スマート革命と会社の年齢、壮年期を迎えたアップルはソニーになったのか!!?
<序文>
一人が七台のスマートデバイスを時と場所に応じて使い分けるスマート革命の進行の中でアップルは、10年ぶりの減益に直面しています。次の第三四半期の粗利益率は36%から37%の間と予測され、だいぶ下がりました。日経新聞にはアップルは壮年期を迎えた可能性があるとありますが、アップルはかつてのソニーのようになったのでしょうか?
確かに株価は2012年9月の700ドルから400ドルまで下がっています。またリクルート業者から見ればアップル社員から送られて来る転職用のレジメの数が増えているとも言われています。
果たして実態はどうなんでしょうか?
★★ アップル「壮年期」に 陰る革新性、高成長に転機 (日経記事)
★★ Apple、第2四半期の純利益は18%減少―過去10年で初めての減益
★★Apple's Q2 2013 earnings: What the analysts are saying
<出所:フォーチュン&CNN>
<バランスシート上は壮年期かもしれない>
確かに音楽のiPodやインターネット電話(スマートフォン)のiPhone、パソコンを置き換える可能性が高いiPadなどは、完成度の高い革新的な商品とサービスの組み合わせであり、同時に財務面でも大きな収益をアップルにもたらしました。
しかし大きな収益を生み出す主力だったスマートフォンの業界は、アップルが確立した標準的なハードウエアとサービスの組み合わせ(サービス支配論理)が真似され、アップルの得意な利益率の高い、先進国の上澄み市場は既に飽和状態です。
また今後ICarやスマートテレビ、スマートウオッチ、スマート家電などがスマート革命(モノのインターネット)の進展の中で登場してきますが、これらはスマートフォンやタブレット程、利益率が高くないと言われています。そうなればアップルは売り上げや利益を既存のiPhone、iPadなどに依存せざるを得ず、バランスシート上は壮年期説は一定説得力があるかもしれません。
<アップルの革新性は陰ったのか?>
確かに嘗てのソニーは1994年のプレーステーション登場を最後に商品開発の革新性を失ったとされています。この見方は立石泰則氏の著した「さようなら!僕らのソニー」などに詳細に述べられています。アップルも創業者のスティーブ・ジョブズ氏を失って同じ道を歩み始めたのでしょうか?
確かに現在のCEOのテイム・クックさんには、マスメディアや投資家、消費者を魅了する「魔法の呪文」を述べる力は無いようです。色々な米国テックブログに書いてある通り、「魔法の呪文」=会社の革新性を示す記号は余程、グーグルなどのメッセージの方が持ち合わせています。
さて会社の能力を考える場合、バランスシートを支えるBSC(バランス・スコアーカード)の視点が重要ですが、それは以下の三点から成り立ちます。
① 顧客の視点 (顧客資本)
② ビジネスプロセスの視点
③ 学習と成長の視点(社員資本)
注)
BSCは1992年ハーバードビジネススクールのロバート・S・キャプラン教授とコンサルタント会社社長のデビット・P・ノートン氏が開発した企業の業績評価手法。
アップルの場合、革新性に関しては消費者の言うことは聞きませんから、社員のケーパビリティである「学習と成長の視点」が非常に重要になります。
一言で言えば「あっと驚く新製品開発に貢献したいと考える意欲ある無名のエンジニア集団」がアップの中に顕在なのかどうかと言う点でしょう。もしアップルが革新性を失ったならば、一時期のマイクロソフトから有為な人材がグーグルなどに流出したような事態に陥るでしょう。
ここがしっかりしていることがはっきりすれば2013年秋以降、株価はまた上がりますね。
確かにリクルート業者に送られて来るアップル社員のレジメの数は増えていると言われていますが、クラウドコンピューティングに直面した一時期の米国マイクロソフトからの人材流出や現在の米国ヤフーのように雪崩を打って有為な社員が退職しているという状況では全くありません。
従がってモノ支配論理を打ち破り「ハードウエアとソフトが作るサービスを組み合わせた」サービス支配論理に基づく新商品は、まだまだ期待できると考えられます。そこが出来ないとアップルもソニーのような普通の電機メーカーになり下がったと言えるのでしょう。
2013年秋のスマートウオッチやスマートテレビの本格版の登場に期待しましょう。