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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

アマオケ広報はマーケティング活動の縮図である

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あけましておめでとうございます。

例年年初は、キックオフの合間をぬってオーケストラの演奏会に出演しているが、今年も同じく、1月10日に演奏会を行ったあと、12日にキックオフ参加に向けて出国する。過去に帰国翌日に演奏会ということもあったので、それに比べれば楽だ。

ところで、年末は演奏会のプログラム冊子の製作に追われていた。当団の指揮者金子建志氏は、評論家としても著名で、豊富な譜例を交えた解説を書く。この譜例というのがやっかいで、楽譜作成ソフトを使って入力したあと、グラフィック出力してIllustratorで加工するといった工程を経て、はじめて印刷版となる。限られたページ数で、微妙な記譜上の問題も解決しながらこれを行うのは結構骨が折れる。

年末、この作業が一段落したので別の広報活動にとりかかった。市民オーケストラは、関係者を大量動員できる学生オケや企業オケと違い、自力で集客しなければならず、1000席以上あるホールをそれなりに埋めるのは大変なことだ。数年前からこの広報係をやるようになったのだが、やることは結構本業側のマーケティングに似ている。

まず、Webサイトを構築すること。Google Analyticsなどを使ってアクセス状況も確認する。Twitterのアカウントを作り、Facebookページを用意し情報発信を行う。しかし、足で稼ぐ地道な活動も重要で、地元の楽器屋を中心としたチラシ配布、ポスター貼り、それから嗜好の似た演目をやったり、地域的に関連ある場所で開催される演奏会のプログラム冊子にチラシを挟み込んだりといった活動が効果的だ。そして、これは別の担当がいるのだが、カスタマーリテンションが非常に効果的なので、アンケートに答えてくれた方へ招待状を送付するといった活動も行っている。

Facebookページを作成すると、ページに「いいね!」してくれた人を増やすというのが目標のひとつになる。というのは、ページに新しい情報を掲載すると、「いいね!」してくれた人のタイムラインにも情報が表示されるので、この数が増えるということは情報送信先の母数が増えるということになるからだ。演奏会のタイミングは、この「いいね!」の数を増やすいいタイミングで、毎回100人ずつぐらい増加してきていて、現在700名弱。そろそろ集客のための情報発信媒体として機能し始めるのではないかと考えている(演奏会で毎回同じ質問項目のアンケートを取り定点観測をしているが、「Facebookでこの演奏会を知った」という人がぼちぼち出始めている状況)。

年末の空いた時間というタイミングで、当団の檀蜜似のコンミスをモデルにFacebook広告を作成してみた。「こんなのやめてください」と言われるかと思ったけれど、本人から快諾を得た(ただし「やるからには効果を上げよ」という指令の条件付き)。

Facebook広告にはいくつも種類があり、どれが効果的なのかはなかなか判断がつきにくい。しかも、その仕様はよく変わる。今回、ページに「いいね!」をしてもらう広告を出してみたが、爆発的な効果に至っていなかったので、1000円だけ使ってこちらの投稿そのものに対する広告を2日間限定で出してみた。するとリーチ数が約2000。クリックスルーが212で、10%を超えるレートをはじき出した。

これでページに対する「いいね!」数も底上げしたところで、以下のようなビデオメッセージを投稿。これも既に1200人ほどにリーチしている。前回の演奏会時点では、リーチ数の最大は800ぐらいだったので、母数の増加を感じさせる結果だ。

ここで感じるのは、やはりコンテンツ。アマオケはそれなりにコンテンツ力があり素材豊富なので、それを料理する側としては楽だ。このことは、手段ばかりのマーケティングに対する警鐘でもあるように思う。

実際アマオケ広報の活動やそのエッセンスは、企業のマーケティング活動と何も変わらない。ただし、使うコストや期間、ターゲットが限られていて、目的も単純(すなわち集客!)。実業務に比べると小ぶりなプロトタイプのようにも見えるので、本業側ではテストすることのできない、実験的な試みもできたりする。これは貴重だ。

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