<序文>
米国のウオールストリートジャーナル系のブログAllthingsDの講演の中で面白かったのは、デイズニーワールドが発表したマジックバンドとMyMagic+でした。ディズニーパークの会長であるトム・スタッガスさんが、初めて披露しました。これから数ヶ月後に本番に入ります。
マジックバンドと言うのはファーストパスと言う汎用の入場券とレストランなどの予約、滞在するホテルの鍵を兼ねたウエアラブルのリストバンド(マジックバンド)を含むMyMagic+と呼ばれるスマートフォンのアプリやWeb上からのサービス全体を指します。My
Disney Experienceと名前が付いています。
これまでの「あれ、ミッキーが踊っている!!」から「あれ、ミッキーが僕にこっそり話しかけて来た」と言ったイメージになるのでしょうか?仮想と現実の一体化の経験が進化する訳ですね。
従来、ディズニーワールドを訪問するには紙のパスや予約チケットなど10種類程度の紙の書類が必要でした。マジックバンドになればそれらの予約やチケット、ホテルの鍵、クレジットカードの情報もマジックバンドに入っており、ターンスタイルにかざすだけで処理されます。
今後ディズニーワールドの訪問者はマジックバンドの着用が義務付けられます。
成功すれば全世界のディズニーのテーマパークがスマートテーマパークに変身します。年間3千万人の訪問者がいるディズニーワールドの変化は楽しみです。
講演したThomas Staggsさんは Walt Disney Parks and Resortsの会長
<出所:allthingsD>
Linking the entire MyMagic+ experience together is an innovative piece of technology we developed called the MagicBand
A major component of MyMagic+ is the new My Disney Experience website and mobile app, which gives
<出所:ディズニー>
<増えるか売り上げ?>
スマートフォン用に無料のWi-Fi サービスが既に導入されたディズニーワールドは、スマート革命の活用により、訪問者の仮想経験を充実させ、リピート訪問者の増加と客単価=売り上げ増を狙っています。訪問者が興奮すればするほどお金を使ってくれると言う発想です。これは店舗のスマートストア化などのインパクト型のショッピングにも参考になりますね。(O2O)テーマパーク内の無料のWi-Fiはスパーボウル並みの規模の訪問者が毎日使います。
<昔の電子チケットと今のウエアラブル>
さて電子マネーがはじめて注目された1995年頃、筆者は英国のスインドンやニューヨークなど(オフライン)電子マネーの実験場(モンデックスと呼ばれた電子マネー)を訪問し、必死に電子マネーを追っかけておりました。当時はICチップ内蔵のカードの中にオフライン形式で情報の形でお金が収まるタイプ(オフラインのストアードバリュー方式)とサーバーの口座間でお金を送金するタイプ(オンラインのアカウントアクセス方式)の二つがありました。そしてその後、欧州のスキー場では非接触型ICチップを利用したオフラインの腕時計型の電子チケットが流行り、オフライン腕時計をかざすだけでリフトに乗れました。実はこのころ日本の豊島園もリストバンド型の電子チケットを活用していました。2011年頃の日本では東京マラソンにリストバンド型の電子マネーを腕に巻いて市民が参加し、電子マネー「Edy」(エディ)の入った「e-moneyband」(イーマネーバンド)でジュースを買って飲みながら走る姿も目に付きました。
電子マネーのカードやリストバンドに代表される従来のウエアラブルデバイスはオフライン型の活用が中心でした。テーマパークで言えば所謂、ターンスタイルに電子チケットをかざす形でした。
さて2013年のデイズにーワールドでは、ライドのパス、レストランなどの予約チケットや白雪姫とのツーショットの予約、ホテルの鍵の仕組みの入ったマジックバンドが、旅行予約した時点で自宅に宅配されます。ブルートウス搭載のRFID技術を内蔵しており、ゲートにかざすだけであらゆるライドに乗ることができます。またレストランなどでは予約の食事券が入っています。(ここまでは20世紀末の電子チケットとあまり変わりません)マジックバンドにはGPSは搭載されていません。またクレジットカードの情報が入っている為、決済のスクエアと類似でマジックバンドをかざすだけでショッピングやスナック菓子もその場で買えます。(決済のスクエアはもっとカッコイイですが)
これによってディズニー側は、個々の顧客のテーマパーク内での行動を詳細に把握できるようになります。こうすれば「あっちのライド乗らない?」とか「素敵なレストランの席が空いてますよ!!」とか「風船好きでしょ?」とか混み具合や個々の訪問者の好みに応じて提案できますよね。また個人情報をディズニーのキャストやキャラクターに教えるかどうかの選択肢もあります。判り易く言えば「タロー君、おはよう!!」とキャラクターのミッキーに言わせるかどうかを父親が設定する訳ですね。この設定を使えばその夜には白雪姫から長女にメッセージが届いたりします。
しかしMyMagic+とマジックバンドが一体化すれば、中々凄い世界が見えてきます。
<ウエアラブルはオフライン型からスマートフォンなどとの連動オンライン型に>
従来、オフライン型の活用法が主体だった電子マネーや電子チケットを搭載したベルト型や時計型、グラスと呼ばれるメガネ型などのウエアラブルデバイスが、オンライン型に進化しようとしています。
予約後自宅に宅配されるマジックバンドではアトラクションのファーストパスを選択できます。幾多のアトラクションの内三つのアトラクションまで選べるそうです。例えば白雪姫とハグとか花火の打ち上げやパレードなどでしょう。そしてアトラクションが開始される時間が近くなると通知が来るどうです。(これはスマートフォンで受けます)ファーストパスではVIP席に座るサービスも準備されています。
テーマパーク訪問者には「事前に全てを決めて予約したイタイプ」と「ほとんど何も決めないで訪問する行き当たりばったりタイプ」がいるそうです。
さて次に注目すべきはMyMagic+によるスマートフォンとマジックベルトの連動でしょう。これが今後進むと考えられます。(現段階では詳細発表なし)
ディズニーワールドの場合には、MyMagic+と呼ばれるサービスを支えるスマートフォンなどが、オンライン型のウエアラブルデバイスと連動します。ファーストパスによるアトラクションの予約やライドの予約、家族そろっての夕方のレストランの予約などは事前にMyMagic+で実施し、その内容がマジックベルトに埋め込まれて自宅に宅配されるようです。事前予約型の家族にはとっても喜ばれそうです。
MyMagic+により提供されるMy
Disney Experience はwebsite(パソコン)とモバイルアプリから成り立っています。
行きあたりばったりタイプの家族はスマートフォンを使ってテーマパーク内でどんどん新しい予約をしたり、予定を変更できます。それが(今後段階的に)マジックベルトに反映される訳ですね。ませた長男が「わースノーホワイト素敵!!と思ったらツーショットのリクエストをスマートホンからする」と言うシナリオです。それが即座にマジックバンドに反映されると言う方向に今後向かうと考えられます。
O2Oのショッピングを考える場合、ディズニーの例は参考になりますね。
日本でも早くやって欲しいです。
山崎 秀夫
2013/06/06 09:50:00