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オープンなハードウェア、成功の鍵は?

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先日のブログでご紹介したように、MIPSの命令セットアーキテクチャ(ISA)がオープン化されました。他にオープンソースで開発されているISAとして有望視されているのが「RISC-V(リスクファイブ)」ですが、先週、このRISC-VベースのプロセッサコアであるCore-Vが発表され、それを開発・提供していく団体として「OpenHW」が発足しました。

RISC-Vベースのオープンソースコアを提供する非営利組織「OpenHW Group」が誕生

ISAとコアの関係がわかりにくいのですが、ISAはプロセッサとシステムソフトウェア(OSやモニタ/BIOSなど)の間のやりとりを定めたAPIのようなものであり、そのものは実際のプロセッサを作るための設計情報を含んでいません。命令をどのように分解し実行するかというマイクロアーキテクチャに落とし込み、設計情報までに落とし込んだのがプロセッサコアといったイメージでしょうか。利用企業はこの設計情報に適宜機能を追加したりして望みのプロセッサを開発し、最終的な回路図をファウンダリ(半導体製造企業)に送ってチップにしてもらう、という流れになります。Armも、ISAとコアは別々のライセンスになっています。Intelは、どちらも外部への提供はしていません。

giraffe.pngオープンなプロセッサは成功するのか?

現在、ソフトウェアをオープンソースで開発することは当たり前になっていますが、これは、実際に利用する場合の費用負担が少なくて済むというソフトウェア特有の事情も大きいように思います。マイクロプロセッサの場合、例え設計図を無料で入手できたとしても、それを改変して設計するための人材はツールは高価ですし、チップにするためにはさらに巨額の投資が必要です。設計にミスがあれば、一からやり直しとなるため、どうしても実績のあるコアを使いたくなるのではないかと思います。

しかし、時代は変わってきました。オープンソースソフトウェアのビジネスモデルが成功し、共同開発によって大きなメリットが得られることが明らかになったことで、プロセッサでもそれが可能ではないかと皆が考え始めたのです。それを受けたのがMIPSのオープン化であり、RISC-Vの盛り上がりでしょう。

ハードだってオープンソース
IoT市場に挑む新マイクロプロセッサー「RISC-V」

「IoTの勝者」と呼ばれるArmですが、Armに限らず、一人勝ちを許すといろいろな不具合が起こります。健全な競争は業界全体の発展のためにも必要です。

「あの人」が起爆剤に?

しかし、上述した費用の問題に加え、エコシステムの形成など、プロセッサの開発には様々な環境整備が必要です。すんなり普及するかどうかについては、懐疑的な見方も少なくないのが現状でしょう。

RISC-V、関心は高いが普及には障壁も

しかし、ここへきて、状況が一気に変わるのかもしれない、という事態が起きました。アメリカによる中国への制裁です。

ARMが米方針に従いファーウェイとの取引を停止

HUAWEIは自社のAndroidデバイス用にArmからライセンスを受けた独自チップを開発していますが、Armが将来の契約を停止したというのです。

貿易戦争が長期化する場合、中国企業はArm以外の選択肢を考えなければなりません。そこでRISC-Vが浮上するのは自然なことです。(HUAWEIはRISC-Vのスポンサーです)あるいは、Open MIPSという選択肢もあるかもしれません。(MIPSは一時期、中国関連の企業の傘下に入っていました)このあたりは西田さんの記事に詳しいです。

ファーウェイへのArmライセンス停止で危惧される「未来の分断」

なんといっても中国は、自国だけでも巨大なマーケットがあり、欧米へ輸出できなくともそれなりのビジネスにはなります。LinuxもAndroidもオープンソースですから、OSはなんとかなります。CPUが違えばAndroidとの互換性はなくなりますが、重要なアプリは個別に移植交渉することもできるでしょうし、そもそも検索とかSNSでは既に自国主義を貫いています。ここで、HUAWEIを含む中国企業がRISC-Vに舵を切れば、情勢は一気に逆転するかも知れません。

 

「?」をそのままにしておかないために

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