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フェイスブックの「いいね!」ボタンの機能分化現象に関する考察

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 先日、テレビをつけたらちょうど「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)という番組をやっていた。その回は「友達いないと不安史(前編)」がテーマで、ゲストは「孤高の詩人、ヒロシ 齊藤健一」だった。番組では朝日新聞の「便所飯」(※1)が取り上げられ、今の若者は孤独を恐れ(だからヒロシがゲスト)つながりを求めるなどと指摘し、それが今のコミュニティブームを押し上げているという分析だった。
 そのほかの詳細については、こちらのブログが詳しいのでご覧頂くことにして、この放送で筆者が気になったのは次の箇所だ。

  フェイスブックでは「うちのペットが死んだ」という投稿にまで
  「いいね!」を押すという珍現象が起きている。

 そう、これは珍現象のように見える。だが本当にそうなのだろうか。

 フェイスブックでは、「いいね!」(英語ではLike)の使い方を次のように説明している。

Facebookの画面上にはさまざまなところに[いいね!]が表示されています。友達の投稿に「いいね!」をすると、あなたが共感していることが友達にも伝わります。「いいね!」をクリックすることで、自分が共感したものを友達へ伝達・共有したり、広めたりすることができるのです。
http://f-navigation.jp/manual/contactfriend/like.htmlより)

 フェイスブックによれば、「いいね!」ボタンは共感ボタンなのだという。であれば、上記のペットが死んだという投稿に「いいね!」を押してもそれほどおかしくはない。この場合、お悔やみ申し上げるの意味の「いいね!」だということになる。
 しかし、文字だけを見ると「ペットが死んでよかったね!」となってしまい、二人の関係を知らない人にとってはギョッとさせられるやり取りだ。さらに、人によっては思わぬしこりを残してしまう可能性もある。

「いいね!」ボタンの基本機能は「共感の通知」であることはわかったが、最近では別の使い方も多数見られる。
 友達がフェイスブックに写真か何かを投稿したとしよう。それに対してあなたは「きれいですね!」などとコメントしたとする。そこで友達はコメントに対して「いいね!」を押す。
 これは共感だろうか? これは共感とも言えるし、「君のコメントは読んだよ」という儀礼的返答であるとも言える。

 さらにもっと事務的な使い方もある。フェイスブックのグループを使った場合を考えてみよう。その前に、フェイスブックのグループがどのような機能なのか見ておこう。フェイスブックの説明は次のようになっている。

特定の友人・知人たちとやりとりしたり、情報を共用したりするときは「グループ」機能がおすすめです。大学の同級生、週末の趣味仲間、会社のプロジェクトチームなどさまざまな仲間内で、近況を伝え合ったり、写真をアップしたり、リンクを共有したりすることができます。
http://f-navigation.jp/manual/function/group.htmlより)

 同人誌なり研究会の紀要の作成がテーマになっているとする。そこで、制作担当の人が「鈴木さん、原稿をメールで送ってください」と書き込み、鈴木さんが「出先なので、あとでメールします」と応答。制作担当はそのコメントに対して「いいね!」を押す。
 この場合の「いいね!」は明らかに共感ではない。単に「了解」(ラジャー)の代わりに「いいね!」を使っているだけだ。この機能を「了解通知機能」(筆者的には「ラジャー機能」のほうが好みだ)と呼ぶことにしよう。上の「儀礼的返答」も了解通知機能のひとつに加えてもよいだろう。

 さらに「いいね!」問題を複雑にしているのが Facebookページなどに設置されている「いいね!」だ。これは通常の言葉で言えば「購読」にあたる。Facebookページ(以前は「ファンページ」と呼ばれていた)の「いいね!」を押すと、そのページの投稿が自分のニュースフィード(Twitterのタイムラインとほぼ同義)に表示されるようになる。

 上記の分析をまとめると次のようになる。

「いいね!」には、共感通知と了解通知と購読の3つの機能がある

 さすがに「いいね!」ボタンに意味を持たせすぎだ。それが「いいね!」ボタンの意味の混乱を招き、上記の「珍現象」のような事態が生じてしまう。フェイスブックのユーザーインタフェース(UI)は、認知科学や人間工学の知見が活かされていないのではないか。そういう疑われても仕方がないだろう。

 さて、ここでちょっと考えてみたいことがある。そもそも「いいね!」(Like)ボタンの本来の使われ方は「気に入った。友達にもすすめたい」というものだったはず(いつから共感になったのか…)。であれば、TechCrunch Japan が報じているような(※2)「読んだ」「聴いた」「見た」「欲しい」のようなものではなく、根本に立ち返ったボタンが欲しい。もっと「いいね!」を強調したもの、たとえば「ワォ!」ボタン(Wow!)または「スゴイ!」ボタンはどうだろうか。

 そして、現在の複雑怪奇な「いいね!」は破棄し、「読んだ」ことを表す「足あと」ボタンを新設する。かつて mixi にあった足あと機能は「訪問者」機能に名称変更(機能も改修)されたので誤解されることもない。
 ちょっとゴチャゴチャしてきただろうか。ひとまず、現時点での結論をまとめておこう。

1. 「いいね!」ボタンは「足あと」ボタンに変更する。
   利用法:「OK!」「見た」「読んだ」を表す。

2. 「購読」ボタンを正しく使う。「いいね!」で代用しない。
   最近の新機能「フィード購読」ボタンの名称は良い傾向だ。

3. 「ワォ!」または「スゴイ!」ボタンを新設する。
   利用法:「いいね!」「人にもすすめたい」ことを表す。

最後に、フェイスブックのそのほかのボタン類の諸問題については、今後の研究課題としたい。


Photo_2


※1 2009年7月6日付けの朝日新聞夕刊記事(東京版1面)
※2 TechCrunch Japan は、フェイスブックに「Read」「Listened「Watched」「Want」ボタンが導入されるかもしれないと報じている。
Facebook、「読んだ」「聴いた」「見た」ボタン導入へ。「欲しい」ボタンも(情報筋)|TechCrunch Japan(2011年9月20日、原文は19日)
http://jp.techcrunch.com/archives/20110919facebooks-new-buttons/

【関連リンク】[2012-01-13 14:30、21:30 追記]
「いいね!」があるなら、「どうでもいいね!」「よくないね!」があってもいいじゃない。
ということで以下の2つの記事をご紹介。最高だね!
Facebookの「いいね!」を「どうでもいいね!」にできるChromeアドオン|ITmedia ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1201/13/news043.html
「よくないね!」ボタンを作ってみた。|村上福之の「ネットとケータイと俺様」|ITmedia オルタナティブ・ブログ
http://blogs.itmedia.co.jp/fukuyuki/2011/05/post-cadd.html

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本研究は科研費(9784327401580)の助成を受けていない。



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