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米国の「ネット中立性」問題のだいたいの経緯

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米国の「ネット中立性(net neutrality)」問題、5月15日に大きな決定が行われるらしいので、その前に今どうなってるのかを整理しておこうと思ったんですが、複雑な話なので長くなっちゃいました。

大筋はこんな感じだと思います。いろんな要素が抜けてはいますが。

ネット中立性の一番シンプルな定義は「インターネットのトラフィックはすべて平等に扱われねばならない」という原則、です。または、インターネットのエンドユーザーは、不当な制限なしに自由に使えなければならない、ということ。

米国では1860年に電話についての中立性を守るための法律ができていて、インターネットについても同じような法律を作らなくちゃという動きが既に1990年代からありました。

当時はまさかインターネットで動画配信するようになるとまでは想像できなかったと思いますが、インターネットにかかわる団体が中立性を損なうようなことをしないようにしなくちゃ、ということは考えられていました。

20年も前から考えてたのに、いまだに法律が施行できていないのは、インターネットにかかわる団体のそれぞれの思惑と、本来規制当局になるはずだった機関のうっかりが原因です。

インターネットにかかわる団体というのは主に3つ(ユーザーも入れれば4つ)。

1.物理的なインフラ(電話回線とか光ケーブルとかWi-Fiとか)を製造する企業や組織
2.ブロードバンド業者。ISPともいいます
3.コンテンツやアプリ、サービスを提供するエッジプロバイダー

今、ネット中立性で対立しているのは、ISPとエッジ(プロバイダー)です。 ISPはトラフィックをいっぱい使うエッジのせいでサービス全体が遅くなるのはたまらないので、そういうエッジの容量を制限したり、別料金をとったりしたい。でもエッジは「それは中立性に反するよ」と主張する。ユーザーは「どうでもいいけどちゃんとお金払ってるんだからまともにサービスしろ」と思ってる。

お金持ちなISPやエッジは、とにかくまともな法律がないと動けないので自分に都合のいい法律が制定されるようにとそれぞれ運動。2006年にはこんな記事もありました。

具体的に問題になったのは、2007年にISPのComcastがエッジのBitTorrentのサービスに制限をかけたっぽい、というのがはじまりとみていいと思います。

それはネット中立性に反するということで、米国で電気通信・放送分野の規則制定・行政処分を担当する連邦政府の独立機関、連邦通信委員会(FCC)がComcastのこの行為を禁止しようとしました。

ところが、さかのぼって2002年、FCCはISPを電話と同じ「電気通信サービス(Title II)」じゃなくて「情報サービス(Title I)」と定義しちゃっていたのです(当時はほぼ「インターネット=電子メール」だったんで、分からなくもないですが)。電話の中立性についてはFCCが守ってきたのに、これでFCCはブロードバンドがらみのいざこざを規制する権限がないことになっていたのでした。

だから裁判所は2010年、「FCCにはComcastを規制する権限がそもそもないよーん」という判決を出しました。

このときに、FCCが「やっぱりブロードバンドも電気通信サービスってことにします」と再定義しようとしたんですが、各方面からの圧力に負けてできませんでした。このとき再定義していればもう少し話が簡単になったのに。

でもとにかく規制するための規則「Open Internet Order」を2010年12月になんとか制定しました。

この法案の制定前も、今みたいにVerizon(ISPの立場で)やらGoogle(エッジの立場で)がいろいろ主張してました。

そういう主張を受けてか、この規則はISPによるコンテンツやサービスの支配防止が目的としながらも、ISPが金次第でエッジに回線容量を優先割り当てするのは認めるものになりました。

このどっちつかずな規則に対してはそれぞれの団体が利害を守るために抗議したり反対したりVerizonみたいに提訴したりしたので、制定はされたものの施行されないまま、今日にいたってます。

その後、Netflixのような動画ストリーミングサービスがトラフィックを半端なく使うようになって、ISPとしてはますます面白くない。Netflixだってユーザーから「のろい」と叱られるくらいなら多少お金を払ってでもサービスを改善したい。

実際、NetflixはComcast、Verizonとそれぞれ有料の直接接続契約を結んじゃってます。もちろん「いーけないんだーいけないんだー」という声は上がっていますが、いかんせん規制する法律がありません。

で、この話の最初に書いた5月15日に行われる大きな決定、というのは、FCCが、ISPが金次第でエッジに回線容量を優先割り当てするのはOK、つまり、エッジはお金を払えば「高速車線(fast lane)」を走れるという条項を新たに盛り込んだOpen Internet Orderの改定案を公示するかどうかの投票を行うということです。

投票を前に、GoogleやFacebook、Microsoftなどのエッジの皆さんや、ベンチャーキャピタルの皆さん数人の上院議員などがそれぞれFCCに抗議書簡を送ったりしているので、投票が延期になるかもしれませんが。

うーん、あんまりちゃんと整理できませんでしたが、みんなが幸せになれる解決策はなかなかみつかりそうにない、ということだけは分かったような気がします。

ここはひとつGoogleに、次のGoogle Xプロジェクトとしてものすごく手軽で低コストでびゅんびゅん快適に使えるまったく新しいインターネットインフラを発明して、しかもオープンソースにしてもらいたいところ。もうやってるかもしれないけど。

参考ページ
http://en.wikipedia.org/wiki/Network_neutrality_in_the_United_States http://gigaom.com/2014/05/05/mozillas-crazy-plan-to-fix-net-neutrality-and-turn-broadband-into-a-utility-and-why-it-could-work/ http://www.soumu.go.jp/g-ict/country/america/pdf/001.pdf http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASFK1701Z_X10C10A5000000&uah=DF181220092601 http://www.icr.co.jp/newsletter/eye/2002/e2002003.html http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1257

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