A19で採用されたNeural AcceselatorとローカルAIの関係
先週、AppleからiPhoneの新型「iPhone 17」が発表されました。毎年この時期の恒例なのですが、近年は話題を呼ぶような新機能が乏しく、「スマホの機能強化は限界」とも言われています。17もご多分に漏れず、目玉としては史上最薄のiPhone Airのようですが、これは機能では無くパッケージングの話ですよね。他にはディスプレイやカメラの強化など、これらも各パーツの正常進化を反映している感じです。
そのような中でAppleの「方向性」を感じさせるのが、A19のAI性能の強化です。CPUコア、GPU、Neural Engineといった基本構成に変化はありませんが、今回AI処理用のNeural Engineの性能が大幅に強化されました。そして、GPUに「Neural Accelerator」という機能が新たに追加されています。これらは、スマホにとって今はAIが最も重要であるというAppleの考えを反映したものと思われます。
「Neural Accelerator」は、名前からしてAI性能を強化するためのもののようですが、Neural Engineと機能が重なるようにも思います。なぜ今回、わざわざ同じ様な機能を持つハードウェアを追加したのでしょうか。
GPUというのは元々AI処理に向いていますので、それをAIにも使うということ自体は納得できます。NvidiaのGPUがAI処理に広く使われているのも、それが理由ですから。しかし私は、AppleがA11でNeural Engineの採用を発表したとき、「AシリーズにはもうGPUが積んであるのに、なぜそれを使わないのだろう」と不思議に思っていました。GPUがAI処理に向いている以上、Neural Engineなどという専用ハードウェアをわざわざ作らなくても、すでにあるGPUを使えば良いでは無いかと考えたのです。
当時それを調べてみても明確な答えは見つからなかったのですが、今回それをChatGPTに聞いてみたところ、「GPUは電力消費が大きいためではないか」との見解でした。(便利~~)GPUはAI専用では無いために、同じ処理をさせるためにはより大きな電力を使うということです。Appleは当時、スマホには専用ハードウェアの方が向いていると判断したのでしょう。
では、なぜ今になってGPU「も」使うことにしたのでしょうか?これはもう、ChatGPTに聞くまでも無く、「AIの想定外の進化による処理能力の急増」ということなのでしょう。
Appleの製品紹介サイトのNeural Acceleratorの項目には、「それぞれのGPUコアがNeural Acceleratorを内蔵しているので、ローカルAIモデルを動かす時でもかつてないほどパワフルです。」と書いてあり、「ローカルAI」というのがキーワードのようです。これは、先週のブログでもご紹介したgpt-ossのように、クラウド側の処理負担を軽減したり、プライバシー情報をネットに流出させないなどの理由から、これまでクラウドで動かしていた生成AIのエンジンを、エンドユーザー側のデバイスで動かそうという仕組みです。つまり、(大幅に負荷は軽減されるにせよ)これまでクラウドで行っていたAI処理の大半をユーザーデバイス側で処理しなければならないことを意味しています。要は、Neural Engineだけでは間に合わない未来がすぐそこまで来ている、ということですね。
Appleはここ数年iPhoneのAI性能の強化に取組んできましたが、生成AIの進化が速すぎてハードウェアの進化が全然追いつきません。使えるものは何でも使おう、ということなのでしょう。
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