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スマート革命と経営の摩擦、ポストパソコン時代を本当に乗り切れるのかマイクロソフト、Windows8のリーダーSteven Sinofsky氏の突然の退社

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<序文>

 マイクロソフトがポストパソコン時代(スマート革命時代)を宣言したWindows8の開発および経営トップのSteven Sinofsky氏が突然、マイクロソフトを退社しました。アップルのスコット・フォーストール氏と同様に天才的なセンスを持って色々な製品を出してきた天才ですが、他の役員とはうまく折り合っていなかったとの報道です。

 

 以前、アップルがスコット・フォーストール氏を辞任に追い込んだ理由も今回のマイクロソフトの発表と同じでコラボーレ―ション(協調性)の欠落でした。(両社のCEOが共に声明でコラボーレ―ション(協調性)を強調しているのがその証拠と指摘されています。)

 

しかし斬新な発想には、摩擦を恐れない一匹オオカミ的なビジョンと実行力、突破力が必要です。

 

官僚的なマイクロソフトでまがりなりにも明らかに斬新な商品とサービス=Windows8などを出したSteven Sinofsky氏がいなくてマイクロソフトはポストPCコンピューティングの時代を乗り切れるのでしょうか?

 

★★ Sinofsky's out of Microsoft, but why?

★★ Breaking: Windows Head Steven Sinofsky to Leave Microsoft

 ★ Microsoft Announces Leadership Changes to Drive Next Wave of Products

 

★★ Microsoft, Apple, and the demise of the take-no-prisoners exec

 
  元マイクロソフトのシノフスキー氏(左)と元アップルのフォーストール氏(右)

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<出所:cnet>

 

<大手の企業が求めるコラボレーション(協調性)型マネージャー、経営者>

 一般に大手の会社で役員や本社の部長になるには「仏さまのような丸い人物、敵を作らないソーシャルインテリジェンスが必要」と言われています。程度の差こそあれ、既にマイクロソフトもアップルも大企業です。

 

 協調型のマネージャーはチームビルダーと呼ばれ、サプライチェーンの管理や工場の管理などでは必須な人材です。

 

<大企業の製品管理チェック体制がだめな訳>

 昔、筆者がある商社で働いていた時、当時のマネージャーに繰り返し諭すように言われたことがあります。「大手の会社からは何の変哲もない、面白く無い製品しか出ない。」「それは皆で一緒に製品のデザインを揉むからだ。」 「そうすればリスクの最も少ない製品を作ることができる。」 「例えばXXXビールを見てみろ。必ず一定売れるが、しかし製品に斬新な魅力が無い。」

 

ということは製品開発において尖がった魅力的な製品を作るには、「人の言う事を聞かない、摩擦を恐れないタイプの開発者が必ず必要」ということになります。その代わり他の関係者の目を通していないため大きなリスクのある製品が出ます。

 尖がった開発者の作る製品にはその人の人格や生き様が表現されます。それが生活者に大きな魅力を齎し、感動を生めば大ヒットが生まれます。

 

一方協調性は、リスクはないけれども何の変哲もない面白く無い製品しか作り出せません。この協調性の罠が有名な「グループシンク(同質集団による集団極化現象)」の一つの表れです。同じようなものの考え方をする仲好しグループ=金太郎飴集団が変化に弱い理由です。一時米国ヤフーがこの傾向に陥っていると言う指摘がありました。グループシンクは集団浅慮と訳すこともあります。

 

 アップルにおいては故スティーブ・ジョブズ氏やスコット・フォーストール氏が尖った開発者の役割を担い、一方マイクロソフトにおいてはSteven Sinofsky氏が担当して明らかに斬新な商品とサービス=Windows8を世に出しました。

日本の元ソニーのゲーム機、PS開発で名を馳せた久夛良木健氏も同様のタイプの人財でした。

 

他人と簡単に折り合うようなエンジニアには、夢の新製品開発は任せられません。この点、プロジェクトチームの協調性を重視する基幹系システムの開発とはまったく性質が違います。

 

 とりわけマイクロソフトの製品は、端々に位置するXboxなどを除いて魅力的な商品が登場しないというのは有名な話でした。その理由は国内の大手メーカーと同じで皆で揉んで叩く文化だからです。

 

協調性を重視するマイクロソフトでSteven Sinofsky氏は、明らかに斬新な商品とサービス=Windows8を世に送りだしました。(その成否はこれから市場が決めますが。)恐らくSteven Sinofsky氏は内部の人間関係の軋轢などで相当疲れが溜まっているのだと考えられます。もしかすればへとへとかも知れません。

 

<マイクロソフトはポストPCコンピューティングの嵐を乗り切れるのか>

 Steven Sinofsky氏が去った後、Windows8関連の部門はゲルマン民族の侵入の結果、古代ローマの東西分割宜しく二つに分割され(開発と営業)、それぞれ女帝(写真)が立ちました。ゲルマン民族をスマートデバイス連合と考えれば、パソコン王国は滅びの危機に瀕しています。同じ日に199ドルのクロームブックをエイサーから出したグーグルの顔は、一瞬ゲルマン人に見えてきます。

 後任の二人の女帝、開発を率いるJulie Larson-Green氏(上)と営業のTami Reller氏(下)

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<出所:マイクロソフト>

 

これはWindows8の崩壊=ローマの崩壊=パソコンの崩壊の予兆なのでしょうか。それとも東ローマが約千年の長い繁栄を築いたようにマイクロソフトはポストPCコンピューティングの嵐を乗り切り、スマート革命で再び栄華を極めるのでしょうか。

来年にも答えは出るでしょう。

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