フェースブックへのソーシャルシフトは幻想、「ソーシャルコマースの失敗」は上場に影響するか!!?
<序文>
2012年の4月頃、上場控え、今やわが世の春を謳歌する勢いのフェースブックですが、ちょっと思わぬニュースに足を掬われた格好です。
ブルンバーグ誌やビジネスインサイダー誌などがフェースブックにおけるEコマースは須らく失敗しており、ソーシャルコマースは幻想だと言いだしています。実際、2011年にフェースブック上でショップを開設したGamestop, JC Penney, Nordstrom, そしてGapなどがことごとく2011年内にお店を畳みました。やっぱりソーシャルメディアはネット通販サイトとしては不適格なのでしょうか。
国内でも多くの企業が90年代のWebサイト立ち上げの再来に乗り遅れるなとばかりフェースブックに進出し、その結果、多くのネットベンチャー企業が思わぬフェースブックバブルの為、コンサルなどで大いに稼いでいます。しかしどうやら現時点ではネット通販に関する限り「ソーシャルシフトは幻想」と申し上げるのが正直な処でしょう。
筆者もフェースブックの講演は時々頼まれるのですが、駄目なものは駄目と正直に申し上げることにしています。
★★Facebook not a virtual shopping mall after all?
★★ Facebook Commerce Has Been A Big Flop
★★Gamestop to J.C. Penney Shut Facebook Stores: Retail
(出所:CNET)
<ソーシャルメディアのビジネス展開で何が難しいのか>
ではソーシャルコマースの一体、何が難しいのでしょうか?
新しい経済学に「行動経済学」と言うものがあり、米国では常識になっている為、フェースブックのマーケティングにおいても時々活用されている事例が見られます。その主張のポイントは企業の存在理由、行動は「利己の利益=自社の利益追求であると共に利他であるべき」と言う単純なものです。背景に進化心理学がありますから、こうなる訳ですね。
さてフェースブックのような(ネット)コミュニティはそもそも公共の場と言う認識が基本です。即ち利他の姿勢が企業にも求められます。そこで如何にビジネスをするかと言う利己=利潤追求とのバランスが難しいわけです。
これはブランド認知や潜在顧客との会話の視点からは、企業姿勢としてさほど困難ではありません。そして多くの欧米企業がフェースブックとフォークスエア、更にセカンドライフなどが発祥の地となったゲームの世界観(ゲーミフィケーション)ののりで参加者を集めて成功しています。
しかしいきなり店舗を出すと言う姿勢は、利己と利他のバランスと言う企業姿勢を壊すリスクがあります。結局、この問題を解決できなかったため、Gamestop, JC Penney, Nordstrom, そしてGapなどの名だたるマーケティングの凄腕企業が店舗から撤退したと考えられます。(尚、彼らはブランドコミュニティ=ファンページはそのまま残しています。)
<嘗てのセカンドライフにそっくりの事態>
利他の要素が殆どないグル―ポン型のソーシャルコマースは兎も角、およそ企業が(ネット)コミュニティで販売に成功するのは容易ではありません。
今から5年ほど昔、仮想社会サービスのセカンドライフがソーシャルメディアとしてEコマースに挑みました。しかしアメリカンアパレルを始め殆どの企業がシムを諦め、早々に撤退しました。
この時は仮想商品をプロダクトプレースメントして、その流れで実売商品を買ってもらおうとしたわけですが、肝心の実売商品に行きつくまでに仮想の衣装や自動車がセカンドライフのマイクロ取引の中で素人作品に魅力で敗れ、全く競争力がありませんでした。
一方今回のフェースブックにおけるGamestop, JC Penney, NordstromそしてGapの場合には、「たまり場=ハングアウトで仲間と話している時にモノ売りに来て邪魔するようなものだった」とフォレスターリサーチなどが酷評しています。
<今後はどうなるのか>
筆者は今後もフェースブック上でソーシャルコマースが失敗し続けるとは見ていません。例えばウオルマートのようにクリスマスとかバレンタインデーと言ったイベントとリンクして社交を促進すると言った「イベント+社交の物語」と言ったアプローチは成功する確率が高いと思っています。
元々フェースブックの広告モデルもグーグルのように単純ではない為、適切なフェースブックなどソーシャルメディアに適したアプローチ法を発見するのに随分時間がかかりました。
従って早晩、Fコマースと言われる適切なネット通販のアプローチは開発されるでしょう。
しかしソーシャルメディア上におけるダイレクト取引がそう簡単ではないと言う認識は、欧米企業のだけではなく日本企業にも急速に広がります。
ネットべンチャー各社は「フェースブックバブルの崩壊」に備えた方がいいかもしれません。