変わる世界 ~ネットは無料ではあり続けられないのか
FirefoxやThunderbirdなどを開発するMozillaが、全世界約1,000人の従業員の4分の1にあたる250人を解雇する大規模なリストラを発表しました。
Mozillaが大規模リストラ。「すべてが無料だった古いモデルには結論が出た」として今後は新たなビジネスモデルを模索すると
今回のリストラ発表はショッキングではありますが、既視感もあります。Mozillaの収入のほとんどはGoogleなどからの検索ロイヤリティなのですが、2011年にもGoogleとの契約が更新されないかも知れないという報道が出て、ネットは騒ぎになりました。
結局このときはGoogleとの契約が延長されたのですが、今回のリストラについても、どうやらGoogleとの契約が延長できないかも知れない、ということでの決定だったようです。以下の記事では、Mozillaがリストラを発表した翌日にGoogleが契約を更新したことが伝えられたということで、とりあえずはピンチを回避できたのでしょう。
しかし、2011年(というか、Googleとの契約を締結した2006年)から基本的なビジネスモデル変わっていない、ということですね。
「すべてが無料という古いモデルには結論が出た」
それにしても、最初の記事のタイトルにもありますが、Mozilla CEOのMirchell Baker氏のコメントが泣かせます。
すべてが無料という古いモデルには結論が出たと認識している。つまり、私たちは別のビジネスチャンスや異なる価値の交換について模索しなくてはならない。
インターネットの何もかもが無料だったことはもちろんありません(アクセスのためには料金が発生しますし、サーバーの費用は誰かが支払っています)が、やはり、無料であらゆる情報を入手できたり、さまざまなサービスが受けられたりすることはインターネットの最大の魅力です。
しかし、インターネットを使って莫大な利益を稼ぎ出す企業が増えている一方で、昔ながらの「無料で」情報やサービス、製品を提供するコミュニティや企業にはお金がなかなか回っていかないという状況が生まれています。あのWikipediaでさえ、定期的に寄付を募るキャンペーンを行わなければならない状況なのです。
LinuxやKubernetesなどのサーバー系ソフトウェアは、ビジネス上の利益を共有できる多くのベンダーが参加することでエコシステムができあがり、企業からの人やお金が流れ込んでうまく開発が回っていますが、Mozillaのようなコンシューマ向けは、広告などに頼らざるを得ないのが実情でしょう。今回の新型コロナ騒ぎで大きく収入が落ち込めば、今回のようなリストラは繰り返されます。
どうやって儲けるのか?
しかし、広告以外の方法で収益を上げるのは非常に難しいのが現状です。ソフトバンクの孫さんは、インターネットでビジネスになっているのは、今のところ広告と小売りしかないということを喝破しています。
ひとつにはサブスクリプションが考えられますが、無料のブラウザがいくらでもある状況では、ブラウザ本体で収益を上げるのは難しいでしょう。
収益の多角化の試みとして、Mozillaは今年、有料のVPNサービスを開始しています。
しかし、これもなかなか苦しい一手と言わざるを得ません。以下にも書きましたが、
ゼロトラストの時代では、VPN自身がセキュリティホールになり得る、という認識が必要です。ユーザーが利用するとしても、短期間のソリューションになってしまうのでは無いでしょうか。
インターネットは「無料」であることが最大の強みでした。情報の流通コストを限りなくゼロに近づけた結果、世界を変えることに成功したのです。この流れを、なんとかして維持していきたいものです。
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