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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

アマゾン「クラウドドライブ」等クラウドコンピューティングによる「サービス支配論理」がもたらす著作権重視時代の終焉

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<序論>

 テレビのデジタル移行、新聞や書籍の電子化と言うメディアの歴史的転換期を迎えて、21世紀型の情報経済の形がはっきり見えてきました。21世紀の新しい情報経済は著作権やライセンスなどの「もの支配論理」からクラウドのロッカーサービスに代表される「サービス支配論理」へと情報関連の取引を中心に急速に移行を促し始めています。その中で古い著作権=物支配論理に固執する工業社会派との摩擦が激増しています。2009年頃、日本の出版業界を震撼させた電子図書館サービス(その後グーグルEBOOKSへと発展)から始まって現在は、米国で大騒ぎのアマゾンが音楽サービスから開始する「クラウドドライブ」、米国のスマートテレビの世界で大騒ぎのワイファイiPad視聴、そして純粋ドメスティックな摩擦であるテレビのロケフリ視聴裁判などがそれにあたります。今後21世紀型知識社会が進展する中で情報を巡る「もの支配論理」と「サービス支配論理」の対立は激化するでしょう。

 

 

<アマゾンのクラウドドライブの衝撃>

 アマゾン20113月末に発表したクラウドコンピューティングによるロッカーサービスとよばれています。アマゾンの設けたクラウドコンピューティング上のロッカーに音楽など私的な所有情報を収容する為の「クラウドドライブ」はワーナーミュージックやソニーミュージックなど音楽業界から激しい反発にあっています。

もう4年も音楽のデジタル販売を実行しているのにアップルに追いつけず、デジタル音楽市場の13%しか占有していないアマゾンは「クラウドドライブ」と呼ばれるロッカーサービスを発表しました。このサービスはアマゾンのEC2を活用したものであり、MP3ファイルを中程度の音質で1000曲分を無料で収納可能な5ギガバイトの容量が与えられます。更にAmazon からエムペグ3のアルバムを購入すれば15ギガバイトが追加され、合計20バイトが無料で使えます。その後は他のクラウドコンピューティングサービスと同様に年間の使用料金を支払ってロッカースペースを有料レンタル使用することになります。

これはアマゾンの楽曲の販売促進の為であり、一挙にアップルのITunes ストアを追い抜く目的で始められたものです。そしてパソコンやアンドロイドなど原則、デバイスフリーで場所や時間に関係なく音楽をサービスとして引き出し視聴するものです。(iOS対応が問題になっていますが)

 

 

しかし「もの支配論理」派である旧来の工業社会派に属する一部の音楽コンテンツの所有企業から見て問題は三つあります。一つは「クラウドドライブ」が著作権で言う私的使用の枠を超えていると言う主張です。「録画の保管代行が私的使用の枠を超えている」と言う主張は日本でのテレビ映像のロケフリ裁判に近い発想ですね。従って「クラウドドライブ」は著作権違反であり、更に二つ目はこれにより音楽コンテンツの所有企業は販売機会を失う為、「機会ロス」が発生すると言う主張になります。YouTubeで著作権争いが勃発した時、未分化だった著作権論争の論点が「もの支配論理」と「サービス支配論理」の対立として次第に鮮明になり始めています。)

 

そして三つ目は視聴者が友達とCDを交換して二人とも同じ音楽を登録するというナプスター型の著作権違反が助長されると言う見方です。(詳細はよく判りませんがこれは、筆者は一理あると思っています。サービス支配論理を準備しているDECEなどではこれを避ける為、販売コードなどの登録を検討していると言われています。)

 

更に問題は「クラウドドライブ」はクラウドサービスですので音楽だけではなく映像や書籍などあらゆる情報サービスに適用される点でしょう。

 

アマゾンは音楽コンテンツ所有企業に相談無く勝手に開始した点などは日本のテレビのロケーションフリーのサービスにそっくりですね。

 

しかしこの件は音楽コンテンツ保有企業とアマゾンと言うサービス事業者の間の対立なので今ひとつ「もの支配論理」派と「サービス支配論理」派の対立と言う点では迫力がありません。

Amazon Cloud Drive


 

 

★★Amazon、クラウド上で音楽を保存・再生できる「Cloud Drive」立ち上げ  


 

 ★★mazon.comのクラウド音楽サービスにレコード業界から反発


 


 

 

 ★★Will Amazon's Cloud Music Service Fly

 

<ワイファイiPad視聴>

 サービス支配論派と古いもの支配論理派の対立としては、ケーブルテレビのワイファイiPad視聴の方が面白いです。この争いではコンテンツ保有企業の内部での対立が明らかになっています。

 

ケーブルテレビのタイムワーナーとケーブルビジョンが始めた家庭内でのワイファイiPad視聴に対して番組を提供しているバイアコムやディスカバリー、フォックステレビなどが著作権違反、契約違反、機会損失の発生と噛み付き、一部で裁判が始まります。

これはケーブルテレビが視聴できる家庭内での話です。iPadは二台目のテレビと同じだから視聴者に対する当然のサービスだと主張するタイムワーナーとケーブルビジョンに対し、iPadはテレビと認められないと言う「もの支配論理派」の放送企業との対立です。しかし現在は「番組提供義務」の下、賛成派も反対派も両者はお互いに自社の映像コンテンツを渡しあってそれぞれ放送をしている仲間内です。

 

面白いのはディズニー傘下の若者に人気のスポーツチャネルのESPNiPad視聴4月にはいって発表した点です。これは家庭内のワイファイiPad視聴だけではなく、外出先でのイiPad視聴を可能にしています。IPadiPhoneiPod タッチなどiOS機器なら全てが対象です。(恐らくこの後は対象機器を漸次増やすのでしょう。)その為、201010ESPNはインターネットを正式チャネルと認め、自ら 今回対象となったチャネル(ESPN, ESPN2, ESPNU and ESPN3.com content のインターネット放送を実施しています。(これはクラウドコンピューティング活用の発想です。) ットボール、ゴルフのマスターズなどやバスケットボールのNBAのプレーオフ、 そして大リーグ野球中継などがまずは自宅内外を問わず、まずはiOS機器なら全て視聴できます。(時間、場所、機器の自由)

iPad視聴の件では映像の所有権を持つ企業の間が著作権重視の「もの支配論理派」=工業化社会派とサービス重視の「サービス支配論理派」=知識社会派に見事に割れているのが特徴です。こうして赤組と白組の戦いが既に始まっています。

 

<日本のロケフリも再度、裁判になるだろう>

 20111月、日本では最高裁がテレビ番組を海外などに配信代行するロケフリを著作権違反=自動公衆送信装置に当たるとし、知財高裁に差し戻しました。しかし海外のクラウドコンピューティングを活用した「クラウドドライブ」のような「保管代行」やインターネット放送の形が普通のサービスとしてグローバルに台頭し、日本も巻き込まれる場面が今後は多々出てきます。従って仮にアマゾンがテレビ映像を対象に視聴者に代わって保管代行や録画代行をクラウドコンピューティングの下、実施すると言ったようなサービスが日本で開始された場合、日本の放送業界はアマゾンに対して「ロケーションフリーは著作権違反」と言った訴訟が起こせるでしょうか?もし訴訟強行をすれば明らかな「非関税障壁」としてオバマ政権から日本政府に圧力がかかるでしょう。

 

東日本大震災の時、NHKは特番のユーストリーム配信を行い、一般視聴者による再送信放送さえ認めました。ニコニコ生放送やヤフーでも特番を放送しています。またTBSや朝日放送、フジテレビも特番をユーストリームで流しました。茨城以北の東北の各ラジオ局もユーストリームで世界に放送しています。

クラウドサービスの充実を受け、国内でも「もの支配論理」派の放送局、音楽アーチスト、出版社や新聞社と「サービス支配論理」派の先進企業という具合にメディアの歴史的転換期には明確な業界内の亀裂が表面化するかもしれません。

とっても面白い時代になってきました。わくわくしますね。

 

★★ 1対1通信のロケフリは「自動公衆送信装置」になりうるか 「まねきTV」最高裁判決の内容


 

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