「HTML5」か「ネイティブアップス」かの対立の狭間で「ハイブリッドアップス」の時代が始まった!!
<序文>
2009年ごろからのパソコンを主体としたクラウドコンピューティングもアップルが提起したiCloudと言うポストパソコン・クラウド(スマホクラウド)の流れの中で、「ネイティブアップス」がクラウドの中心に躍り出てきました。一方従来からのパソコンクラウドは「HTML5」の急速なICT大手企業連合の合意形成により、いまやスマートフォンやタブレットも射程に入れ始めています。そして2010年夏頃から一定の処理が可能となった「HTML5」か「ネイティブアップス」かのクラウドの実現方式を巡る理論対立が深まっています。
米国と言う一神教の国は面白い国です。真面目な理論に関する論争を宗教戦争のように戦わす一方で、実践面においては徹底したプラグマティズムの国でもあります。
その結果、スマートフォンを中心とするモバイル機器のアップスに関して「ハイブリッドアップス」の時代が始まっています。
★★ Hybrid mobile apps take off as HTML5 vs. native debate continues
★★ The road ahead in mobile games
★★ 今後大手企業や確立された企業のスマートフォン開発は「ハイブリッドアップス」中心へ
<ハイブリッドアップスとは何か>
実装面では色々なやり方があるようですが大きく以下の二通りのアプローチがあると考えられます。
1、 インターネット上の情報アクセスのコンポーネントをはじめ多くの処理コンポーネントをHTML5で書き、高速処理などを要求される領域をネイティブアップス(例えばオブジェクティブC)で書く方式。
2、 逆に基本的な処理をネイティブアップスで書き、一部をHTML5で書く方式。
いずれにしても昔風に言えばコンパイラーとアセンブラーを組み合わせてプログラムを作り上げる発想です。
筆者も先日の国際電子出版EXPOで日本の電子書店が作ったハイブリッドアップスを見せてもらいましたが本当に良くできています。
<ハイブリッドアップスが流行る理由>
HTML5によるブラウザーであれば、機器及びプラットフォームを越えて情報コンテンツの提供や処理が出来るため最も効率的に思えます。しかし実装面では純粋HTML5を採用したのは英国のファイナンシャルタイムス誌位で、ハイブリッドアップスが流行っています。これには幾つかの要因が考えられますが、以下のように纏められます。
1、 アップス方式は生活者に十分受け入れられています。
わざわざお金を支払ってでもアップスを使う生活者、ブラウザーよりアップスを好む生活者の数が圧倒的に増えています。
生活者からは飽くまでもボタン一つで動くアップスである点が気に入られています。
2、 企業にとってはプラットフォームごとにアップスを開発する手間が省けます。
基本部分をHTML5で書いて機器固有の部分やグラフィックス処理をネイティブアップスで書く訳ですね。こうすればHTML5によるブラウザー方式に近い効率性が得られます。
3、 これまでどおりアップストアでアップスを有料販売できる。
一般のアップス開発者(主体は契約社員、極小規模企業、技術系の主婦、学生、会社員のアルバイト)にとっては、HTML5による効率化はあまり重要ではありません。寧ろ彼らの中には面白いアイデアを自由に表現できるネイティブアップスを好むものも大勢います。もっと重要なのは有料アップスが彼らの収入=開発やアイデア出しの動機付けになっていると言う点の方です。
ハイブリッドアップスであればこれまでどおりアップストアでアップスを有料販売できます。
しかしこれがブラウザー方式に揺り戻せば、アップスストアなどの市場が使えなくなるため折角、成長したアップ経済=アップスの有料販売は壊滅する恐れがあります。
「HTML5」だけのブラウザー方式に揺り戻せば、又昔の「コンテンツは無料の時代」が復活するかもしれず、折角育ったクラウドの集合知や多様性、組織から独立を志向する個人事業主的なアップス開発者コミュニティの持つ潜在的な知恵が消えてしまうかもしれません。
工業社会の大規模組織中心社会から個人事業主中心の自律型知識社会への移行という視点からは、アップスで副業が出来るアップスストアは潰れて欲しくありません。(ここがアップルのスチーブ・ジョブス氏の持つデジタル経済における創造的破壊に対する先見性でしょう。)
(iOS150億本のダウンロード達成)
<出所:経営誌フォーチュン>
<ハイブリッドアップスを支持する企業>
元来、HTML5を一番歓迎したのはアップスの開発者コミュニティではなく、効率化を重んじる確立された企業でした。また多くの企業はスマートホン・クラウドの生活者がアップスを好むことを経験的に理解しています。ですから本来はブラウザーで情報提供したい処ですが、多くの生活者がネイティブアップスを好むため、アップスの形式で提供している訳ですね。
ハイブリッドアップスであれば、機器を超え、プラットフォームを越えて効率的にアップス提供が出来ます。実際、韓国ロッテのハイブリッドアップスは情報提供の部分は全てHTML5で書いており、グラフィックスの部分をネイティブアップスで書いています。
(韓国ロッテのハイブリッドアップスの事例)
<引用元:ベンチャービート>
<パソコンクラウドからスマートフォンクラウドへ>
実際、グーグルに代表されるパソコンクラウドからアップルのiCloudに代表されるスマートフォンクラウドへと多様なクラウドが出現する中、ハイブリッドアップスはパソコンにも逆流するかもしれません。面白い時代になってきました。
それにしても米国で起こった論争がわずか1年足らずで収束に向かっているのは凄いスピード変化です。