パーソナルRAGとしてのNotebookLM
AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション(幻覚)」については、ChatGPTが世に出た当初から指摘されていますが、この現象は生成AIの仕組み上避けられません。以前書いたように、私はハルシネーションが完全に無くならないのであれば、無理に減らしていく必要は無いと思っていますが、間違いばかりなのはもちろん問題です。特に、生成AIのモデル作成には時間がかかるため、どうしても最新の情報には疎くなります。
その解決策として早くから研究が進んでいたのが、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)という技術です。GeminiによるとRAGは2020年(ChatGPT発表の2年前ですね)にMetaが発表したものだそうですが、Googleの研究チームがその元になる技術を発表していたようです。やはりGoogleはすごい。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、一言で言えば「AIに外部の辞書を引かせてから答えさせる」仕組みです。生成AIは、学習した膨大なデータの中から、次に続く確率が高い言葉を選んで回答を生成します。しかし、学習データにない最新情報や、ユーザー固有のプライベートな情報を問われると、無理に回答をひねり出そうとして間違った回答をしてしまいます。これがハルシネーションです。
RAGはこの弱点を補います。ユーザーの質問に対し、信頼できる外部知識(ネット情報、PDF、メモ、社内文書など)を「検索」し、見つかった情報を回答生成の「参考資料」としてLLMに渡します。LLMはその資料に基づいて回答するため、情報の正確性が飛躍的に向上し、根拠(ソース)を明示することも可能になります。
企業向けに導入されたRAG
現在、RAGは主に「エンタープライズ(企業向け)RAG」として導入が進んでいます。企業には膨大な社内規定やマニュアル、過去の議事録が存在しますが、これらをデータベースに格納するだけで、AIが社内知識を網羅した「専用のアシスタント」に変貌します。情報の鮮度が保ちやすく、セキュリティ面でも「誰がどの情報にアクセスできるか」という権限制御が容易であるため、DX推進の鍵として多くの企業が採用しています。
パーソナルRAGとしてのNotebookLM
これまでRAGは、高度なITスキルやインフラが必要な「組織のための技術」でした。しかし、GoogleのNotebookLMはこの壁を突き崩しました。
NotebookLMは、ユーザーが指定した資料のみを情報源とする、まさに「自分専用のRAG」です。特筆すべきは、その手軽さと強力な構造化能力です。大量の資料を読み込ませても、瞬時に要約し、チャット形式で対話でき、さらには音声ガイド(ポッドキャスト形式)やマインドマップ、プレゼン資料まで生成します。無料版でもかなりなことができるのも魅力です。
個人の学習ノート、過去のメール履歴、あるいは自身の執筆原稿。これらを放り込むだけで、NotebookLMは自分自身の思考や知識を完璧に把握した「分身」となります。情報を探す時間をゼロにし、思考を深める時間を最大化する。NotebookLMは、RAGを個人の知的生産の道具へと民主化したと言えるでしょう。私たちが膨大な情報に埋もれる現代において、NotebookLMのような「パーソナルRAG」は、単なる便利ツールを超え、私たちの「外部脳」として不可欠な存在になっていくでしょう。Googleはその扉を開いてくれたのです。
【最終案内】ITソリューション塾・第51期(2026年2月10日〜)
次期ITソリューション塾・第51期(2026年2月10日 開講)の参加者を募集しております。
ITベンダーにお勤めの方、ユーザー企業でDXやAIに取り組んでいる方向けに、毎週一回、さまざまなトピックを取り上げ、最新のITトレンドについて知識を深めていただきます。また、現在注目されているさまざまな技術が相互にどのように連携しているのか、歴史的な視点を交えて解説することで、技術の本質を理解していただきます。知識を真に内面化するためには、表層的な概念では無く、本質を理解することが重要です。
たとえば、AIサービスを賢く使いこなすためには、AIの仕組みやこれまでの進化の過程を理解することが重要です。そしてそれをビジネスに適用していくためには、AIそのものももちろん重要ですが、Web3やIoT、アジャイル開発/DevOpsといった分野にAIがどのような影響を与えていくのかを、幅広い視点から捉える必要があります。ビジネス環境全体を俯瞰し、各々のテクノロジーがどのように関連し、連携しているかを捉えることで、トレンドを掴むことができるのです。
ITソリューション塾では、最新技術の中身を紹介するだけで無く、他の技術との関わりや歴史的経緯を理解していただくことで、より広い視野の元で最新のトレンドを考えていただけるような講義を目指しています。
- 日程 :初回2026年2月10日(火)~最終回4月22日(水) 毎回18:30~20:30
- 回数 :全10回+特別補講
- 定員 :120名
- 会場 :オンライン(ライブと録画)
- 料金 :¥90,000- (税込み¥99,000) 全期間の参加費と資料・教材を含む
詳細なスケジュール・お申込みはこちらです。