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やっと M1 Mac で Windows を使えるようになった:でも、もう使わないかも

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いやあ、長いことかかりましたが、やっとM1/M2 MacでArm版Windowsが正式に動くようになったようです。

Apple Silicon搭載のMacで「Arm版Windows 11」を利用可能に Parallels Desktop経由で

しかし、かつては「まだか、まだか」と待ち望んで居たのですが、いざ出てみると、「いまさら面倒くさい思いしてMacでWindows使わなくても良いかも。」という感想を持ってしまいました。ここ数年で急加速したクラウド化に原因があるのではないでしょうか。

computer_tokui_boy.png今、MacintoshにはIntelプロセッサを搭載したモデルとAppleがArmアーキテクチャのライセンスの元で開発したM1/M2プロセッサを搭載したモデルが混在しています。最初のMacintoshはモトローラ製のプロセッサ(68000)を搭載していましたが、その後IBMのPowerPCに変更され、さらにIntelに変更された経緯があります。それが今回、M1/M2に移行しつつあるわけで、Appleは自社製品で使うプロセッサの変更にあまり躊躇が無いようです。Windowsが一貫してIntelをサポートしているのとは対照的ですね。

しかし、プロセッサが変るということは、それまで動いていたアプリケーションが動かなくなるわけで、Mac用のソフトウェアを作っていたベンダーはプロセッサ変更の度にそれに対応しなければならないことになります。Appleももちろん大変ですが、周りも結構大変だったわけです。Appleは移行を助けるためのツールも用意し、旧プロセッサをエミュレートするツールも提供してきました。以前のエミュレータはほとんど使い物にならなかったと言われていますが、今回M1/M2用に出してきた「Rosetta2」の完成度は高いとの評判です。やはり、過去からの積み重ねは大事ということですね。

何故M1/M2対応に時間がかかったのか?

さて。Macが2006年にIntelプロセッサを搭載したときに、同じIntelプロセッサ用に開発されたWindows(つまり、普通のWindowsですね)をMacで動かすためのApple純正のツールがリリースされました。「BootCamp」です。これをMacにインストールすると、標準のMacOSの他にWindowsなどのMacの立ち上げ時にMacOSを起動するかWindowsを起動するかを選ぶことができます。プロセッサが同じであれば、多少のハードウェアの違いを吸収してあげればパフォーマンスの劣化も無く動かすことができるのです。当時はWindowsでしか動かないビジネス用ソフトも多かったため、MacユーザーがWindowsアプリも使えることでMacユーザーの裾野が広がったのです。Microsoftとしても、その分Windowsのライセンスが売れるということで、別に問題視はしていなかったようです。当時はMicrosoftもAppleが戦略的な脅威とは考えていなかったということでしょう。(その後、2007年にiPhoneが発表されてから、Microsoftの業績に影響が出始めました)しかしBootCampでは、どちらのOSを使うかと起動時に選択することしかできないため、MacOSとWindowsを切り替える際にはいちいちMacを立ち上げ直さなければならず、それが結構ストレスでした。

そこで出てきたのが、クラウドなどでおなじみの仮想化ソフトウェアでした。MacOSの上に仮想的な環境をつくり、その中にWindowsをインストールすることで、MacのウィンドウのひとつでWindowsが動く環境を構築できます。そのためのソフトがParallelsやVMware Fusionで、私もFusionを使っていました。

そして、2020年にM1が発表され、Macのプロセッサがまた変わりました。上にも書いたように、Appleは完成度を高めたエミュレータを出すなどしてIntelからの移行を進めています。そのときに、私のようにMacでWindowsも使っていたユーザーは当然「Windowsはどうなるのか?」が気になったわけです。

Intel版の時と同様に、Appleが純正のツールを出すか、サードパーティの仮想化ソフトが対応してくれれば良いのですが、Appleは今回BootCampのようなツールを出すつもりは無さそうです。これは、2006年当時とはMicrosoftとの力関係が大きく変わったことが原因でしょう。Appleは今、自社製品(iPhoneやiPad)との統合を進めるほうが優先事項であり、かつてよりも力を落としたWindowsを無理にサポートする必要は無いのです。

ParallelsやVMwareは、なんとかしてM1/M2 MacでもWindowsを動かそうとして開発を行ってきました。しかし私は、Microsoftはあまり協力的では無かったのではないかと勘ぐっています。Microsoftにしてみれば、Macの環境が良くなることが自社のメリットに繋がりにくいという状況なのでは無いでしょうか。

#この他にも、Intel版のWindowsを無理矢理動かす、という考え方もありますが、あまり現実的では無さそうです

もうプロセッサとかパソコンとかが重要な時代では無い

冒頭にも書きましたが、待ち望んでいたはずが、いざ動いてみると「別にもう、いらないんじゃ無いか?」という気持ちになってしまっています。これはやはり、ここ数年でクラウド化がさらに進み、アプリケーションの対応も進んだことで、MacとWindowsでできることにほとんど差が無くなってきていることが原因でしょう。

私が仕事でメインで使うOfficeやAdobeのツールは、Mac版とWindows版が用意され、操作性もほぼ同じです。AdobeなどはM1/M2で使う方がパフォーマンスが高いため、むしろ快適です。Zoomにしろブラウザーにしろ専用のアプリがありますし、何より多くのサービスがクラウド化されているためにブラウザーさえあればほとんど困ることはありません。もはや、OSのシェアや互換性を問題にする時代では無くなってしまったのです。M1が出た3年前と今では、そこまで環境が違ってしまったということでしょう。改めて、この業界の変化の速さには驚かされます。

ただ、これはあくまでも私個人の使い方によるものですし、私自身も会計ソフトやお気に入りのメーラーなど、どうしてもWindowsに頼らざるを得ないこともまだまだあります。(それ用のWindowsマシンをキープしています)MacOSとWindowsが同時に使える環境が大切という人は少なくないと思いますし、このようなニーズが無くなることはないのでしょう。

 

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