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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

NHK大河ドラマ「江」の「茶々の恋」に見る認知的不協和の面白さ

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<序文>

 NHKの大河ドラマ「江(姫たちの戦国)」は、のだめカンタービレの上野樹里さんの役柄が歴史ドラマと見事な不況和音を醸し出して不人気と言う見方もありますが、一方で「あれ@@」と思うほど鋭い描き方もしています。(視聴率が20%前後というのは高いのか低いのかは知りませんが。)

特に第20回の「茶々の恋」で印象に残ったのは、見事なまでに女性の恋心を「認知的不協和」の観点から描き切っていた点でした。

こう言った社会心理学の基礎的な知見はソーシャルメディア理解の為には必須の武器なのでちょっと取り上げてみます。

注)認知的不協和

 「美しいドレスが欲しい、でも高い」と言ったある対象に対して矛盾した思い(認知)を抱き、心に葛藤を抱えること。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが提案したコンセプト。

 

<認知的不協和による見事なドラマ演出>

 ドラマの中で長女の茶々(宮沢りえさんの役柄)は「関白になった秀吉」に対して「凄い出世!!」と感慨を深め密かに恋心を抱きます。この女性が「立場のある男性に引かれる一般的傾向」は進化心理学では性淘汰仮説で説明されています。しかし一方で「秀吉は親の敵」と敵愾心を抱きます。この「好きな相手が親の敵」と言う茶々の矛盾した心理状態は明らかに「認知的不協和」です。

そしてこの茶々の悩み=矛盾した心理状態を秀吉は「あなたに尽くします。他の側室とは特別扱いします。」と言う姿勢で臨み、それにより茶々を納得させると言う筋書きです。

このあたりは自分探し(アイデンティティの再確立)に悩む茶々に自分を納得させる物語を提供している訳ですね。最近の社会心理学では自己とは自己物語のことですから。

また「秀吉が関白であり、引かれている自分と言う事実」と「親の敵という事実」、このふたつの現実を自分にとって納得できる自己物語(心の現実)を作り上げて乗り越えていくと言う描き方は心理学者フロイトの基礎理論である「心の現実論」を応用しているのだと考えられます。

 

ドラマの演出者はこのあたりを本当に良く理解しています。

 

 

注)心の現実論

 何が起こったかが問題ではなく、それを当人がどう解釈するかが問題。

ソーシャルメディアの場合には仮想空間のセカンドライフなどでアバター姿でデートすれば「心の現実論」は良くわかります。

 

<自分探しとソーシャルメディア>

大河ドラマ「江」の「茶々の恋」は以上のように分解できますが、実際のソーシャルメディアの場合はどうでしょうか。例えばSNSはショッピングの手段として流通事業者から熱い注目を浴びています。「美しいドレスが欲しい。でも高い。」という矛盾した心の状態の場合、知り合いから「私も買ったわよ!!」と言う一言があれば、「そうだ、彼女も買ったんだから安心よね。」「次の誕生日に彼に買ってもらいましょう。」と知り合いへの同調効果と自己物語が生まれてショッピングが成立する訳ですね。

フェースブックでマーケティングを本気でされたいならば、ハウツー書籍やハウツーセミナーも良いですが、その後は社会心理学の基礎をじっくり学びましょう。

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