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IBM 分社化の意味と狙いを考える

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先週末、大きなニュースが飛び込んできました。IBMが会社の1/4を切り離すというのです。

IBM、マネージドインフラサービス部門を分社化へ--ハイブリッドクラウドに注力

IBMはの業績悪化に陥る度にさまざまな製品やサービス部門を売却していますが、今回は最大規模です。新会社の売上は$19B(約2兆円)、残る本体の売上は$59B(約6.3兆円)ということですから、売上の1/4を切り離すいうことになります。新会社の従業員は9万人ということで、これも現在の35万2千人の約1/4です。発表後IBMの株価は一時7%上昇し、市場は好感したようです。

マネージドインフラサービス部門はグローバルテクノロジーサービス(GTS)事業の一部ということですが、記事には「新会社はクライアント向けインフラの設計や運用、モダナイゼーションを実施する」とあります。構築/移行コンサルや運用アウトソースを行う会社になるのでしょうか。ただ、IBMの社内用語も混じっていて、いまひとつどのような事業が含まれるのかが具体的でありません。私が最初に思ったのは「メインフレーム事業はどっち?」でした。

computer_mukashi_.pngそう思ってよく記事を読んだのですが、よくわかりません。他の記事を読んでみても、メインフレームなどのハードウェア事業はどうなるのか、書いていないのですね。やっとTechCrunchの記事

TechCrunchの取材に対して広報担当者は「新会社はインフラサービス事業を行い、サーバー事業は含まれない」と確認した。

とあり、ハードウェアは本体に残るのだな、ということがわかりました。「IBMがメインフレームを手放すはずが無いでしょ。当たり前のことだから書かなかったんでは?」という意見もあるでしょうが、何が起こるかわからない世の中ですから、こういうことはちゃんと書いてほしいものです。まあ、IBMのリリース原文にも書いていないようですので、ニュースサイトも初稿時点では確認できなかったのかもしれません。TechCrunchは自分で確認したのでしょうね。偉い。

分社化の狙いは?

しかし、いくつか記事を読んでみても、何が起ころうとしているのか、何が狙いなのかがいまひとつすっきりと見えてきません。スピンオフ完了は2021年末ということで、1年以上ありますから、今のところ具体的なことは何も決まっていないのかも知れません。同じ事を考えている人は居るようで、以下の記事を見つけました。

IBMの分社化に関する正しい理解 クラウドサービスはどうなるのか

この方はIBMのリリース本文を読み解き、以下の様に書いています。

この発表を考えるに、IBM本体からクラウドサービス(IBM Cloud)を切り離すと考えるのはミスリードです。あくまでもSIとしてのインフラをマネージドするサービス部門を切り出す、ということです。

このことから、記事にもあるように、新会社はIBM色を薄めて複数のクラウドを対象にマネージドクラウドのビジネスを拡大することが狙いとしてあるのでしょう。ひょっとすると新会社には「IBM」の文字は入らないかも知れません。

そして「IBM本体もIBM Cloudからの脱却を図り、マルチクラウド向けのインフラ提供にシフトする」ことで、技術的優位性を維持し、収益を確保するということでしょう。

そうすると、IBM Cloudはこれ以上拡大させず、じわじわと存在感を薄めていくということではないでしょうか。マルチクラウドを謳う場合、自社クラウドを持っていることがマイナスになる可能性もあります。まるごとどこかが買ってくれれば一番良いのかも。。

海外メディアは不採算事業扱い

こういった問題では、日本のメディアは発表をそのまま流す傾向が強いですが、海外のメディア(特に金融系)は辛辣です。

IBM will spin off legacy business to focus on cloud and AI services

そもそもタイトルに「legacy business」と書いてあるように、今回切り離すのは古く収益性の低い事業だと言うのです。

IBM is essentially getting rid of a shrinking, low-margin operation given the cannibalizing impact of automation and cloud, masking stronger growth for the rest of the operation,
IBMは、自動化とクラウドが共食いし、有望なオペレーションの成長を阻害することを心配して、縮小しつつある利益率の低いオペレーションを根本から排除した。

New York Timesも

IBM, Seeing Its Future in the Cloud, Breaks Off I.T. Unit

の中で

That business is sizable, with sales of about $19 billion a year, and will become a separate public company. But that business is not where the growth opportunities lie in the technology business.
その事業は年間売上高は約190億ドルと非常に大きく、将来は独立した公開会社になる。しかしそのビジネスはテクノロジービジネスとしての成長の見こみは無い。

と書いています。まあ、IBMの発表はいろいろ取り繕っていますが、実態としてはこんなところでしょう。

新会社のビジネスは成長率は大きくなく、利益率も低くなると思われますが、独立した会社になることでコストや人員の最適化を図ることができます。そして残るIBM本体は高収益なビジネス分野にフォーカスし、DXによってビジネス速度を上げる、という目論見なのでしょうね。

 

「?」をそのままにしておかないために

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