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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマートテレビ用の映画配信企業ネットフリックスが推進するテレビ番組のアンバンドリング

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<序文>

最近のスマートテレビは時間シフト、場所シフトとマルチデバイス視聴と言う広い視点から捉えられています。そうした中で映像コンテンツ面ではスマートテレビ推進の中心勢力であるインターネット映像サービスのネットフリックスが、既存テレビ局に競り勝ってヒットが確実な政治ドラマの“House of Cards,”の放映権を獲得しました。その結果、テレビ番組のアンバンドル化(情報の束の分解作用)が一歩進み既存のテレビ放送がばらばらに分解される時期が一歩近づきました。

ラジオからテレビ、テレビからインターネットへと21世紀に相応しい「メディアの歴史的転換」が進む中、嘗てラジオで起こり、テレビと映画の間で起こった様々な事件が繰り返されようとしています。日本でも嘗て映画とテレビの間で女優さんの奪い合い事件が起こりましたよね。

 

 

注)ネットフリックスは映画のインターネット・ストリーミング配信のトップ企業です。2011年2月には既に契約者が2千万人を超えています。物理店舗を展開している映画DVDレンタル企業の米国ブロックバスターの倒産劇の原因とも言われています。

 

★★Netflix Gets Into the TV Business

 

CATVとハリウッドの衝撃>

 筆者がクラウド放送と呼んでいるインターネット上の映画やテレビドラマのライブ配信ではネットフリックスがトップ企業です。そして最近まではネットフリックスが既存の映画の提供秩序(ウインドウと呼ばれています。)に如何に割り込み、それをどのように破壊するかが議論の焦点でした。新作映画は最初に劇場公開されます。その後新作映画のDVD化の段階でネットフリックスが割り込んで映画ストリーミングを始めたり、CATVに映画が提供されるタイミングでネットフリックスが割り込むなどがウインドウの破壊者として物議を醸していました。しかし今回はヒットが確実視されるハリウッドのテレビ政治ドラマ“House of Cards,”の放映権を巡って既存のHBO Showtime などのCATVと争ってネットフリックスが勝利しました。26話のショーですが放映開始は2012年です。これは明らかにテレビ番組のアンバンドリングを促進するものであり、映画の配信秩序であるウインドウの破壊とは性格を異にします。

 

具体的にはCATVと異なり、ネットフリックスはインターネットをチャネルとしています。従って政治ドラマ“House of Cards,”が撮影される都度、一話または数話単位で番組がクラウド放送(ネットのサーバー上)に登録されます。従って電波による従来型の放送はありません。これは明らかに曲売りによる音楽のCDの分解作用や記事売りによる新聞の分解作用と同じであり、最初からテレビ番組がばらばらに分解された事例と見るべきでしょう。

その結果、視聴者は自分の都合の良い時間に都合の良い場所でデバイスも自由に選んで視聴できます。(テレビ番組の分解とタイムフリー、ロケーションフリー、デバイスフリー視聴)

 

今後アマゾンやグーグル、アップスなども同じアプローチをすると予想されるため、ハリウッドと既存テレビ業界には大きな衝撃が走っています。

 

<急速に台頭するネット放送とスマートテレビ>

 アマゾンやグーグルが自前のネットドラマ作成用スタジオ立ち上げに走る中、ネットフリックスは既存のテレビ放送用のドラマを買収しました。

 

 現在のスマートテレビは一昔前のネットテレビの発想ではなく、クラウド放送(インターネット・ストリーム)により、タイムシフト、ロケーションフリー、デバイスフリーで視聴されます。パソコン、モバイル機器、テレビ、更に自動車とデバイス対象を広げ、映像もテレビアップスも多様なデバイス上で展開される方向にあります。

これは番組がばらばらに分解される新しいテレビの受け皿が整ったという意味でもあります。日本でもし仮に大河ドラマの放映権をヤフーやギャオ、ニコニコ動画が獲得してクラウド放送から流し始めたら、一体どういうことになるでしょうか。既に現在のギャオはネット独自番組で同じことを始めています。重要な点はネット独自番組の視聴の受け皿がスマートテレビ化の進展により、急速に整い始めた点でしょう。いよいよ新らしい放送形態をもたらすインターネットがテレビ放送の主流のチャネルになり始めました。有線テレビ(CATV)のコードカットが現実味を帯びてきました。

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