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「2050年カーボンニュートラル行動計画」

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日本経済団体連合会(経団連)は2024年12月9日、「経団連カーボンニュートラル行動計画」を公表しました。

本計画では、「2050年カーボンニュートラル(CN)」実現に向けたビジョンを明確にすることで、産業界が地球温暖化対策の先頭に立つ姿勢を示しています。

本ビジョンは、気候変動の深刻化が進む中で、社会全体がカーボンニュートラルを達成するための具体的な道筋を示しています。今回は、経団連が発表した行動計画と取り組みをとりあげたいと思います。

経団連の取り組みの背景

1997年、経団連は「環境自主行動計画」を策定し、産業界全体で地球環境保全を進める活動を開始しました。これらの取り組みは、京都議定書採択以前から行われており、日本の産業界が環境問題に応しています。その後、2013年には「低炭素社会実行計画」、2021年には「カーボンニュートラル行動計画(CN行動計画)」へと進化し、2030年、2050年という長期的な目標を掲げています。

出典:経団連 経団連カーボンニュートラル行動計画 2024.12

CN行動計画は、経団連が掲げる「グリーントランスフォーメーション(GX)」の一環として位置づけられており、利用可能な最良の技術(BAT)の導入、政府との連携、そして国際貢献を通じて、地球規模での温室効果ガス削減を目指しています。

CN行動計画の枠組み

CN行動計画は、以下の四本柱を中心に構成されています。

1. 国内事業活動の排出削減
各業種が2030年度を目標に具体的な削減目標を設定し、再生可能エネルギーの導入、省エネ技術の活用を推進。2023年度の結果では、産業、エネルギー転換、業務、運輸部門を合わせたCO2排出量が2013年度比で21%減少。

2. 主体間連携の強化
低炭素製品やサービスを通じて、企業間や地域社会での排出削減を推進。例えば、省エネ家電の普及や高効率な製品設計により、消費者のライフスタイル変革にも貢献。

3. 国際貢献の推進
日本の先進的な技術を活用し、海外での温室効果ガス削減を支援。特に発展途上国における高効率発電設備の導入やCCUS(炭素回収・利用・貯留技術)の展開は、地球規模での排出削減に大きく寄与。

4. 革新的技術の開発
再生可能エネルギーの大量導入を可能にする新技術、水素エネルギー、スマートグリッドなど、次世代技術の研究開発と実用化を推進。

出典:経団連 経団連カーボンニュートラル行動計画 2024.12

部門別の取り組み

各部門、業界では 2050年CNに向けたビジョン(基本方針等)で以下の取り組みを挙げています。

エネルギー転換部門

電力業界では、再生可能エネルギーや原子力発電を最大限活用し、電力供給の低炭素化を推進。また、次世代太陽光パネルや小型モジュール炉(SMR)など、革新的な技術の開発が注目。

石油業界は、サプライチェーン全体の脱炭素化を進めるとともに、CO2フリー水素や合成燃料の社会実装を目指しています。ガス業界も同様に、天然ガスシフトを進めるほか、e-methane(水素を活用した合成メタン)の実用化を推進。

産業部門

鉄鋼業界では、水素還元製鉄やCO2の大幅削減技術であるCCUSの実用化が鍵。化学業界では、バイオマス原料や廃棄プラスチックの活用による炭素循環技術が進行中。また、製紙業界は木質バイオマスを利用した新素材の開発を推進。

運輸部門

海運業界は、カーボンリサイクルメタンやアンモニア燃料を利用したゼロエミッション船の導入を推進。航空業界では、持続可能な航空燃料(SAF)の普及が進み、鉄道業界は燃料電池車両や蓄電池車両の展開を加速。

業務部門

不動産業界では、建物の省エネ性能向上や地域全体のエネルギー管理を通じて、2050年までに持続可能な都市づくりを推進。

出典:経団連 経団連カーボンニュートラル行動計画 2024.12

今後の展望

経団連が示した2023年度のフォローアップデータでは、多くの業種がCO2削減目標に向けた進捗を示しています。しかし、運輸部門での排出増加や、建設業界における需要減少など、個別部門の課題も明らかになっています。

今後は、さらなる技術革新と政策支援が必要となっており、社会全体での協力を深め、カーボンニュートラルを実現するための具体的な取り組みを継続する必要があります。

「2050年カーボンニュートラル」という目標は、気候変動対策としてだけでなく、日本の産業界が新たな成長機会を見出すきっかけにもなります。環境技術の輸出や国内外での市場開拓は、経済と環境の好循環を生み出すことが期待されます。

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