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企業はDXの前に社内システムのUXの改善に取りかかるべきなのではないか

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最近は展示会や企業のイベント・セミナーなども事前登録制が当たり前になって、あちこちでユーザー登録しなければならない事態に陥っています。個人情報をあまりあちこちにばらまきたくないので、できればGoogleとかFacebookのIDで登録できるようにして欲しいのですが、なかなかそれも行きわたりませんね。

なるべく新規登録をしたくないのは、セキュリティ以外にも理由があります。それは、「不機嫌になりたくない」からです。Webでユーザー登録を行うようになってずいぶん長い時間が経っていると思うのですが、依然として無くならないのが「人を不機嫌にさせるWebサイト」です。メールアドレスを入れる欄で日本語入力が強制的にOFFになる(私は自分のアドレスを辞書に登録しています。無理に手入力するとタイプミスの原因になります)とか、パスワードを2回入れさせる(コピペするので無意味)サイトもなかなか無くなりません。当初はミスを防ぐという考えで採用されたものと思われますが、利用者に負担を強いる上、実効性にも疑問があります。あとは、入力画面が複数になっていて、前の画面に戻ろうとすると入力したデータが消えている、なんてサイトもざらにあります。

イライラさせられたあげくに、あきらめて申込みを止めたことも1回や2回ではありません。そういう不愉快な体験をしたくないが故に、登録画面に進むことすら躊躇してしまうようになります。登録して欲しいのかして欲しくないのかわかりません。逆効果です。

smartphone_monku.pngいきなりこんな話を始めたのは、以下の記事を読んだからです。

不便で仕方ない「住所入力の全角・半角問題」はなぜなくならないのか 専門家に原因を聞く

入力された文字が全角か半角かを判定して、全角でも半角でも、必要な方に統一すれば良いだけです。住所入力なんて、何十年も前から何万というプラクティスがあったはずなのに、何故未だにこんなことになっているのか、本当に不思議です。ユーザー側がこれだけ辟易しているのに、作る側はどうしてそれに気づかないのでしょうか?あるいは、気づいていても無視しているのかも知れません。そうだとすると、悪意すら感じます。

これは、「他のサイトは『全角で入力して下さい』と書いているので、それで良いだろう」「仕様書にそういう指示はない」「予算がギリギリだし、余計なことはしたくない」あたりが理由として考えられますが、それはあまりに利用者を軽視した考え方です。スマホの普及によって、世の中には優れたUI/UXが溢れています。いまどきこんなことを続けていては、ユーザーから見放されるでしょう。

業務システムならUX無視でも良いのか?

コンシューマ向けのシステムであれば、そんなUXを放置している企業は淘汰されるでしょうから相手にしなければ良いという考え方もありますが、上の記事によると、同じ事が社内システムでも起きており、むしろその方が問題が大きいということです。まあ、外部へ向けてすらこんな有様であれば、社内システムも同じに決まっていますが、社内システムは「関係者はそれを使わざるを得ない」ところに大きな問題があります。

多少使いづらくても、業務のために我慢して使っているというのが現状でしょう。「どうせ要望を上げても動いてくれないだろう」と思われているのだとしたら、システム部門は反省しなければなりません。人手不足の中、従業員の能力を100%活かしきる必要があるのであれば、日々使う業務システムの使い勝手が従業員の生産性に影響すると考えるのは当然のことではないかと思います。特に今は皆、スマホなどの良いUXの恩恵を受けていますから、「なんで業務システムだけこんなUXなんだ」「会社は従業員を軽く見ているのか」と、モチベーションも上がらないでしょう。

こういったシステムを作ってしまい、さらに放置してしまう企業には、DXへの取り組みなどできないのではないでしょうか。まずは足下から見直すという意識が、DXに繋がっていくのだと思います。

「アップデートできないオッサン」にならないために

サイボウズ青野さんの記事。UXの話ではないのですが、「アップデート」という言葉が上の問題と関連しているのではないかと引っかかりました。

「日本の給料が上がらない」のは、アップデートできないオッサンによる「ジェンダー問題の放置」が原因です

オッサンは自らアップデートできず、それがためにさまざまなもののアップデートが滞っている、というオチはあまりにありがちですが、社内システムのUX問題にもオッサンが大きな影響を持っていそうな気がします。

こういうオッサン達は使いにくい業務システムについても「多少使いにくくても人間が頑張れば良いのだ」「そんなもの、現場の我が儘だ」「それを直したら、一体いくら儲かるんだ」とか、挙げ句の果てには「俺たちが若い頃は・・・」とか言い出しそうです。しかしそれは違う。全てのシステムは人間の仕事を楽にさせるためにあるのです。その大前提を忘れたシステム、その大前提を攻め続けないシステムに存在価値は無いと考えるべきでしょう。

DXにとりかかる前に、RPAを導入する前に、できること、すべきことがあるのではないでしょうか?

 

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