国内SD-WAN市場、企業変革を支えるデジタルインフラに

IDC Japanは2024年9月30日、「国内SD-WAN市場予測」を公表しました。本調査によると、国内のSD-WAN（Software-Defined Wide Area Network）市場は引き続き急成長を見せています。

2023年の国内SD-WAN市場は前年から20.6％増加し、支出額ベースで147億9,000万円に達しました。2028年にはこの市場が約1.7倍の251億1,500万円に達すると予測しています。2023年から2028年の年間平均成長率（CAGR）が11.2％という高い水準で推移することを示しており、SD-WANが今後の企業変革を支える重要なデジタルインフラとしての地位を確立しつつあることが分かります。

WANトラフィックの増加に伴うSD-WANの導入拡大

2023年、国内の企業は急速に増加するWANトラフィックに対応するため、SD-WANを積極的に導入しています。ローカルブレイクアウトと呼ばれる手法を用いたポイントソリューションが注目されており、これが企業のネットワーク効率を高める手段として広がりを見せています。

ローカルブレイクアウトとは、トラフィックをインターネット経由で直接クラウドやアプリケーションに接続する手法で、これにより従来のWANトラフィックにかかる負担を軽減し、企業の通信コストや運用負担を削減することが可能です。

大企業では、クラウドマイグレーションの進展やセキュリティ態勢の強化が急務となっており、SD-WANがその要として機能しています。また、ハイブリッドワークが定着する中で、WANの見直しを進める企業が増え、SD-WANとクラウド型セキュリティを組み合わせたSASE（Secure Access Service Edge）の導入が進んでいます。企業は安全かつ効率的なネットワーク運用を実現し、デジタル時代の柔軟なインフラ構築が展開できます。

SMB市場でのSD-WANとマネージドサービスの普及

中堅中小企業（SMB）においても、SD-WANの採用が進んでいます。SMBでは社内にIT人材リソースが不足しているケースが多く、WANの運用管理やセキュリティ対策に大きな負担がかかっています。そのため、セキュリティ運用までを含めたマネージドサービスのニーズが高まっています。SD-WANの導入により、SMBでも大企業と同様に、クラウドやネットワークの高度な管理が可能となり、限られたリソースでデジタルトランスフォーメーション（DX）を加速させることができるのです。

今後の市場成長を支えるポイント

IDC Japanのシニアリサーチアナリストである水上貴博氏は、

SD-WANの導入がローカルブレイクアウトを契機に拡大している一方、先進的な企業はデジタルファースト時代のネットワーク構築を目指し、SD-WANのポテンシャルを最大限に活用している

と分析しています。また、テクノロジーベンダーや通信事業者にとって、SD-WANを新規に導入する企業に対して、先進的な企業の成功事例を示すことがビジネスの成長に不可欠であると強調しています。

SD-WANは単なるネットワークソリューションにとどまらず、企業のデジタル変革を支える基盤として重要な役割を果たしています。市場の拡大が続く中で、クラウドマイグレーションやハイブリッドワーク、セキュリティ強化といったトレンドが企業のネットワーク戦略にどのような影響を与えるのか、今後も注目していく必要があります。

国内SD-WAN市場は、今後数年間で急速に成長を続けると予測されており、企業のデジタル変革を支える重要なインフラとなることが期待されています。WANトラフィックの増加やクラウドマイグレーションの進展、ハイブリッドワークの定着により、SD-WANの導入はさらに進むでしょう。

また、セキュリティと運用管理を一体化したマネージドサービスの提供が中堅中小企業においても求められており、テクノロジーベンダーにとってはこの市場をいかにリードするかが鍵となります。企業の競争優位性を高めるためにも、SD-WANの進展と市場の変化を的確に捉えた戦略が求められれています。

出展：IDC Japan国内SD-WAN市場予測 2024.9.30