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オンラインイベントは今のままで良いのだろうか

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コロナ渦がなかなか収束しない中、多くのイベントが中止・延期されています。IT企業のイベントはオンライン開催が多くなっていますが、これはそうしたテクノロジーを取扱っている以上、当然のことでしょう。しかし、今行われているイベントは「リアルのイベントをWeb上で再現した」というところに留まっているようです。なにしろ急なことでしたから仕方ない面ももちろんありますが、今後オンラインイベントが変わっていく兆しも見えています。

Microsoftのイベントは2021年もデジタル化が続くのか

Microsoftは少なくとも夏まではリアルのイベントを開催しないと言っているそうですが、3月に予定されているオンラインイベントからは少し内容を見直すのではないか、ということです。鈴木さんも記事の中で書いていますが、

正直なところ、従来のスタイルをそのままオンラインに持ち込んだITイベントの参加は筆者にとって苦痛

なのですよね。同じ思いを持っている人は、案外多いのではないでしょうか。

building_bigsight.pngコロナ以前もイベントのWeb配信はありましたが、リアルのイベントありきでしたから、基本的な構成が変わらないのは仕方ないでしょう。しかし、リアルなイベントを伴わないフルデジタルなのであれば、もう少し違うフォーマットを考えても良いのでは無いかと思うのです。

ところが、昨年はリアルイベントのフォーマットを逸脱しないどころか、わざわざWeb上にバーチャルなイベント空間を作り、会場への出入り、機器展示場を歩き回ることを体験できるような演出も見られました。最初は「へえ」と思いましたが、その後は正直めんどくさいだけでした。(関係者の皆さんには申し訳ありませんが)お金と手間をかけた割に、来場者の満足度は上がらなかったのではないかと心配になります。

デジタルネイティブなイベントとは

まず、冒頭の記事にもあるように、

多くの人々を集めて話題を盛り上げるというよりも、商品個別やテーマ別トピックごとにイベントを開催し、必要な情報を必要なタイミングで伝えていく手法が中心

となっていくでしょう。「盛りだくさんで何でもあり」というイベントは、リアルな開催であれば一回ですべて済ませられるメリットがありますが、オンラインであればむしろテーマを絞った小規模なイベントを沢山行うほうが、参加する方も楽です。膨大なビデオを限られた期間内に見なければならない(多くのイベントが期間限定なのは何故でしょう?)、というのが逆にプレッシャーになることもあります。リアルなイベントであれば(特に欧米で多いホテルに数日間カンヅメにして、という形態であれば)、開催期間中は諦めてその会社の製品に専念できますが、そうした拘束が難しい(その「手軽さ」がむしろメリットとなる)オンラインでは、やはり発想の転換が必要になると思います。

デジタルを補完するリアルな体験を提供

そもそもイベントのメリットとは、普段は会えない製品の専門家の話を直接聞けたり、質問したり、他の参加者と対話したり、様々なトピックスについての情報を1カ所で効率的に収集できる、といったようなことではないかと思います。オンラインイベントは、効率は高く手軽ではあるものの、その他の部分はどうしてもリアルに劣ります。それを、何らかの形で補完できるような形を考えるべきでしょう。(もうやっているイベントもあるのかも知れませんが)そうすれば、リアルイベントよりも安価に、効果的に情報を発信できるようになるのではないでしょうか。

商品やサービスの説明などはそもそもWebにあるわけですから、オンラインイベントの中心が講演ビデオになるのは仕方ありませんが、なんと言っても問題は、個々のビデオを最初から最後まで視なければならないとなると時間がかかるということです。手軽に参加できるからこそ、いろいろなコンテンツを見てみたいのです。「つまみ食い」を許す構造にできないでしょうか。

講演している方には申し訳ないですが、最初のご挨拶とか、特に興味は無いのです。(まあ、だからといって省略することもできないのでしょうが)ビデオにインデックスをつけ、興味のあるポイントへ飛びやすくする、プレゼンテーションの概要・あらすじをタイプスタンプ付きで表示するなどすれば、もっと効率的に自分の興味があるところだけを見ることができ、効率的に情報を収集できるのではないでしょうか。「せっかく撮ったんだから見てくれ」という気持ちもあるのかも知れませんが、ちょっと押しつけがましいようにも思います。

また、講演者との質疑応答の時間を設ける、Webではわかりにくい/見つけにくい情報について回答する場を設けるなど(最近流行のClubhouseでも良いでしょう)すれば、文章ではわかりにくかったり、いちいち問い合わせるのもめんどくさいようなポイントを明確化するのに役立つのではないでしょうか。主催者側から担当者が常時出られれば一番良いでしょうが、そうでなくても、主催者がオフィシャルにそういった場を提供すれば、ユーザー同士で勝手に情報交換するかも知れません。Webフォーラムなどもありますが、ある時点で皆が集うという「リアル感」があると、参加者も楽しめるのではないかと思います。この辺は様々な形態が考えられますし、試行錯誤も必要な部分だと思いますが、今年はそういった試みが是非増えて欲しいと思います。

 

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BCN CONFERENCEでの基調講演が記事化されました

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