終わらない11時2分
自転車で通勤途中、神田川を通るのですが、そこでなつかしいにおいがしてきました。藻のにおいでしょうか。このにおいを嗅いだ一番古い記憶は、幼稚園のころで、故郷で川遊びをしていたときです。藻に足をとられて、おぼれそうになったときです。その場所はこのあたり。
そのときはぜんぜん怖いとは思わなかったのですが、小学校に上がってから父親に聞くと、長崎への原爆投下(Wikipediaの解説)のあとしばらく、この川面は死体で埋まっていたそうです。放射能と爆風を浴びて、最後の水を求めて来た人たちで、浦上川は埋め尽くされていたと。
その後、自分に関わるさまざまな事実を知ることになります。父親は原爆中心地から2キロメートル以内にいて爆風で吹き飛ばされ馬小屋の中で気を失っていたこと。それが幸いしたかもしれないこと。母親が疎開するまで住んでいた家にいた親戚は即死したこと、祖母の背中にはケロイドがあること。
現在上映中の「夕凪の街桜の国」には、原爆投下直後の地獄絵図と現在の状態が交錯するシーンが登場するはずです(今度家族で行く予定ですがいまは未見)。原作マンガ(こうの史代)のそのページは震えがくるほどの現実感がありました。
ここでは被爆者、被曝二世が受けてきた差別などもやわらかく物語られていますが、自分自身、結婚の際には両親が被爆しているということがなにか問題になったりはしないか(杞憂でしたが)、第一子が生まれるときにはなにか先天性の問題が起きるのではないかと実際に見るまでは心配でした。
わたしは被爆都市に育ったので、原爆投下とその被害に関する十分な教育を受けましたが、東京を含め、それ以外のところでは認識が不足している部分もあるかと思います。ましてやその行為が正当化されている米国においては被害状況はほとんど伝えられていないようです。
被爆者の声をアーカイブしておくこと、当時の状況をできるだけ再現して後世に伝えていくこともわたしたちの使命のひとつではないかと思います。まずは自分の両親の分から始めなくちゃいけないですね。
被爆者の生音声アーカイブとしては、「被爆者の声」というサイトが、CD全9枚に及ぶ肉声をWeb上で聴けるようにしてくれています。方言で分かりにくい部分は、文字でも書き起こされています。「被爆者の声を記録する会」代表の伊藤明彦さんが収集された、非常に貴重な記録資料です。ぜひ見て、聴いてください。
最後にこのブログらしく、iTunesのコンテンツを紹介しておきます。Todd Rundgren率いるUtopiaの1977年作品“RA”から、“Hiroshima”です(iTunesで再生)。米国人にもこういう考えをする人がいることを知り、わたしはかなり救われた気がしました。しかし、この曲をめぐってはファンの中でも論争があったようです。
もう1つは、iTunes UのMITアーカイブから、“Ground Zero 1945”(iTunesへのリンク)。
YouTubeにも貴重な映像がいくつかあります。
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追記:コメントをいただいた、「被爆者の声」へのリンクを追加しました。