シスコに見るネット会議の可能性
シスコでは大きな社内会議が年に2回開催されます。一つは最大の会議で、セールスミーティングと言われています。これはセールスに少なからず関連する社員全てが対象で、アメリカンのどこかの大きなコンベンションセンターがある場所で開催されます。時期は例年8月です。参加者数は2万人程度。
2つめの会議はSLO、つまりSenior Leadership Offsiteです。幹部社員であるディレクター以上の社員が集まります。時期は5月。参加者数は3000人ほど。
新年度が8月から始まるため、5月に来年度の経営方針を幹部と議論をして確かめ、8月のセールスミーティングでこれを全社に発表すると共に、社員間の結び付きをタイトにします。
この数年ではサンフランシスコ、オーランド、ハワイ、ラスベガスなど、ホテルの多いコンベンションセンターのある場所で開催されてきていました。
さて、未曾有の景気低迷のこの時期、これらの出張を世界規模で行うことは株主に対してはあまり良いパフォーマンスとは言えません。そこで一部の社員達とネット会議を通してアイディアを集め、5月のSLOはすべてネットで行うこととして実施されました。
ネット経由ですから、完全にバーチャルな空間で行われます。時間になるとアウトルックの予定表にあるURLをクリックすると関連のセッションに参加出来ます。通常はポータルサイトでログインをすると上のサイトに入り、あたかもコンベンションセンターに自分が来たような状況となります。入ったことはありませんが、セカンドライフのような空間ですね。
このセンターには全体の会議を行うボールルームのような部屋、個別トピックに参加するセミナールームなどが準備されており、あらかじめ自分が参加表明した内容の部屋に行って参加することが出来ます。
それぞれのセッションは時間が決まっていて、時間が過ぎると参加することが出来なくなります。なにしろほとんどオンラインなのです。
たとえばある会場ではIP-TVによってこんなセッションが行われています。
プレゼン中に「ちょっと質問がしたい」と言っていくつかの質問項目をその場で作り「1~4のうちどれがよいか選んでくれ」とファシリテーターが発言すると、画面に質問項目が表示され投票が出来ます。これにより、何らかの意志決定を促すことが簡単にできました。その投票の様子もすべてオンラインで見ることが出来るのです。
通常2~3日間のオフサイトミーティングですので、当然バーチャルでも3日をかけて行いました。時差があるので同じセッションは複数の時間にわけて行われました。プレゼンターは少なくても3回同じテーマでプレゼン、しかも時間を変えて、することとなります。
また場合によっては1回目の内容を2回目以降はVODで配信して、質問などにだけ答えることも出来ます。
ともかく3日間、といってもフルタイムではありませんが、PCにかじりついてこのバーチャル・オフサイトに参加することとなりました。
結果は大成功。これにより出張コストを3Mドル(およそ3億円)削減することが出来ました。もちろんCo2についても大きな効果があります。
幹部は出張することなく、午後の遅めにはすぐにお客様対応に出かけることが出来ましたし、日々のビジネスへの対応も止まることはありませんでした。
しかし課題もあります。これは私個人かもしれませんが、1日に4,5時間もPCの動画を見ながら会議に参加するって肉体的には相当の負荷でした。2日目には目が落ちくぼんだ気がしました。それにながら受講になりかねません。メールを書いたり、仕事の資料を眺めたり、電話をしたり。
本当に集中して受講出来るのはせいぜい1日2時間が限度でしょう。無理にいつもと同じく3日間で終わらせる必要もないので、その週全部を使って、1日2時間程度で行うと参加した側にも無理がなく、かつ内容の定着率が高くなると思われます。
シスコは夏のセールスミーティングもこの形式で行プランをしている、と先日のイベントで発表をしました。
すでにセカンドライフで実現されているとしても、ビジネスの世界においてバーチャルな空間で、2万人もの人が会議に参加したり、チャットを使って議論したり、動画がオンラインで配信されたり、これは壮大な実験場であることは間違いありません。
ネット会議の利用範囲は留まるところをしらず進化しています。一方で人と人のつながり、リアルで接することによる分かり合い、そういった所をどのように補っていくか、これは今後の課題と言えそうです。
まぁ社内はネットで効率化して、空いた時間は外に出てお客さんともっと直に触れあって価値を提供しなさい、ということでしょうけど。