情報構造化例:「情報セキュリティ教育指導者向け手引き書(2007)」-(3)
こんにちは。ドキュメント・コンサルタントの開米瑞浩です。複雑な文章をわかりやすく書き直す技術の教育研修や実際に書き直してしまうリライト業務を行っています。
前回の続きです。それでは、短い方から行ってみましょう。「理想」のパートです。
【理想】
総合的な情報セキュリティが確保されるためには、関係するすべての人々が情報セキュリティを意識した上で判断や行動を行うことが重要であり、人に依存する部分が大きいことから、すべての人々が情報セキュリティに関する学習を行うことが望ましい
これを「要約-詳細」関係に分けると
要約:すべての人々が情報セキュリティに関する学習を行うことが望ましい
詳細:総合的な情報セキュリティが確保されるためには、関係するすべての人々が情報セキュリティを意識した上で判断や行動を行うことが重要であり、人に依存する部分が大きい
これだけですね。ここは簡単です。
では次に「背景」を見てみると
【背景】
近年では一般の人々を含め、情報セキュリティの重要性に関する認識は高まりつつあり、ソフトウェアやハードウェアにおける対策の実施、ならびにマネジメントや運用における対応も進みつつある。しかしながら、広く社会から期待されるニーズと比較して、分野的な歴史の浅い情報セキュリティの専門家は少なく、これまでその人材の不足が指摘されてきた。
これを「要約-詳細」関係に分けると・・・これがちょっと難しいです。とりあえず情報を細かく分けて分類してみますと、前半部分については「評価項目-評価」モデルが使えそうです。
問題は後半部分で、
これを「評価項目-評価」モデルに当てはめると
うーん・・・? いまいちしっくり来ません。
しっくりこない理由の1つは、「少ない」という評価に合わせて評価項目を「専門家の数」にしたために、「数」と「分野的な歴史が浅い」がミスマッチになってしまったことです。
そのへんをつじつまが合うようにするとこんなところでしょうか
↓
情報セキュリティに対する社会的なニーズは広いが、歴史が浅いために専門家は少ない、ということですね。
単に原文に書いていることを読み取るだけだと、ここまでです。
「背景-理想-現実」パターンでまとめて書くとこうなります。
こんなふうに書けば、「要約」をパッパッと拾い読みするだけで大意を把握できるので、毎日大量の報告書に目を通さなければならない、忙しい上司にとっては助かりますね。
というわけでよくできました、めでたしめでたし!
・・・・と言いたいところですが、まだ続きます。
↑上記のまとめたものをよく見ると、背景・理想・現実がひとつのテーマで関連付いていません。というのは、理想と現実では教育の話をしているのに、背景にはその話がないのが問題です。原文がそうなっているので、原文に忠実にまとめるとこうならざるを得ないのですが。
こんなふうに、誰かが書いたものを論理的に整理してみると、微妙にチグハグなところが見つかることはよくあります。そんなときは、「では、どう構成すればよかったのか?」を考えてみましょう。
→というわけで、次回に続きます。