政府のロボット政策とロボット介護推進プロジェクトについて
政府は平成25年6月14日、「日本再興戦略」を公表し、その重点政策の一つにロボット関連政策があげられています。
医療分野では、小型で患者に対するストレスの少ない手術支援ロボットや、介護ロボット産業の活性化などがあげられています。
調査会社の矢野経済研究所が公表した「介護ロボット市場に関する調査結果 2013」によると、国内の介護ロボット市場規模は、2015年度に23億円、2020年度には349億8,000万円に拡大と予測しています。
出所:矢野経済研究所 2013.1
急速な普及拡大に向けて、移乗介助、見守り支援等、安価で利便性の高いロボット介護機器の開発をコンテスト方式で進めること等を内容とする「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」を進めています。
産業技術総合研究所などは、つくば市に「生活支援ロボット安全センター」を設立し、「つくば国際戦略特区」のプロジェクトの一つとして、取り組みをすすめ、安全性に関するデータを収集を行い、これらのデータをもとに日本が中心となり「日本の生活支援ロボットの国際安全規格( ISO13482 )」を認証しています。つくば市では、筑波大学発のベンチャー企業のサイバーダイン社が開発した介護・福祉分野で利用するサイボーグ型ロボットである装着型ロボットスーツで国内で400台が稼働している「HAL」の取り組みなど、ロボット関連企業の誘致など、ロボット産業の集積地として力をいれています。
こういったロボット産業の特区は、つくば市だけでなく、昨年神奈川県に「さがみロボット産業特区」を創設し、介護・医療分野などでロボットを開発する時のハードルとなる様々な法令の規制の緩和や、生活支援ロボットの実証実験のサポートなど、生活支援ロボットの実用化に向けた支援を行っています。
日本再興戦略でのインフラ分野では、 センサーやロボットなどの活用により、生活インフラ、公共インフラ、産業インフラといった様々なインフラの損傷度などをデータとして把握・蓄積・活用し、早期の異常検知により事故を未然に防ぎ、最適な時期に最小限のコストによる補修によってトータルライフサイクルコストを抑ええられる社会の実現を目指しています。
農業分野では、IT・ロボット技術等を活用した農林水産物の生産・流通システムの高度化、微生物やバイオマスによるエネルギー資源生産技術の開発・普及を目指して、研究開発や大規模実証の推進を進めています。
総務省では、スマートプラチナ社会推進会議にて、身体的機能を補完する介護ロボット、 ネットワークロボットやコミュニケーションロボットなどの社会実証や、ガイドライン策定などの検討を進めています。
出所:総務省スマートプラチナ社会推進会議資料 2014.4
ロボット介護推進プロジェクト
公共財団法人テクノエイド協会は2014年4月11日、経産省の予算による「ロボット介護推進プロジェクト」の公募を開始しました。
ロボット介護推進プロジェクトでは、ロボット介護機器の量産化への道筋をつけることを目的として、ロボット介護機器を実際に介護現場で活用しながら、大規模な効果検証等を行うとともに、検証結果に基づく効果のPR、普及啓発、教育活動を通じて、ロボット介護機器導入の土壌を醸成などをあげています。
出所:公共財団法人テクノエイド協会 2014.4 ロボット介護推進プロジェクトの概要
また、本事業を通じて、介護現場で実際に使えるロボット介護機器の導入を進めることで、高齢者の自立支援、介護実施者の負担軽減を通して、健康長寿社会の実現に寄与し、、新しいものづくり産業の創出への貢献も目指しています。
日本政府のロボット関連政策は、介護支援などに重点を置いていますが、米国政府をはじめ、各国ではロボット産業を重要な産業政策の一つとして位置づけているところも多く、日本においてもさらなる展開が期待されるところです。