パーソナルクラウド(消費者クラウド)の進化、コンテンツからコミュニケーションと機器操作へ
<序文>
アップルのiCloudが火を付けたパーソナルクラウド(消費者クラウド)ですが、フォードのビル・フォード会長が繋がり革命とクラウドサービスを結びつけ、ITS(インテリジェントトラフィック・システム)=自動運転に至る過渡期の課題としての構想を発表したり、トヨタが住宅と自動車とソーシャルメディアを絡ませたパーソナルクラウド(消費者クラウド)を発表するなど、従来の企業クラウド(エンタープライズクラウド、B2B)に代わる生活者の為のクラウドサービス(B2BやB2E)が注目を集め始めています。
パーソナルクラウド(消費者クラウド)は機器同士、機器と人、サービス同士の繋がり革命を巻き込みながら進んでいます。そこで今回はパーソナルクラウド(消費者クラウド)の進化のプロセスを纏めてみました。(あまり進化と言う用語を多用しますと進化生態学者からしかられますが、ご容赦下さい。)
★★ Ford Chairman Sees Sustainability as Integral to Auto Industry Leadership
(引用元:アップル iCloud)
<初期の仕組み>
パーソナルクラウド(消費者クラウド)は個人の持つ複数の機器の為にカレンダーやコンタクト先の保存、書類の編集と保存目的の共通のストパレージを持つ事から始まりました。初期のパーソナルクラウド(消費者クラウド)は、全てがWebアプリとして捉えられ、ブラウザーを使って書類などをアップロードする形態をとっていました。マイクロソフトのスカイドライブやそもそもアップロードなど不要なグーグルドックなどが典型例であったと考えられます。これは企業クラウドのコンセプトを引き継いでいた為と考えられます。
そしてその発展形は個人から家族や友達、個人事業主の場合には仕事の仲間とのブリーフケース的な情報共有の手段として成長しました。
<仕組みの進化>
しかし生活者の立場に立てば、企業クラウドと同様の仕組みでは、明らかに使い勝手がよくありません。何故なら一々書類やカレンダーをブラウザーを活用してアップロード、ダウンロードしなければならないからです。こういった人手によるプル型のアプローチは、新しいプッシュ型の仕組みによって非常に使い勝手が良く改良されました。
その典型がドロップボックスやボックスネット、エバーノートなどであると考えられます。これらの仕組みはブラウザー主体では無く、ネイティブアップスを主体に、ブラウザーの仕組みを補足として開発されました。一人の所有する複数の機器の間の会話(M2Mクラウド)は、ネイテイブアプリが裏で無意識の内に仕事をする「不思議の世界」、「魔法の世界」の登場でした。iCloudに見られるiPhoneで買った大好きな音楽がいつの間にかiPadに入っている事例やスマートフォンで途中まで読んだ電子書籍が自宅のパソコンで開けば、読みかけの箇所のシオリが付いている紀伊国屋の魔法もこの流れです。
<更なる仕組みの進化>
ネイテイブアップスによる複数の機器の間の会話(M2Mクラウド)は自動車を中心に新たな進化が始まっています。GPSを活用して自然なドライビングパーティが作られ、100メートル前の車が急ブレーキを踏めば、パーソナルクラウド経由で車同士が会話し、ドライバーに「おい、事故かもしれない、気をつけろ!!」と言う呟きがツイートや音声で伝えられます。人と機器のユーザーインターフェースもiPhonje4sの「シリ」やマイクロソフトのキネクトにより、大きく進化し始めています。MITのシャリータークル(ネット心理学の第一人者)はコンピューターの使い方が「知る」から「感じる」に変化すると主張し、アイボやファービーを参考にして「ソーシャルロボット」と名前を付けました。ソーシャルロボットは米国では鍵っ子の世話や独居老人の世話に使われています。
さて話を戻してパーソナルクラウド(消費者クラウド)における機器と人の会話はiPhonje4sの「シリ」に見られるようにソーシャルロボット(機器は人と友達)の方向に変化し始めています。スマートテレビやスマートカー、スマートフォンと言う場合には、このあたりの事情を良く理解している欧米の識者は「機器はスピリッツを持った感性ロボット」と言う視点で見ています。それから技術論に落とします。
<対象物の進化、コンテンツから開始>
ではパーソナルクラウド(消費者クラウド)の対象は一体、どんなものがあるのでしょうか。まず最初はカレンダー、メール、文書から電子書籍や電子雑誌、音楽、映画、ドラマ、ゲームに至るコンテンツが対象になります。グーグルミュージックやアマゾンのクラウドドライブ、iCloudなどは音楽から更に映画などを対象として動き始めています。
<機器同士の会話>
そして既に述べたように次の大きなネイティブアップスを媒介とした機器同士の会話があります。そして機器と人の会話があります。コンテンツの次はコミュニケーションが対象になる訳ですね。無論、ソーシャルメディアもこの流れに巻き込まれます。
<究極の機器操作>
ここまでくれば一見、SF映画の世界と思われるかもしれませんが、パーソナルクラウド(消費者クラウド)による機器の操作は既に2011年5月のグーグルIOにおいてアンドロイド@ホームと言う形でデモが行われています。既に米国ではベライゾン(2011年10月)やタイムワーナーケーブル(2010年秋)が防犯やホームコントロールの為のホームICT(デジタルハウス)のサービスを始めています。
スマートフォンやiPadを使って子供がドアのキーを忘れて帰った時、鍵を開けたり閉めたり、自宅に帰り着く前に部屋の温度を調整したり、照明を設定するなどがパーソナルクラウド(消費者クラウド)による機器操作です。
<未来を示す映画「イーグルアイ」>
半導体のインテルがスマートテレビの立ち上げを決めた時、参考にしたシナリオが映画「イーグルアイ」です。スマート機器がパーソナルクラウドを使ってクレーンを動かしカーチェースを行うシーンは圧巻でしたが、既にこうした未来は実行段階に入っています。
どうですか? エンタープライズクラウドと全くイメージが異なりますよね。