男性ファッション誌『Safari』が今一番売れてる3つのワケ
街中を歩いていると、いつも思うことがある。それは「ファッションがイマイチな男性が多いなあ」ということ。男性ビジネスマンのファッションは、いわば〝戦闘服〟だ。オシャレなら好感度はあがるし、仕事もデキそうにも見えるし、いいことづくめだ。反対に、ファッションに気を使っていない男性は、一目で分かるもの。こういった男性は残念ながら、仕事においてもプライベートにおいても、実は見た目でかなり損をしている、と考えて間違いない。人は見た目で、相手を判断するものなのだ。
ファッションに悩む男性は多いようだが、オシャレになるためのポイントはズバリ2つある。まずは、何より「良いモノを買う」ことに尽きる。たとえイケメンでも、ダサい服を着ていれば、一瞬にしてイケメンぶりは半減するだろう。それなら〝顔は普通でも良いモノを着ているオトコ〟の方が、断然クールに見える。ちなみに、良いモノ=高額品とは限らない。自分の雰囲気に合っていればいいのだ。
そして2つめのポイントは、「良いモノを編集する」こと。簡単に言えば、手持ちの洋服を上手にコーディネートする能力。上質なジャケットを着ているのに、中のシャツの合わせ方がイマイチとか、ネクタイの色がトンデモナイとかだと、これまた宝の持ち腐れとなる。つまり、良いモノを買い、さらにはそれらを上手にコーディネートできれば、ファッション上級者となるのだ。
さて、上記2つのポイントは、一朝一夕に取得できるものではなく、やはり、それなりの努力は必要だ。また、環境要因も大きいかもしれない。ボクの場合、後にデザイナーとなる3歳年上の兄貴が非常にオシャレな人間で、中学生の頃は、彼をマネしてファッションを学んだ。大学生になってからは、毎月20万円のバイト代すべてを、ファッションに突っ込んだ。
もちろんオトナになってからも、仕事相手の業界によってコーディネートを変えたり、コンサルタントという仕事柄、経営者を相手にすることも多いため、恥をかかぬよう上質なモノを身につけたり、とにかくファッションには並々ならぬ力を注いできた。もちろん、単純にファッションが好き、という理由もあるが。
さて、いろいろな男性と出会うなかで、「この人はオシャレだなあ」という人物をたまに見かける。そこでファッション談義をするのだが、オシャレな彼らに共通することが1つある。それは〝お気に入りのファッション誌〟があること。ファッション誌を眺めては好きなモノを見つけたり、コーディネートを学んだりと、普段から〝自分をよく魅せるための意識〟が強いようだ。
そんなオシャレな彼らに「最近、何を読んでいるの?」と尋ねると、必ずと言っていいほど、とあるファッション誌の名前が上がる。それが『Safari』(日之出出版)だ。
30~40代男性からダントツ人気No.1の「Safari」
男性ファッション誌はいろいろあるが、今注目を集めるのがミドルエイジ誌と呼ばれる分野。比較的可処分所得が高く、オシャレにも敏感な30~40代男性マーケットだ。あまりにも多くの男性が「Safari」を読んでいるので、このマーケットの勢力図を調べると、実に興味深いデータが出てきた。
お馴染の「UOMO」は発行部数5万部、ちょい悪オヤジで人気の「LEON」で8.5万部。これに対して「Safari」は、何と圧巻の18万部。売れ方、人気ともに、まさしく桁違いのファッション誌だったのだ。(日本雑誌協会)
なぜ「Safari」は、オシャレな30~40代男性から、これほど圧倒的な支持を集めるのか。ボクなりに考察してみた。
ド迫力の誌面で、読者の視線をワシづかみ
ファッション誌というものは、掲載する商品、ターゲット層、また、目指すべきファッションのテーストによって、誌面も雰囲気も大きく異なる。もちろん、レイアウトを工夫するのも、戦略の1つ。そして「Safari」の注目すべき特徴のひとつが、大胆すぎるレイアウト。
「Safari」を開くと、外人モデル、あるいは靴やコートといった商品が、ド~ンと目に飛び込んでくる。モデルを使った誌面なら、1ページのど真ん中にモデルは1人か2人のみ、というレイアウトが多い。このため、まずはモデルに視線がグッと引き寄せられる。また複数のモデルを登場させるにしても数人程度と、どちらにしても誌面に余裕がある。このため、モデル着用の衣装は上から下まで充分に見ることができ、実際に着た際のイメージをつかみやすい。
商品の場合も同じく、1ページをかなり贅沢に使っている。ページの中心にメイン商品をドンと載せ、後はその色違いやおススメ商品を程よい大きさで紹介する、というレイアウト。商品の質感や色合いは、かなり正確に伝わってくる。つまり、モデルと商品が迫力をもって読者に迫り、なおかつ、読みやすいのだ。
親切すぎるキャプション
さて、良いモノを紹介されても、先に述べた通り「コーディネート能力」がないと、どうにもならない。そこで「Safari」がこっそり力を入れているのが、商品の着こなし方。こっそりと言ったのは、実際、ボクも毎月じっくり目を通して、ようやく気づいたほどさりげなかったから。
例えば、黒の革ジャン。定番アイテムであり、「これは欲しい!」と購入しても、実際はコーディネートが難しいもの。そこで「Safari」は、モデルに黒い革ジャンを着せつつ、幾つかのコーディネート例を同時に紹介する。革ジャンの中が「デニムシャツ」の場合は、こんな感じでまとめる。「チェックシャツ」の場合は、「色褪せニット」の場合は・・・といった具合で続くので、なるほど、革ジャンのコーディネートが一気に学べるというワケだ。
ここでポイントは、それぞれのコーディネート写真に、いちいちキャプションを付けていること。最初は「そこまでやらなくても分かるのでは?」と思っていたが、実は写真だけを見ても、案外記憶には残らないもの。キャプションがあることで、「なるほど、ここ注意点ね」と、再認識できるのだ。
また、革ジャンの下はついつい無難にジーンズを選びがち。しかし、ドレッシーな革靴とかも合わせ方次第でイケるなど、気づきも多い。せっかく良いモノを買うなら、なるべくいろんなシーンで着まわしたいので、こうしたちょっとしたコツも参考になる。
ブレない〝セレブスタイル〟
ファッション誌の生命線は、強烈な個性だ。読者は、雑誌から漂ってくる独特のセンスやグルーヴを求めている。そしてファッション誌で重要なのは、「オレもあんな風になりたいなあ」と、読者に夢を抱かせること。
当たり前、わざわざカネを払ってファッション誌を買おうという男性は、そもそも可処分所得が高く、自分自身を楽しむことを忘れない人たち。そんな彼らの「オシャレになりたい」「オシャレを楽しみたい」というニーズに応えるには、ネットでは決して手に入らない極上の個性が必要なのだ。
「Safari」の個性は、とてもシンプル。それは〝LAに暮らすセレブのようなライフスタイル&ファッション&遊びを追及するぜ!〟というもの。だから、誌面に登場するモデルはほぼすべて欧米人、紹介される商品もかなりの高額品ばかりと、誌面の最初から最後まで〝セレブ感〟のオンパレード。
誌面では、数々の欧米俳優の素敵な着こなしを紹介したり、エディ・マーフィの愛車コレクションを載せたり、世界の極上リゾートを取り上げたり。もちろん、広告はどれも高級ブランドばかりで、とことんセレブにこだわる。
なかでもボクが絶妙にウマいタイトルだなあと感心するのが、「ジェットセッターたちのバカンス自慢!」というコーナー。このタイトルが象徴するように、あくまでもセレブ、どこまでもセレブ、そして、気持ちよくセレブを取り上げるのが「Safari」スタイル。ここまで突き詰めると、まったく嫌味な感じはしない。
むしろ、商品やコーディネートが巧みなので、毎月「あれも欲しい、これも欲しいと」と、ポストイットをページに貼っていく日々。実際はそんなに買えるワケではないが、読むだけで充分楽しい。たいてい、リビングのソファー脇のテーブルに「Safari」を置いて、1ヶ月かけてじっくり読んでいる。
「セレブなんて、オレには関係ねえ」と、思う人は多いだろう。でも、そんな声、ボクはどうでもいいと思う。だって、そもそも雑誌、なかでもファッション誌とは、読者の細分化されたニーズに応えるべき存在なのだ。現に、LAセレブ流ライフスタイルを望む30~40代の日本人男性は多く、だからこそ「Safari」は、このマーケットにおいてモンスター級に売れているのだ。
そんな「Safari」で、ボクの新連載がスタート
今からちょうど3ヶ月前の9月24日、「Safari」は創刊10周年を迎えた。10周年記念号は、実に26万部近い印刷部数に達したというから、今後もますますモンスター級に売れていくのだろう。
さて、その10周年記念号の発売日というおめでたい日、ボクは「Safari」の版元である日之出出版にいた。胡蝶蘭で埋め尽くされ、お祝いに訪れた人々があふれる1Fロビーにて、「Safari」の編集長とMTGの真っ最中だった。
「じゃあそんな感じで、荒木さん、新連載ヨロシクね! 」
・・・そんな感じで、ボクの新連載が決まった。本日発売の2月号よりスタート。どんな連載かというと、そこは「Safari」。やはりセレブ感あふれるコラムである。
連載タイトルは『最後のバブルで踊ろうよ!』。アラフォー男性に向けて〝クールなバブり方〟を毎月提案する、イキのいいコラムだ。どんな感じかは次のブログ「笑われずにバブる!」を。
(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)
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