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Gartner が言う「デジタル・ビジネス」とは?

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先週はIPAの白書を紹介しましたが、秋は調査結果の発表シーズンなのでしょうか。調査会社のGartnerが、新たな調査結果を公表しました。

Gartner、デジタル・ビジネスへの取り組みに関する調査結果を発表

日本におけるデジタル・ビジネスへの取り組みについて、2021年4月に行った調査だそうです。調査から半年経っているわけですが、だいたいどの調査もこんなものかと思います。先週紹介した白書は調査時期が7-8月ということでしたが、それが速すぎるのですよね。

内容に入る前に気になったのが、「デジタル・ビジネスって何?」ということです。リリース内には用語の解説がないのですが、一般的な用語なのでしょうか?ネット通販もデジタル・ビジネスに入るのでしょうか?今流行のDXのことでしょうか?

study_chienetsu_boy.pngちょっと調べてみましたが、Gartner自身が説明しているサイトは見つかりませんでした。Gartnerのデジタル・ビジネスについての定義を紹介しているサイトは結構あるのですが、

サイトによって全然定義が違います。。どれも、Gartnerの人の説明を引用しているのだと思うのですが。

まあ、少なくともネット通販は含まれなさそうです。DXっぽいイメージですね。

パンデミック後、デジタル・ビジネスへの取り組みは進展

調査結果の概要は、「パンデミックを挟んで、デジタル化/電子化のトレンドが加速した」ということです。図が掲載されていますが、2017-2020年に比べ、2021年の調査では「取り組んでいない」が激減しています。Gartnerでは

「取り組んでいない/その他」と回答した割合が35.0% (2020年) から17.5%に半減し、全体の8割を超える企業が何らかの形でデジタル・ビジネスに取り組んでいる状況が浮き彫りになりました

と言っています。まあ、数字としてはそうですね。

逆に2倍くらいに伸びたのは「アイデア探索」ということですが、これがどのようなデジタル・ビジネスなのかはちょっとわかりません。まさか、「DX検討室の設置」とかでは無いですよね。。

その他は大きな動きは無く、「実証実験」(悪名高きPoCのことですね)「少数のデジタル・ビジネスを実現」が少し増えています。どうも、準備室を作ってPoCを行い、小さなプロジェクトを立ち上げてみた、というような絵しか浮かんでこないのですが、勘ぐり過ぎでしょうか。。

調査結果はさらに続きますが、だんだん怪しくなってきます。

デジタル化/電子化への取り組みにおける、パンデミック前 (2019年) と比べた変化について調査対象者に尋ねたところ、半数を超える企業がペーパーレスやハンコレスを、また4割を超える企業がデジタル・ビジネスへの取り組みを強化すると回答しました

「デジタル化/電子化」にはデジタル・ビジネスへの取り組みだけでなく、ペーパーレスやハンコレスが含まれるようです。DXの話かと思っていたら、もっと対象は広いようですね。ペーパーレスやハンコレスを「DX」に入れるのかどうかは意見が分かれるのかも知れませんが、私としてはDXとは言いにくいなー、という考えです。明確な決まりは無いのでしょうが、Gartnerとしては広く定義しているということでしょうか。

パンデミックが収束したからと言って手を緩めないことが大事

調査は、パンデミックが早期に収束した場合、デジタル化の機運も弱まる恐れがあるが、3-5年先を見据えた戦略を立て、じっくり取り組むべき、と締めくくっています。パンデミックへの対応のために始めた取り組みは、収束すると忘れてしまうということでしょう。これを機会に、継続的な取り組みにしておかないと、日本のDXはさらに遅れることになってしまいます。

 

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