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「ツイッターノミクス」に学ぶツイッター心理学 その2 ウッフィーの経済学的意味

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       ―ヘミングウエー御用達の手帳のウッフィーとその経済学的意味―

 

 タラ・ハントさんの書籍「ツイッターノミクス」に学ぶツイッター心理学の2回目です。

前回は評判の経済とギフト経済の背景に進化心理学がある点について説明しました。

今回は逆にウッフィーの背景にある経済学的価値について説明しましょう。読者の方々はウッフィーと言うのは心理的価値だと言うことに薄々気がついておられると思います。

 

<使用価値と交換価値>

 古典経済学とマルクス経済学には使用価値と交換価値と言うコンセプトがあります。

簡潔に申し上げれば使用価値とは商品やサービスの持つ実体的な機能の価値であり、交換価値とは市場における値段の事だと思ってください。

 

ウィキペディア(Wikipedia)によれば両者の定義は以下のようになっています。

引用

交換価値(こうかんかち、value in exchange,exchange value)とは、古典派経済学およびマルクス経済学の概念で、ある商品の使用価値がその他の商品の使用価値と交換される場合の比率を指す。

 

 

引用終わり

 

さて市場経済の視点から見ればウッフィーとは一体、どういった価値なんでしょうか?一言で言えばウッフィーが溜まったからと言って販売する商品の使用価値が高まる訳ではありません。書籍「ツイッターノミクス」の中にはヘミングウエーが昔使ったとされる手帳(ヘミングウエー御用達の手帳)の販売の話が出てきます。そしてヘミングウエーが使ったと言う物語が一種のウッフィーだと言っている訳ですね。この時の(ヘミングウエー御用達の手帳)と言う物語の経済的な意味は何でしょうか。

 

ヘミングウエー御用達の手帳と言う物語は手帳の使用価値を引き上げる訳では全くありません。それによって高まるのはコモディティ商品である手帳の交換価値です。

同じ事例に「シャネルの5番」と言う香水の話があります。昔ココ・シャネル(ガブリエル・シャネル)は南フランスの孤児院で少女時代を過ごしました。そしてその後華やかなパリに出て成功しました。その代表作である香水が「シャネルの5番」でした。面白いのは南フランスの孤児院の彼女の部屋の番号が5番だったことです。「シャネルの5番」という香水はまるで「孤児の私が作り上げた素敵な商品をお手に取ってください。美しいお客様」と話しかけているようです。それが生活者にちょっとした感動と会話の種を提供し、愛着を生み出す訳ですね。


これは明らかに香水と言う商品の使用価値には全く影響がありません。しかしこれは一種の心理的価値を持っており、確実に交換価値を引き上げます。豊後水道の右と左でとれた全く同じ魚であるにも関わらず関鯵や関鯖と言う名前が付いただけで値段が倍違います。ヘミングウエー御用達の手帳にはこう言った心理的価値を持っています。

 

さらにヘミングウエー御用達の手帳が持っている価値は、女性社員の制服や会社のバッジと同じ心理的価値を持っています。判り易く申し上げれば、制服やバッチは常に「あなたはA社の社員でしょ!!」「しっかり役割を演じなさい。」と言う風に話しかけ、身に着けている人のアイデンティティに影響を与えます。ヘミングウエー御用達の手帳の場合には、ヘミングウエーのような作家になった良い気分と共にRPGの楽しさを提供しています。その結果、確実に交換価値が引き上げられます。同じことはiMacと言う透明なパソコンの場合も同じでした。iMacの持つ透明性は文書作成や資料作成と言う仕事にぴったりな気分や環境、雰囲気を与えてくれました。

 

気分や環境、雰囲気のことは「マイクロフロー」とも呼ばれています。次回はマイクロフローをテーマにします。

 

 

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