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Macのマウスはなぜボタンがひとつなのか?

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すみません、タイトルは正確では無いですね。「Macのマウスはなぜボタンがひとつだったのか?」が正しいです。今はMacも右クリックの機能をサポートしています。

MacのUIの話を書いたので、ついでにマウスの話も書いておきます。Steve JobsがMacintoshの着想を得たときにXeroxが開発中のワークステーション「Alto」のUIを参考にした (パクった) のは有名な話ですが、Altoのマウスは、ボタンが3つついているものでした。

Jobsは「ボタンがたくさんあったらどれを押したら良いかわからなくなるだろう」と言って、マウスのボタンをひとつにさせたと言われています。(Macの価格を下げるためのコストダウンの側面もあったかもしれません) これに対して、後に出てきたWindowsは2ボタン、UNIXワークステーションは3ボタンマウスを採用しました。技術的に考えれば、ボタンが多い方がより多くの機能をマウスに持たせることができます。しかし、Macを「誰もが使える」パソコンにしたかったJobsは、たまにしか使わないユーザーが迷うことの無いように、と考えたのでしょう。Apple (Jobs) のUX追求主義の一端を垣間見せてくれるエピソードです。

しかし、Appleは2005年に初の多ボタンマウスであるMighty Mouseを発表します。この背景には、マウスに求められる機能への要求が高まったことと共に、PCが世の中に普及し、多ボタンがむしろ当たり前になったという状況があったと考えられます。

ところで、iPhoneやiPadのボタンもひとつですよね? Apple以外のメーカーのスマホやタブレットはたいていボタンが3つとか4つあります。同じAndroid端末でも、ボタンの数が違ったりします。開発する人は技術のプロです。ボタンが多い方が便利だと考えるのでしょう。しかし、使う方はどうでしょうか?

ボタンが多いと、ソフトウェアの開発も楽です。いろいろな機能をボタンに割り当てれば一見便利そうに見えます。しかし、覚えきれないほど増えてしまえば、何の役にも立ちません。Macがワンボタンマウスを採用したため、アプリケーションの開発者には追加の負荷がかかりました。しかし、その中から、ティアオフ型メニュー (プルダウンしたメニューを引きちぎって画面上に配置する) のような革新的なアイデアが生まれたのです。

「制約=機能の制限」では無いのです。様々なアイデアによって制約を乗り越えることが、UXの進歩に繋がるのです。Macの初期のアプリケーション達が、それを証明しています。

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