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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

米国地上波とクラウドコンピューティングの将来に影響する裁判、Aereo最高裁ヒアリングの内容

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ヒアリングの全文が公開されていますので全て読んだ上でのブログです。

ヒアリングの全文公開

米国最高裁版所におけるAereoサービス(地上波の信号を数千のアンテナで受け、それぞれの契約家庭にインターネット信号に変換して送る月額8ドルのサービス)に対するヒアリングが2014年4月22日、実施され終了しました。訴えているのは地上波と米国司法省です。一方アップル、グーグル、アマゾンなどはAereo支持を表明しています。CATVなどは米国地上波に約三十億ドルの再送信料を支払っています。一方Aereoは再送信料を支払っていません。だから著作権違反だと言う訳です。AereoサービスはCATV類似と言う主張です。

 

これまでニューヨーク地裁と高裁(Second Circuit Court)はAereoが合法、ユタの地裁は非合法の判決を出しています。

 

下馬評ではAereo有利、地上波有利と言う見方が交錯していました。

また最高裁での審議の結論は6月末までにでます。

 

地上波は放送に対して効率的に視聴者に届ける権利(public performance right)があると主張し、判り易く言えばAereoのサービスはCATVと同じように消費者に電波を届けるサプライチェーンの一部だから、再送信料を支払わないで勝手にビジネスをしている事はpublic performance rightに違反すると主張しています。一方Aereoは、Aereoはなんのサービスも提供しておらず、消費者から依頼されたものであり、電気屋からアンテナやDVRを買ってきて設置するのと同じである。従がってサービスの問題はpublic performance rightでは無く、複製権(a reproduction right)と個人権(a private performance right)の問題であり、それは既にソニーのDVRやロケフリのCABLEVISIONの裁判で合法になっており、解決済みと主張しています。消費者から依頼されたモノゆえ、消費者に電波を届けるサプライチェーンの外だと言う主張ですね。

 

さて米国最高裁版所のヒアリングでは地上波に対して以下の質問が投げかけられました。

 

■  判事から地上波の弁護士へ

Aereoはケーブルテレビと同じか事なるのか?

電気屋からアンテナやVDRを買ってきて設置するのと何が異なるのか?

またドロップボックスやグーグルのクラウドサービス(ロッカーサービス)などと何が異なるのか?

 

 それに対して弁護士はAereoはケーブルテレビと実質同じと答えています。

 またクラウドサービス(ロッカーサービス)は駐車場においてある車を再度利用する事であり、ディラーから新車を買うようなAereoのサービスとは違うと答えています。

 

■判事からAereoへ

 Aereoはケーブルテレビと同じか事なるのか?

 CATVは一本の大きなアンテナで同様のことをしている。何故数千の小型アンテナを使うのか?これは著作権違反の規制逃れが目的ではないのか?

 

 Aereoの答えは無論、「CATとは異なり、クラウドサービス(ロッカーサービス)に近い」です。また小型アンテナの件は技術問題と答えています。

 

■Aereoがやや有利か?

Aereoは「慎重に見なければならないが我々は楽観的だ」と言うメッセージをヒアリング後出しました。

どうもAereoがやや有利と言う事のようです。これにクラウドサービス(ロッカーサービス)の邪魔をしてはいけないと言う裁判官の強迫観念が加わります。もしAereoをクラウドサービスと認定したうえで違反とすれば、音楽サイトのロッカーサービスから音楽を取りだす行為も著作権支払いの義務が生じるからです。

 

殆どクラウドサービスを理解していない裁判官達が必死で技術革新を理解しようとしています。(各種のテックブログでは「XX判事はスマートテレビのロクを自宅に買ったと言っているが理解が足りない」などの批判が一杯出ています)質問もDropbox, iCloud, Roku and Simple.TVに言及するものが出ています。

 

■  技術革新のもたらす経済成長や国益を重視する裁判官達

さて最高裁のヒアリングで明らかになった点は各伴事が国益である「クラウドコンピューティングの成長を邪魔する判決は悪である」と言う信念を持っている事であり、強迫観念すら持っています。アップル、グーグル、アマゾンの支持が効いているようです。クラウドサービスやモノのインターネットなど米国の経済成長=国益の勢いに水を差す、それを制限するような判決だけはどうしても避けようとしています。これは凄いですね。

 

■日本の司法はモノのインターネット時代に守旧過ぎる

 

思えばホリエモン事件の時には東京地検特捜部も裁判所も「お金で全てを買えると言うホリエモンのビジネス価値観は許せない」と主張して証券取引法違反の判決にしては重すぎる実刑判決を下しました。またまねきTVの裁判でも最高裁は古い放送業界の肩を持ち、高裁までの合法判断をひっくり返しました。

その結果、国内のスタートアップ企業の勢いや起業の勢いが殺がれたと言う指摘が数多く出ています。これがモノのインターネット時代にじわっとマイナスの影響をもたらしています。見えない処でアベノミクスの足を引っ張っているのでしょう。

 

徳川幕府支持の日本の司法関係者と南北戦争における北軍の奴隷解放支持と言ったイメージの米国の司法関係者の違いは一体、何なんでしょうか?

 

TPPの交渉でも「全ての品目を自由化するのが結局は日本の為でもある。日本は大局的視野に欠けている。」と「最後の最後までTPP=楽市楽座の原則を曲げなかった」米国のフロマン代表の主張を思い出します。

 

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<出所:ベンチャービート>

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米国の地上波とクラウドコンピューティングの将来を決める最高裁9判事

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 <出所:フォーブス>

★★Aereo at the Supreme Court: a guide to the biggest TV case in 30 years (and where to learn more)

★★ In Aereo hearing, Supreme Court expresses concern for cloud computing – but doubt over tiny antennas

 

★★Aereo is ‘cautiously optimistic’ about a Supreme Court victory

★★Aereo ‘cautiously optimistic’ after Supreme Court hearing

 

★★U.S. justices show little support for Aereo TV in copyright fight

 

★★In Aereo's Supreme Court Hearing, Two Sides Appear Evenly Matched

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