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iPhone対Androidの対決の意味、「オープンソースソフト」が「ごりごりのプロプライエタリーソフト」に負ける訳

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 テッククランチが面白い記事を書いています。

「オープンソースは万能」だからアンドロイドが早晩、勝利する。そしてiPhone、は負ける。だからスチーブ・ジョブスはマックをニッチソフトにし、マイクロソフトに敗北した30年前のマックの歴史の失敗を繰り返すと。果たしてそうでしょうか?

 

 

 Steve JobsはMacをニッチ製品にしてしまった過失から学び, 今度こそ本物の勝者になれるだろうか?

 

 

 ★ Is Steve Jobs Ignoring History, Or Trying To Rewrite It?

  

 

<オープンソースは万能なの?>

 

 果たしてテッククランチの言うとおりオープンソースは万能なのでしょうか?

ちょっと引用してみましょう。

 

以下引用です。

 

モバイルタッチコンピューティングの時代の到来を告げる今日(こんにち)のSteve Jobsの姿が、30年前にパーソナルコンピュータの時代の到来を告げた姿とオーバラップして輝かしく見えるのは、おそらくそのせいだろう。でもここで 疑問に思うのは、彼はかつてMacをニッチ市場へと退歩させてしまったときと同じあやまちを繰り返しているのではないか、ということだ。それとも彼は、当 時のあやまちから学んで、今度こそAppleがトップ企業になることを目指すのだろうか?

 

 

 

 

しかし今業界は、Appleとのあいだにあったイノベーションの差を急速に縮めつつあるから、どうも歴史は繰り返すことになりそうだ。モバイルのOS Googleが支えていることは、デバイスのメーカーにとっては経済的な優位性を意味する(==自分で開発〜メンテをしない)。Jobsは、最大の Android機メーカーであるHTCを訴えたりしてAndroid封じに躍起だ。彼はまた、持てるものすべてを投じてGoogleと戦っている。

 

引用終わり

 

 しかしテッククランチのライターが見落としている点は、以下のポイントです。

 

◆ プロプライエタリーソフト上の公共圏が勝つのか、オープンソースソフトが勝つのか

◆ フリーかマイクロ取引か?

 

 社交のソーシャルメディアか、それとも数学的な検索か

 

<プラットフォームカンパニーは「ごりごりのプロプライエタリー」ソフト重視>

 

まずオープンソース戦略を取っているグーグルは、圧倒的な広告費を背景に無料のアンドロイドを「オープンソースソフト」としてハードウエア業界に提供し、スマートフォン市場における検索市場を囲い込もうとしています。一方アプルは「ごりごりのプロプライエタリーの仕組み=iPhone」の上にオープン・パブリックな公共圏=自由な市場と作ってサードパーティに自由にアップスや仮想商品、仮想ギフトを作って、儲けてもらおうとしています。

 

ごりごりのプロプライエタリーの上にオープン・パブリックな公共圏=自由な市場を作りだすと言うのは、ドン・タプスコットらが「ウイキノミックス」と言う書籍で時代に合った戦略として提案しています。

 

<フェースブックもアマゾンもアプルと同様の戦略>

 

このアプルのアプローチはSNSのフェースブックやアマゾン、仮想社会のセカンドライフと全く同じと考えられます。

 

では「ごりごりのプロプライエタリー」のフェースブック対オープンソースの「ニング」の場合はどうでしょうか。アメリカには「ニング」を活用した多数のSNSが動いています。しかしフェースブックが負けたと言う話は一度も聞きません。「ニング」は有名なソフトであり、テッククランチの主催するITの重要な会議に経営者が何時も出席して発言しています。

★★open source SNS platform/software like Ning

 

オープンソースソフトが成功する為には、オープンソースソフトを支えるコミュニティがあり、そこが皆で知恵や労力を出し合って素晴らしい製品を維持しなければなりません。

またオープンソースソフトのコア部分に対するグリップが効いていないとユニックスのようなばらばらの仕組みに分解してしまいます。ハードウエアメーカーがばらばらにアンドロイドを活用し、ばらばらなアップストアを立ち上げることになったらiPhoneに勝てるのでしょうか?

 

果たしてグーグルにとってアンドロイドにはそれ程、力を入れる意味があるのでしょうか?アンドロイドを支えるコミュニティはそれほど団結しているのでしょうか?

 

マイクロソフト対マックOSの戦いの場合には、寧ろどちらもプロプラエタリーであり、マックが負けました。

 

 

<最後は社会的交換を理解し、その上でのマイクロ取引を理解する者が勝つ!!>

 

筆者はテッククランチと逆に広告費を背景にしないプラットフォームカンパニーのアプルが現在、有利と見ています。何故ならiPhoneにしてもアンドドロイドにしても勝負はプラットフォーム上のサードパーティが形成するコミュニティであり、彼らが多様なアップスを開発するが故にエンドユーザーに魅力があるサービスが出来上がります。広告費を背景としないプラットフォーム上のサードパーティにとっての魅力は上述したマイクロ取引です。

 

IPhoneOS4においてアプルは三つのマイクロ取引を提案しました。

 仮想商品、仮想ギフト(所謂 アイテム)

 アップス (飴玉一個値段のソフト)

 広告販売への販売手数料(広告は一種のマイクロ取引であり、サードパーテイ開発者へのマイクロファイナンスです。)

 

コミュティの中でマイクロ取引を展開できないとインディーズと言うべきサードパーテイ開発者は経済的に死んでしまいます。こう言ったユーザーや開発者コミュニティへの理解、インディーズと言うべきサードパーテイ開発者を支援する社会貢献の視点などがグーグルに比べてアプルは抜群に優れています。

 

この点はアマゾンやフェースブックも同じです。彼らはオープンソースを支える広告モデルで食っている訳ではありません。

 

 

2003年、iTunesストアで音楽の一曲販売を開始したときに、CNNの有名アンカーマンであるマイケル・オブライエンはスチーブ・ジョブスに聞きました。そして彼は以下のような意味のことを答えています。(これはマイクロ取引とソーシャルメディア・マーケティングの本質論です。

 

 CNN オブライエン

 

  「著作権はさておき、例え違反であっても無料の音楽サイトが無数にある時、何故若者はアプルの店にお金を払う必要があるのか?」

 

 アプル ジョブス

 

  「99セントは(音楽への支払いではなく)サービスへのコストだよ、オブライエン君」

 

  「無料のサイトは音楽を探すのにえらく時間がかかるだろ?」

 

  (「若者の時間セーブの為のサービスとして我々は社会に貢献しているんだ」)

 

99セントは市場取引ではなく寧ろ社会貢献、それに対する寄付だと言う意味のことを言っている訳ですね。IPhoneOS4でもインディーズのような立場の経済的弱者であるサードパーティ開発者に対して広告のマイクロ取引を提案した時、彼は殆ど同じことを言っています。

 

 ★ アプル ジョブス

  「こうすれば広告費で潤うサードパーティ開発者は、アップスの一部を無料で提供でき、宣伝できるじゃないか。その間食っていけるよね、彼らは」

 しかし日本のグリーの例を見るまでもなく社会貢献の飴玉一個は「ちりも積もれば山となる」ような莫大な利益を企業にもたらします。明らかにこれは複雑系の発想です。

 

フラッシュをスチーブ・ジョブスが何故嫌っているのか筆者は知る由もありませんが、これはマイナーマターであると思っています。

 

だから「オープンソースソフト」のAndroidよりも「ごりごりのプロプライエタリーソフト」のiPhoneが有利と見る理由です。

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