回のテキサス州の話は鮮烈な印象として記憶に残り、制作者からの渾身の問題提起だったと思う。

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 こんなに面白いのに日本ではシーズン2以降の放送はまだ決まっていない。そこでWebを散策していたら、アメリカではボストン・リーガルのシーズン1~3までのDVDボックスがセットで販売されているのを発見した。ボックスが3つセットで約$170で、さらにその半額とは……もう目がハートである。

 そのセットが届いた。言語が英語なのは当然だが、字幕がつくかどうか心配だった。ところが字幕は英語、フランス語、スペイン語が選択できるようになっていた。やったあと歓喜の悲鳴。もともと法律専門用語が多いので、英語でも字幕があると助かる。それ以外の言語はあっても全く分からないが、(スキルはないが)フランス語ファンとしてはちょっと嬉しい。今後ゆっくり見ていこうっと。

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