本格版アップルTV(ITV)は中抜きで自ら過激なインターネットCATV(MVPD)に出るのか、それとも穏当なオーバーザトップTVサービスで止まるのか!!?
<序文>
ソニーがCATVのバイアコムとインターネットテレビサービスの仮契約を締結したとウオールストリートジャーナル紙などが伝え、インテル、グーグル、アップル、マイクロソフトも同様の動きを見せる中、俄かにサービス面からスマートテレビが活気づいています。映画のネットフリックスやテレビのHuluを含むこの動きは「オーバーザトップTVサービス」と呼ばれています。
3年前の2010年、グーグルテレビがハードウエアだけ提供し(モノ支配論理優先)、コンテンツを提供する地上波などからアクセスを拒否された経験(サービス支配論理の欠如)をスマートテレビがやっと越え始めました。それが「オーバーザトップTVサービス」です。当時はスマートテレビのエコシステムが欠如していました。
その結果、「オーバーザトップTVサービス」の登場により2013年秋からスマートテレビがやっと本格的に普及、拡大するエコシステムが整い始めています。
しかしアップが志向している本格版アップルTVの場合には一歩進んでアップル自身がフルのCATV企業(MVPD=multichannel video programming distributor.)になろうとしているようです。理由はテレビ経験全体のリーダーシップを押さえる為です。エコシステム全体を支配する「サービス支配論理」ですね。(またインテル、グーグル、アップル、マイクロソフトも大なり小なりインターネット上でのフルのCATV企業を志向し始めています)
そしてパネルを装着した本格的なアップステレビを、セットトップボックスを兼ねて販売すると見られています。
アップルなどのインターネット上でのCATV飛ばし=中抜きの動きは成功するでしょうか?
★★Report: Apple negotiating w/ media companies for pay TV service, working on full-fledged TV set
★★Apple, closer to its vision for a TV set, wants ESPN, HBO, Viacom, and others to come along
★★Apple acquires Matcha.tv iOS streaming media aggregation and discovery tool
★★Americans are starting to cut the cable TV cord, and here’s what it looks like
★★Gatekeepers of Cable TV Try to Stop Intel
CATVなど有料テレビのコードカットは始まったばかり!!
<出所:http://qz.com>
バイアコムはソニーとインターネットCATVを作るのか?
<出所:http://qz.com>
<従来のアップルテレビは玩具>
故ジョブズ氏は従来のアップルテレビは玩具と考えていました、何故ならばアップルのItunesストアで販売した動画の視聴をテレビでも可能にするサービス+Huluとネットフリックスが実態だったからです。しかし本格版になれば、アップルTVに対応してインターネットをテレビの放送そのものにする必要があります。
<オーバーザトップTVサービスとは?>
インターネットをテレビのチャネルにすると言う視点からは、見逃し放送だけでは無くライブ放送をインターネット上で流す必要があります。(丁度、ラジコ
のように日本のラジオ放送がインターネットで放送されている様子をイメージして下さい)
オーバーザトップTVサービスの場合、例えばマイクロソフトのゲーム機Xboxをスマートテレビのセットトップボックスに使った場合には、様々なCATVのライブ放送やオンデマンド放送が視聴できますが、同時に個々のCATV企業と個別契約を締結していることが求められます。(この場合、マイクロソフトは契約に一切かかわらない、その結果、エコシステムをコントロール出来ない)
このサービスならばCATVとは共存共栄モデルです。しかしどうやらこれにはとどまりそうもありません。
<アップルなどの目指すインターネットCATV>
一方アップルの目指すと見られているインターネットCATVの場合には、アップルとだけ有料テレビ契約をすれば、傘下のチャネルが提供する様々なビデオをそのまま視聴できます。こうなればチャンネルの小分け販売(アラカルト販売)も可能となり、非常にCATVサービスの値段が安くなります。
これはCATV企業とまともにぶつかる構図です。
また同時にアップルは中間的な「契約は個々のCATVと締結する必要があるけれどもセットトップボックスはアップルTVの本格版を活用する」と言うセットトップボックスが不要なアプローチも追求していると言われています。
<チャンネルからアプリへの視聴の変化>
インターネットCATVはチャネルでは無くアプリの選択で視聴します。今後、地上波の電波がインターネット放送にシフトすればアプリ中心の視聴にシフトします。(ABC放送の例)これはやはりアップルによる創造的破壊ですね。
<アップルはシンプルなユーザー経験、インターフェースを好む>
アップルのコアコンピタンスは「シンプルなユーザー経験、シンプルなインターフェース」の提供ですから、CATV企業のセットトップボックスとの共存などは好みません。また地上波の電波にも興味はありませんが、流石にチューナーは付けて来ると思われます。ゼスチャーコントロールのキネクトを開発したイスラエルのプライムセンスにも買収提案をしたと言われています。
<CATVとの交渉は難航、見切り発車へ>
これを実現する為、アップルは2年も交渉してどっと疲れたCATV企業相手では無く、直接、ハリウッドのビデオ作製企業=コンテンツ企業との交渉を始めています。一方CATV企業はそれを必死で妨害しているそうです。
明らかにCATV企業飛ばしの動きです。タイムワーナーなど多少前向きとされる一部を除いてCATV企業とは対立する構図が出来始めています。同じインターネットCATVを目指すインテルなども相当CATV企業から妨害されています。
CATVやハリウッドとの契約交渉を促進する為、アップルは元Hulu SVP のPete Distad氏を採用しました。(2013年8月)
またアップルは2013年8月、プログラム推奨アプリのMatcha.tvを買収しています。動きが急速に具体的な展開になり始めています。
実際は6億のITUNESの顧客数を持ってしてもCATV各社やビデオコンテンツを開発するハリウッドとの交渉が難航しており、とても理想通りには行かないようです。しかしアップルは「十分なビデオコンテンツを確保すれば見切り発車するべき時が来た」と考えているようです。タイムワーナーのHBOやESPNなど仲の良い Disney,更に音楽のMTV、 Viacomなどの番組を確保して兎に角、サービスを開始するとの見方が強まっています。
少しずつコードカット(CATV離れ)が進む中、インターネットテレビのエコシステムの天の時が成熟したようです。
<スマートテレビはいよいよ普及するのか?>
ハリウッドのビデオコンテンツ企業にとっては既存の有料テレビ(CATV)の他に様々な新しいインターネットサービスが出来ることは歓迎のようです。何故ならばアップル等にお金の回収(決済)などを委託して、既存のCATV企業を実質中抜きし、直接、番組を視聴者に届ける様々なサービスが登場したと彼らの眼には映るからです。そうなればハリウッドはもっと稼ぎ、一方視聴者には値段の安い「有料テレビのアラカルトサービス」が提供可能です。音楽だけのCATV番組が見たいとかスポーツだけ見たいなどですね。
しかしCATV企業にとっては悪夢の到来です。コードカットで契約を切られる上に自社の提供するブロードバンド上でインテルやアップル、ソニーのインターネットCATVがリソースを大食いします。
<プログラムアクセスルールの改正と独占禁止法の適用か?>
アップル、インテル、ソニー、グーグルなどがオーバーザトップTVサービスからインターネットCATVを志向する中でFCC(米国連邦通信委員会)などはオーバーザトップTVサービスやインターネットCATVの動きを支持しています。ニューヨークタイムス紙は「FCCによるプログラムアクセスルールの改定」と「独占禁止法の適用」を課題として挙げています。
何故ならCATV企業による妨害工作が激しいと見られているからです。しかしFCCのプログラム・アクセスルール(番組提供義務)によれば有料テレビの間では適当な支払いをすればお互いに番組を融通する義務があります。しかしインターネット放送(インターネットCATV)に対してはそれが現在、適用されません。そうなれば行き過ぎたCATV企業の妨害工作を独占禁止法で取り締まるしか手がありません。
アップルのインターネットCATVはそういった動きも加速する中、一体、どうなるのでしょうか?