全国規模でインフラを整備するための「アーリーハーベストプロジェクト」
政府は2024年6月10日、「デジタル田園都市国家構想実現会議(第16回)」を開催。この中から、経済産業省が推進するデジタルライフライン全国総合整備計画の「アーリーハーベストプロジェクト」を中心にとりあげたいと思います。
デジタルライフライン全国総合整備計画は、日本が直面するさまざまな社会課題をデジタル技術を駆使して解決し、全国規模でインフラを整備するための壮大な計画です。この計画の一環として、「アーリーハーベストプロジェクト」が立ち上げています。
アーリーハーベストプロジェクトとは
日本は人口減少や高齢化が進行しており、特に地方では移動手段の不足や物流の停滞、災害時の対応力の低下といった深刻な課題に直面しています。
アーリーハーベストプロジェクトは、これらの課題を解決するために、デジタル技術を駆使して全国的なインフラを整備し、地域社会の活性化と生活の質の向上を図ることを目的としています。
アーリーハーベストプロジェクトは、特に以下の3つの主要な社会課題に対処することを目的としています。
人流クライシス
中山間地域などでは、人口減少や高齢化が進む中で、移動が困難な状況が生じており、自動運転技術を活用した新しい移動手段を提供することが必要
物流クライシス
ドライバー不足や高齢化により、物流の維持が困難になる問題が顕在化しており、特に地方においては、配送網が脆弱化しているため、ドローンや自動運転車を活用した効率的な物流システムの構築が必要
災害激化
気候変動の影響により、災害の頻度や規模が増大し、災害時の迅速な対応や復旧活動を支援するために、リアルタイムで情報を収集・共有できるデジタルプラットフォームの整備が重要
こういった状況を踏まえ、アーリーハーベストプロジェクトでは、以下の3つの主要な取り組みが進めています。
ドローン航路の整備
特定の運航環境において、運航者の安全かつ効率的な運航を支援するシステムを構築し、遠隔地や災害時の物資輸送が迅速かつ効率的に行われるための航路整備
自動運転サービス支援道
自動運転サービス支援道では、自動運転走行の安全性を高める運行環境を整備。具体的には、自動運転車専用レーンの設置や、リアルタイム交通情報の共有システムの構築が含まれま、地方での交通手段の確保や都市部での交通渋滞の緩和へ
インフラ管理DX
協調領域として複数事業者が活用可能なインフラ設備の3Dデジタル化に加え、競争領域としての新たなアプリケーションの創出を目指す取り組みで、インフラ管理の効率化とコスト削減、新たなサービスを創出
デジタルライフラインの整備と中長期的な社会実装計画
経済産業省では、アーリーハーベストプロジェクトにおいて中長期的に全国展開を目指した計画を立て、以下のKPI(重要業績評価指標)およびKGI(重要目標達成指標)を設定しています。
短期(〜3年目):全国の主要な送電網上空100kmの整備が目標とし、主要なインフラの点検や監視を効率化
中長期(〜10年目):全国の主要な送電網上空1万kmの整備し、広範なエリアでのインフラ管理が可能に
これらの取組を通じて、必要な主要幹線における巡視・点検・物流等のドローンサービスの実装が目指しています。また、自治体や企業との連携を強化し、地域ごとの特性に応じた最適なデジタルライフラインの構築が進めていくとしています。
アーリーハーベストプロジェクトの位置付けと10年後に目指す姿
アーリーハーベストプロジェクトでは、10年間をかけて各地域で面的なサービスが行われることを目指しています。これにより、物流・人流クライシス、災害激化といった社会課題の解決が可能になる社会の実現を目指します。具体的には、以下の目標が掲げられています。
モビリティ等の運行円滑化/開発促進
自動運転車やドローンなどの新技術を活用し、移動手段の効率化と安全性を向上させ、地方における交通手段の確保や、都市部での交通渋滞の緩和を目指す
持続的なサービス提供
持続可能な物流・交通インフラの整備を進め、長期にわたって安定したサービスを提供し、地域間の格差を縮小し、全国的な経済発展を促進する
さらに、計画全体で達成を目指す領域として、以下の点が挙げています。
サイバー・フィジカルの融合による横断的な課題解決
デジタル技術とリアルなインフラを融合させることで、物流・人流クライシス、災害激化といった複数の社会課題を包括的に解決していくことを目指しています。具体的には、デジタルプラットフォームを活用したリアルタイム情報の共有や、AIを駆使した効率的な運行管理システムの導入が進められています。
今後の展望
アーリーハーベストプロジェクトは、今後10年間を通じて、デジタル技術を活用して日本全体の社会インフラを整備し、多岐にわたる社会課題を解決することを目指す重要な取り組みと位置づけています。
ドローン航路や自動運転サービス支援道、インフラ管理DXの導入により、物流や交通の効率化を図り、災害対応力の向上を目指しています。特に、地方における人口減少や高齢化による移動手段の不足を補完するための、自動運転技術の実装が重要となるでしょう。
さらに、このプロジェクトが新たな産業の創出と技術革新を促進し、日本全体の競争力を高める可能性も期待されます。
地域ごとの特性に応じた柔軟なモデルを展開し、地域社会と密接に連携し社会の受容性を高めなら、アーリーハーベストプロジェクトを推進し、日本の未来を切り開くための重要なステップとなることが期待されます。