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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマートテレビ、ソーシャルメディアに一般適応される「幸福理論の視点」

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<序文>

 我が国でも民主党内閣が新経済成長戦略において「幸福度」と言う耳慣れない言葉を使っていますが、欧米のソーシャルメディア研究ではツイッターの連鎖メールの解明(炎上や圧倒的人気)などに「幸福理論」を応用する研究が話題になるなど「幸福理論」の視点はソーシャルメディアの理解の為に必須事項になり始めています。

一方国内のソーシャルメディア研究には殆ど「幸福理論」の視点が見られないため紹介します。因みに筆者は四月に出版予定の「スマートテレビ」(ソーシャルテレビの要素に幸福理論が適用可能)の書籍でその魅力を説明する為に「幸福理論」の一部を応用しています。

 

 

★★ 幸せ理論に基づくムードが支配するツイッターのソーシャルメディア研究

 

 ★ Twitter Users Congregate Based on Mood, Study Says

 

 Happiness is assortative in online social networks

 

★★ 新しい指標の模索始まる 幸福度

 

 

 新成長戦略基本方針 


 

引用 (閣議決定)

 私達は幸福度や満足度と言った新たな指標、価値観も提案する・・・・

引用終わり

 

<幸福論とは何か>

 人は何故幸せなのか、どんな時に不幸なのかを研究するのが幸福論です。新しい顧客満足なども幸福論で説明されます。

最近の研究ではデンマークや英国よりも日本人の幸福度は低いと言う発表や日本でもイースタリンの逆説に基づく「所得水準が長期的に上昇しているにも関わらず、日本人の平均的な幸福度が上昇していない」と言う「所得と幸福は無関係」と言う研究成果が発表されるなど日本政府も注目しています。

 

主観的な幸福度から客観的な幸福度を計測しようとする試みも盛んであり、例えば国連の人間開発指標やブータンのGNH(国民総幸福量)などが知られています。

 

欧米の研究者は幸福理論の研究成果をソーシャルメディアの研究に当てはめて「ツイッター上の爆発的な流行や炎上を研究」しています。実際ソーシャルメディア上では色々な事件が起こっており、36時間で約百万人のファンを集めた米国テレビタレントの人気の秘密解明や日本の大震災に伴う津波の事件を茶化して大炎上した米国の保険会社の件など研究材料には事欠きません。

 

例えばツイッターの炎上や流行は「感情一致効果」で説明できます。これは人々の幸せ度合いと関連して「投稿が幸せ感情の状態に訴求した結果」炎上や流行が起きるという見方です。例えば「日本が津波で皆、不幸な悲しい思いをしている時に冗談を言うとはなんだ!!」と言う感情が一挙にツイッター全般に伝染すると炎上が起きるわけですね。

 

こう言う視点は仕組みとハウツーばかり重視する国内のソーシャルメディア研究には明らかに欠けていました。

 

★★幸福度について(論点まとめ)  (全体のめぼしい研究成果が述べられている。)

 

 

★★ When the Marketing Reach of Social Media Backfires

 

ソーシャルメディアは認知よりも感情

一般に社会心理学には情報や知識を客観的に捉えようとする「認知論」の立場と主観的な「感情論」の立場、そして実際の行動を行う「行動論」の立場があります。そしてソーシャルメディアが浸透するに連れて欧米の社会学や社会心理学の研究者は「感情論」の視点に重きを置き始めており、その中で「幸福理論」が注目されています。喜怒哀楽の感情要素の中で幸せ要素(喜びと楽しみ)を増幅し、悲しみと怒りを抑える研究ですね。幸福の社会学の言う「不幸の減算」と言うことでしょうか。

 

さて一般にITを生業とされている方々はネットを情報や知識の共有の場と考え、ソーシャルメディアにより形成されるネットコミュニティは「興味あるテーマ、年齢、性別、住所、人種、宗教」などにより形成されると考える傾向があります。これはクールな感情をはさまない「認知論」の立場です。

しかしソーシャルメディアは「認知論」以上に「感情論」が重要です。これはITエンジニアの方々が苦手とされている領域なので意識的に学習すべき領域と思われます。

 

 

<スマートテレビ、ソーシャルテレビと幸福理論>

 最後に筆者の研究成果を書きますね。一般にソーシャルテレビにおけるテレビアップスの活用は「潜在的な視聴行動の幅の拡大」と考えられます。インドのノーベル経済賞受賞者であるアマルティア・センは「潜在的な行動の幅の拡大」は幸せを増加すると述べています。筆者はこの理論をテレビアップスによる視聴者満足の説明に適用しました。一般にソーシャルテレビにおけるテレビアップスの活用は「潜在的な視聴行動の幅の拡大」と考えられます。だから自律型の「ながら視聴者」はテレビアップスにより自己表現の幅が広まり幸せ度=視聴満足が高まると考えられます。

また社会心理学者のマイケル・アーガイルは長年の研究データを基に「社会的サポートは人々を幸せにする」と述べています。これは紅白ツイッターなどに代表されるテレビのツイッターアップスによる仮想共同視聴に当てはまります。仮想の共同視聴が視聴者満足を向上させる所以ですね。

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