復活したニューヨークタイムスに学ぶ電子新聞、電子雑誌、コネクトテレビの収益化の成否を握るアップス活用
<序論>
電子新聞に関しては有料化を巡ってその成否が喧しく議論されました。また電子雑誌の収益化に関しても同様です。そしてグーグルテレビの影響で日本でもインターネット接続用のコネクトテレビが話題になっています。筆者の最近の調査では、アップス活用とマイクロ取引化が電子新聞、電子雑誌、コネクトテレビの収益化の成否を別けそうです。特に2010年の第二四半期で前年比売り上げ1.2%増と復活したニューヨークタイムスの事例が面白いです。2009年の末に倒産が近いと言われたのが未だ最近のことのようです。もっとも倒産の危機が去った訳ではないようですが。
<復活したニューヨークタイムス>
ニューヨークタイムス誌は昨年末、倒産の危機といわれていました。理由は紙の広告費と販売部数減にあります。しかし2010年の第二四半期の決算発表では、電子の広告費が21%増え、紙の広告費が6%減りました。そして売り上げが前年比1.2%増加しました。その結果、売り上げの落ち込みに歯止めがかかりました。一方USA Todayは昨年より5.7%売り上げが減っています。
★★ Digital Helps New York Times Stem Ad Slide
★ ★ ニューヨークタイムス タイムスリーダー2.0 (アップス
ニューヨークタイムスはアップスの活用に熱心です。2010年5月にはiPad用のアップスを販売し、それに広告をつけました。ニューヨークタイムスのアップスにはチェース銀行やチャネルのような高級な顧客が付いています。またiPad用の有料アップスも準備されます。既にパソコンやラップトップ用には一週間で4.62ドルかかるタイムスリーダー2.0と言うアップスのレンタル販売を開始しています。飽くまでもコンテンツは無料ですが、サービスとしてのアップスは有料だというアプルのスチーブ・ジョブスが音楽のダウンロード販売に出た時と同じ発想ですね。明らかにフリーミアム発想、そしてマイクロ取引の発想です。
一方アップスを活用しないで新聞の有料化を押し進めお金を支払わない限り読めないという「壁の中の花園」にしてしまった英国のタイムスは、有料契約を1万5千部獲得した代わりにインターネット読者を90%失っています。明らかに失敗だと考えられます。
(出所:引用:AdAge)
<アップスが花盛りの電子雑誌>
電子雑誌もアップスとコンテンツ、広告、ショッピングの組み合わせに熱心です。米国雑誌は2009年には25%も広告費が落ちました。2010年は回復途上ですが、中心は完全にデジタル誌=電子雑誌の広告に移っています。最も熱心なスポーツイラストレーテッド社だけではなく雑誌InStyleやW magazineなどもアップスとコンテンツの連動に非常に熱心です。
アップスと記事を組み合わせれば、インタビュー動画や衝動買い型のショッピングなどと組み合わせることができます。当然、物理的なお店へのロケーション誘導やクーポン券の配布などもアップスの仕事です。またアップスの中に広告を入れる訳ですね。
広告、アップス、コンテンツ販売、そして物理的な商品販売の総合力で稼ぐ方向です。
★★ファッション誌のデジタル版の収益戦略
★ ★ How the Fashion Magazine Industry Plans to Profit from Digital This Fall
<出所:マーシャブル>
<コネクトテレビはアップス販売で稼ぐフリーミアムモデル>
デジタルテレビの時代になって液晶のパネルや半導体の値段の下落、LEDなどの新技術開発により、国内のメーカー各社を見れば判りますが、テレビ販売は利益が出なくなっています。そこで考え出されたのがテレビの「フリーミアム販売」です。これはコピー機などの販売モデルと同じです。コピー機の業界では機械をほとんど原価に近い値段で売って(実質フリー)、紙の用紙で稼いでいます。同じようにテレビメーカーもテレビを原価に近い値段で売ってアップスやコンテンツ販売、広告販売、ショッピングで稼ぐ時代が来ています。それがコネクトテレビの新しいビジネスモデルです。筆者も先日、コネクトテレビのセミナーを実施し、多くの関係者と質疑応答を行いましたが、「アップスで稼ぐのは最低条件」と言う原則を痛感しました。番組連動型アップス、非連動型アップスの議論が欧州から始まっています。
★ ★ 超テレビ時代の先-コネクトテレビ
<結論>
テレビの完全デジタル移行を1年後に控えて、雑誌も新聞もテレビ番組も全てフリーミアム、マイクロ取引の時代が来ています。そしてコンテンツ、アップス、広告、ショッピング、場合によっては仮想商品などを如何に組み合わせて稼ぐかと言う事が成功要因でしょう。疾風怒涛の時代になりました。
スチーブ・ジョブス氏がiPhoneで作り上げたスマートフォンのビジネスモデルが、電子雑誌、電子新聞、そしてコネクトテレビに飛び火しようとしています。