EV が主導した CES 2023 ~しかし、足下では次の変化も
今年も年初恒例のCES(Consumer Electronics Show)が1月5日から8日まで、米ラスベガスで開催されました。
コロナからの復帰と景気後退局面という複雑な環境の中、コロナ前には届かないものの、昨年よりも出展企業も来場者も増え、少しずつコロナ後が見えてきたという結果になりました。
今年の(というかここ数年の)CESで目立つのが、電気自動車、自動運転車などの自動車関連の話題です。トヨタがCESでコネクティッド・シティを発表したのは2020年でした。当時は「何故エレクトロニクスショーに自動車メーカーが?」などと言われたものですが、今ではすっかりCESのメインテーマとして定着したようです。
自動車は工業製品からConsumer Electoronics(家電)の要素を多く持つようになっているということでしょう。テスラなどはソフトウェアのバージョンアップによって機能を追加したり、追加で費用を支払うことで遠隔でオプション機能を有効化したりするなど、ほとんどスマホのような使い勝手になっています。しかし、この流れにも少しずつ変化が見られます。
今年はいよいよソニーの自動運転車がお目見えしましたが、そのパートナーとして選ばれたのはホンダでした。テスラや中国製EVは独自に車台などを開発しており、「EVは自動車メーカーでなくとも作れる」と言われていましたが、やはりサスペンションや安全性確保などは経験豊富な自動車メーカーと組む方が有利と判断したのでしょう。Appleも一時期韓国の自動車メーカーとの提携を模索していると言われていましたし、今後は家電メーカーと自動車メーカーが互いの良い面を持ち寄って新しい車を作っていく、という流れになるのかも知れません。ソニー・ホンダのプロトタイプにはSoCとしてQualcommのSnapdragon Digital Chassisが使われているということで、ここでもArmの強さが垣間見えます。先行きが若干不透明になっているApple Carが実現する場合にはApple Silicon(Armベース)が使われると言うことになるでしょうから、EV関連でもArmの優位が続くのではないでしょうか。
ウクライナ危機の影響がEVにも?
ただ、CESではEV関連の話題が多かったものの、昨年、世界を取り巻く環境は数ヶ月単位で大きく変化しました。コロナ禍による半導体不足やロシアのウクライナ侵攻による世界的な不況:とりわけエネルギー危機は、EVのあり方・行く末にも大きな影響を与えています。EVはいうまでもなく電気で走りますが、その電気を作り出しているのは、火力発電や原子力、太陽光などです。太陽光パネルは開発のための環境負荷が高いとも言われていますし、原発にもリスクがあり、ロシアのエネルギーにも頼れない中、電気の需要がこれ以上増えるのはどうなのか、という議論が出てきているのだそうです。
昨年末には欧米のメーカーからもEVへの急速なシフトを懸念する声が聞かれるようになっているそうで、自動車を取り巻く環境は容赦なく変化を続けているようです。CESではEVの話ばかりでしたが、この変化が単にCESの準備に間に合わなかっただけなのかも知れません。今後、どういった方向に進むのか、目が離せない展開になってきました。
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