復興構想会議「復興への提言」における再生可能エネルギー、スマートコミュニティ、ICTの方向性について
政府の東日本大震災復興構想会議は2011年6月25日、「第12回東日本大震災復興構想会議」において、復興ビジョン「復興への提言~悲惨のなかの希望~」を菅直人首相に提出しました。本提言では、様々な分野における復興プランが示されていますが、今回は、再生可能エネルギー、スマートコミュニティ、ICT(情報通信技術)の方向性について整理をしてみます。
まず、復興構想7原則です。
原則1:
失われたおびただしい「いのち」への追悼と鎮魂こそ、私たち生き残った者にとって復興の起点である。この観点から、鎮魂の森やモニュメントを含め、大震災の記録を永遠に残し、広く学術関係者により科学的に分析し、その教訓を次世代に伝承し、国内外に発信する。原則2:
被災地の広域性・多様性を踏まえつつ、地域・コミュニティ主体の復興を基本とする。国は、復興の全体方針と制度設計によってそれを支える。原則3:
被災した東北の再生のため、潜在力を活かし、技術革新を伴う復旧・復興を目指す。この地に、来たるべき時代をリードする経済社会の可能性を追求する。原則4:
地域社会の強い絆を守りつつ、災害に強い安全・安心のまち、自然エネルギー活用型地域の建設を進める。
原則5:
被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す。原則6:
原発事故の早期収束を求めつつ、原発被災地への支援と復興にはより一層のきめ細やかな配慮をつくす。原則7:
今を生きる私たち全てがこの大災害を自らのことと受け止め、国民全体の連帯と分かち合いによって復興を推進するものとする。
本、復興構想7原則において、再生可能エネルギーやICTの視点で考えた場合、原則3の技術革新を伴なう復旧・復興、原則4の自然エネルギー活用型地域の建設などが大きなポイントなると考えています。
以下、再生可能エネルギーやICT(情報通信技術)に関する項目を引用させていただきます。
地域経済活動を支える基盤の強化
②再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上
被災地における再生可能エネルギーの可能性
再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱等)については、エネルギー源の多様化・分散化、地球温暖化対策、新規産業・雇用創出などの観点から重要である。そこで、出力の不安定性やコスト高、立地制約などの課題に対応しつつ、その導入を加速する必要がある。
東北地域は、太平洋沿岸では関東地方と同程度の日照時間を有し、気温が低く太陽光発電システムの太陽光パネルの温度の上昇によるロスが小さいため、太陽光発電に適している。さらに、地熱資源や森林資源・水資源も豊富に存在しており、地熱発電やバイオマス、小水力発電等の潜在的可能性も高い。また、東北地域には、全国的に見ても風況が良い地点が多く、風力発電の潜在的可能性が高い。
以上の資料などを見る限り、東北地方の被災地などは太陽光発電に敵していて、風力発電の潜在的可能性が高いと言えます。
地域自立型エネルギーシステム
被災地におけるインフラの再構築にあたっては、先端的な自立・分散型エネルギーシステムを地域特性に応じて導入していくことが必要である。そのシステムは、まず、省エネルギーシステムの効率的な活用、次いで、再生可能エネルギーなど多様なエネルギー源の利用と蓄電池の導入による出力不安定性への対応、さらにガスなどを活用したコジェネ(熱電併給)の活用を総合的に組み合わせたものである。
こうした自立・分散型エネルギーシステム(スマート・コミュニティ、スマート・ビレッジ)は、エネルギー効率が高く、災害にも強いので、わが国で長期的に整備していく必要がある。そこで、被災地の復興において、それを先導的に導入していくことが求められる。地域の復興・再生において、防災、地域づくりなど、他の計画と並行して一体的に進めることがより効果的である。
スマートコミュニティの構築にあたっては、地域全体のエネルギー需給をコントロールするセンター
(エネルギー・マネジメントシステム)が、再生可能エネルギーの変動にあわせた需給バランスの調整するためのICTの役割が重要となると考えられます。また、個々の住宅においては、スマートハウスと呼ばれるように、スマートメーターの設置や再生可能エネルギーや蓄電池、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメントシステム)の利用など、各家庭のスマートハウス化の浸透が、スマートコミュニティの性向を左右するといっても過言ではないでしょう。また、電気自動車の共同利用システムなどにおいてもICTの役割が重要となっていくと考えられます。
産業としての再生可能エネルギー
再生可能エネルギー・システムの設置・導入は、復興過程において、まず、新たな雇用の創出に寄与する。そして、装置・システムの生産も、産業派生効果が大きい電気機械産業のウエイトが全国と比べて高い東北地域の産業の成長に寄与する。したがって、誘致支援などにより、これらの関連産業の集積を促進しなければならない。
③ 人を活かす情報通信技術の活用
人と人をつなぐ情報通信基盤に大きな被害が生じており、次世代の発展につながるようにその復旧を進めるべきである。特に、震災発生後、携帯電話が非常につながりにくい状態となったことから、そうした状況を改善するような取組を進めるべきである。
復興に際しては、多様なメディアを活用し、地理的に離れて避難している住民も含む被災者に対する正確で迅速な支援情報の提供をまず行うべきである。さらに、被災地の地方公共団体と地域住民が円滑にコミュニケーションを行える環境を確保すべきである。これにより、多くの被災者・住民が復興の過程に自由に参加できるようになって、地域コミュニティが再生されることが期待できる。
また、復興の進捗状況をインターネットで閲覧できるWeb サイトによる政策の「見える化」や、利用しやすい形での政府保有データの提供、内外に向けた正確な情報発信等を進めることが必要である。
さらに、行政をはじめ、医療、教育等の地域社会を支える分野のデータが震災により滅失したことを踏まえ、これらの分野において、情報の一層のデジタル化を進め、クラウドサービスの導入を強力に推進すべきである。
さらに、情報通信技術の利用・活用を進め、地域医療や医療・介護の連携強化のための情報共有や、農林水産業の6次産業化、中小企業の再建・販路拡大など、震災で打撃を受けた地域の産業の再生・創出に取り組むべきである。
これらの取組は、一体的に行われてこそ、その効用が最大限に発揮される。それと同時に、これにより、被災地における人と人との絆が確保され、情報通信技術を活用する能力が向上することを通じて、被災地の人々が情報通信技術を使いこなし、復興の主役となることが望まれる。
情報通信技術の活用にあたっては、第9回の会議で「情報通信技術による復興への貢献(施策例)」として紹介されています。
特に、情報通信技術の利活用の促進における、クラウドを活用した社会インフラの高度化、そして、産業再生へのICTの貢献が期待されるところです。
再生可能エネルギーと情報通信技術の活用は、東北の被災地の復興に貢献するだけでなく、日本の成長を牽引するエンジンとしても期待されます。復興への提言から具体的にどのようなステップで実行にうつされ、効果を出していくのか、特に注目してみていきたいと考えています。
※「わんとぴ」キュレーター担当しています
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