それでもMicrosoft は Windows11 に拘るのか?
日曜日に、なかなか衝撃的なニュースが飛び込んできました。
IT資産管理ソフトウェアを展開するLansweeper(ドイツの会社のようです)が2022年4月(今月ですね)に1000万台規模の調査を行ったところ、Windows11のシェアがわずか1.44%だったというのです。リリース後半年経った時点でのシェアとしては捗々しくないというか、かなり期待外れの数値ではないでしょうか。
これはOSの要件(後述)とか出来とかとは別に、人間はなかなか習慣を変えようとしない、ということも関係しているのかも知れません。Windowsは、過去にも新バージョンへの移行には時間がかかっています。かつてもWindowsXPのサポートが切れているのに新バージョンへの移行が進まずに問題になったことがありますが、そのXPも今は1.71%と(それでも11よりは多いのですが)、だいぶ減ってきています。今はWindows10(2015年リリース)のシェアが80.34%ということですから、7年をかけて10までの移行はかなり進んできたということができます。
11も同じくらいかかるとすると、あと6年くらいはかかるということになるでしょうが、10のサポートは2025年まで、となっているのですよね。。間に合わないですね。それに、11にはこれまでのWindowsとは違う事情もあります。それは、特定のハードウェアを必要とする、という点です。具体的にはTPMで、これを搭載していないパソコンはまだまだ多く、搭載していても有効化されていないなど、一般ユーザーにとっては設定のハードルが高いことが問題になっています。11へのバージョンアップは無料ですが、このTPMを含め、要件を満たしていない場合にはインストーラのチェックに引っかかり、インストールすることができません。このままでは、多くのPCが11に移行できないままに2025年を迎えてしまいます。2025年の崖以外にも、大きな転機を迎えてしまうのかも知れません。
それでもMicrosoftは11に拘る
このままではXPのときのように、Windows10のサポート期間を延長しなけえばならなく成るかも知れません。あるいはMicrosoftは、Windows11の要件を緩和する考えはあるのでしょうか?
しかし、不正なインストールについての監視を強化しているとの話も出ています。
Windows11の正式リリース前から、要件を満たしていないコンピュータに裏技でWindows11をインストールするという技がネットで共有されていましたが、そういったコンピュータに、Microsoftから「警告」が表示されるようになった、というのです。今は警告だけですが、不正なインストールについてMicrosoftは把握しているぞ、という脅しとも言えます。今後、強制的に使えなくするといった強硬手段に出ることがあるのかも知れません。
これには明確な理由があります。Windows11は歴代のOSよりもセキュリティ強度が高いのです。(というか、ソフトウェアにしろハードウェアにしろ、基本的には新しいものの方が機能も豊富で、安全性も高いものだと考えるべきでしょう)
とはいえ、嫌がるユーザーに無理強いをしてもうまくいかないというのは、これまでの経験からわかっているはずです。それなのに、なぜそんなに強硬なのでしょうか?
OSを取り巻く環境の変化
この背景には、クラウドへの移行に伴うビジネス環境の変化とMicrosoftの収益構造の変化があるのではないかと思います。
数年前にMicrosoftの偉い人から「Microsoftには、もうOSを売ろうと思っている人は居ません」というお話を伺いました。これは、OSにはもう投資しない、ということではなく、OSから収益は生み出せないという事実を受け入れるということでしょう。クラウド時代になって、OSの違いには従来ほどの意味はなくなってしまいました。ユーザーが注目するのはサービスであり、その裏で動いているOSがWindowsだろうがLinuxだろうが、関係ないのです。そうであれば、有料のOSよりも無料のOSのほうが(機能や性能に差異が無いのであれば)良いに決まっています。Linuxが台頭してきたとき、MicrosoftはなんとかしてLinuxを排除しようとしましたが、できませんでした。そして、自らのOSからの収益を断念せざるを得ない事態に至ったのです。(とはいえ、まだまだOSからの収益は大きいです。しかしこれまでのように過度にOSに依存する体質からは脱却したということでしょう)
しかし、そこからがMicrosoftの底力です。OSではなく、クラウドから収益を上げるビジネスモデルに急速に転換し、それを成功させたのです。Windowsには、引き続きデスクトップの標準環境として存続してもらうことで、Microsoftはクラウドサービスや開発環境などに付加価値を与えることができます。
新型コロナウイルスの感染拡大は、米国のプラットフォーマーの業績を過去最高レベルに押し上げました。在宅勤務の拡大で、クラウドへの移行が加速したのです。世界的なDXブームも、クラウドへの移行を後押ししたでしょう。Microsoftの変革は、この波に間に合ったのです。
今後Microsoftの収益基盤がクラウドになるのであれば、その環境を安全に守ることがビジネス上の重要な目標になるでしょう。そのために、クライアントOSのバージョンアップが必須と考えるならば、これまでとは違い、あくまで強気にバージョンアップを推し進めていく、ということなのかも知れません。
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