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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

「ツイッターノミクス」に学ぶツイッター心理学 その3 ウッフィーとフロー体験の提供

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<マイクロフローを理解しよう>

 「ツイッターノミクス」を書いたタラ・ハントさんは、ネット上でのユーモアが余程、大好きなようで「マイクロフロー」とか「フロー体験」の話を熱心にされています。マイクロフロー」というのはマイク・チクセントミハイ(ミハイ・チクセントミハイとも言う)が提唱している心理学用語です。生活の中でのちょっとした「気分の良さを味わう瞬間」の事ですね。


ピーク・エクスペリエンスとも呼ばれるこの状態は、例えば仕事にのめりこんで我を忘れている状況「ああ、もうこんな時間」などとして表現されます。所謂、経験マーケティングにおいては気持ちの良いシーンの提供を想定しているものが多く、明らかに「フロー体験」の提供を意図していると考えられます。このフロー体験に関しては有名な心理学者アブラハム・マズローも「至高の体験」として指摘しています。

 

引用 (wikipedia

フロー(英語:Flow )とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。ZONE、ピーク・エクスペリエンスとも呼ばれる。心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱され、その概念は、あらゆる分野に渡って広く論及されている。

引用終わり

<心理的なちょっとした気分の良さの重要性>

この「心理的な気分の良さ」は、人が生きて行く上で非常に重要なことが判っています。

例えば有名なナチスの収容所を描いた文学作品「夜と霧」を書いたビクトール・フランクルによれば「強制収用所で最後まで生き残れた人は決して、体が丈夫な人ではない。常に未来を見つめる、誰かが自分を待っている、人生を待っていると思える人々だった。」と述べています。この本は「言語を絶する感動」と評され、60年以上に渡って読み継がれています。

 

彼の場合は既にガス部屋に送られていた「妻が待っている」と考えることで過酷なナチスの収容所生活を全うできました。また冬の厳しい寒さの中での作業の途中「雪割り草」を見て感動する人タイプの人は生き延びられたと言われています。これらの底にあるのが「フロー体験」な訳ですね。ちょっと妻のことを思ったり、小さな花へのちょっとした感動が人生を前向きにさせ、心理的な強さを人に与えると言っている訳です。

 

<フロー体験とウッフィーの関係>

 

 前回ウッフィーというのは商品やサービスの使用価値を向上させるものではなく、交換価値を向上させるものだと述べました。例えばハーレーと言う有名なオートバイは「風を切る男くささ」がフロー体験をもたらします。2007年に発売50周年を迎えた日産自動車のスポーツセダン「スカイライン」の初代開発者、桜井真一郎さんは、草津町の湿原「芳ヶ平」を颯爽と走る車を思い描き、「戦場ケ原の稲妻」と言う物語を作り上げてスカイラインと命名しました。彼は明らかにドライバーの「フロー体験」を思い浮かべていた訳です。

 

さてこの「フロー体験」と言う心理的価値が、何故ネットコミュニティにおいてはそれ程、重要なのでしょうか。

 

互いの顔が見え、声が聞こえる現実の世界ですら、スーパーマーケットなどでは売り上げが低迷しています。また銀行のATMでは血の通わないITシステムに人間的暖かみを付加しようとキャラクターに頭を下げさせた銀行もあった位です。なんと言う涙ぐましいウフィーへの努力でしょうか。

 

ましてやお互いに顔も見えず、声も聞こえないインターネットのコミュニティの世界では、商品やサービスを販売しようと考えた場合、人間関係が非常に冷たいものとなります。インターネットの第一の波における仮想店舗の限界がこの点でした。それでも楽天などは現実店舗を真似た仮想店舗でかなりの売り上げを上げていますが。

 

インターネットの進化(ソーシャルメディアの発展)のお蔭でインターネットコミュニティの参加者は自律型、自己表現型、創造性型且つ親和欲求や認知欲求を求める人々に育ってきています。そして一方で従来型のE-コマースは血の通わない、非常に冷たい仕組みです。

 

従ってインターネットの第二の波の中でE-コマースをこれ以上発展させようとした場合、使用価値の販売の仕組みを整えるよりも交換価値を引き上げる心理的な付加価値提供が重要になるわけですね。その典型がネット靴屋のZapposなどでしょう。靴をテーマに人々が社交を行い、自己表現をするチャンスを提供しようと言うマーケティングです。そして社交や創造性発揮、自己表現の中に「ちょっとした良い気分=フロー体験」が含まれていると考えられます。

 これはツイッターを活用した物理的な店舗への呼び込みにも応用できます。物理的には忙しく働く対面世界よりもインターネットの世界でまず、フロー体験を提供すると言うアプローチですよね。

 

<フェースツ-フェースのウッフィーを上手く応用しよう>

 

筆者の存じ上げている名古屋のスポーツシューズ店(物理的なお店)はマラソンに力を入れており、そこにいけば何時も「延岡マラソン参加者募集」と言った情報が提供され、店員や顧客とマラソン談義ができました。また毎年、ホノルルマラソンへのツアーを組んで顧客と一緒に参加していたようなお店でした。これって明らかにマイクロフローの提供であり、良く見ればインターネットで有名なZapposと同じですよね。

 

インターネットでのマーケティングを成功させたいならば、対面世界での色々な経験を上手く応用しましょう。

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