【10.5%】 フジテレビ『リアル・クローズ』はドラマか通販番組か
フジテレビ系列放映中のドラマ『リアル・クローズ』(制作・関西テレビ)。人気女優でモデルの香里奈3姉妹が競演し、話題となっていますね。主人公の天野絹恵をモデルで女優としても人気の香里奈が演じ、百貨店の婦人服売り場を舞台に、百貨店間の熾烈な競争と辣腕上司の厳しい指導の間でもまれながらも、自分らしさを発見していくというストーリー。香里奈3姉妹の競演、華やかなファッションのオンパレードなど、多くの話題を提供してくれています。
気になる視聴率は、6話終了段階で平均【10.5%】。どの局も年間で最も力作が揃うと言われている秋クールですが、「東京DOGS」以外は突出した作品がない中では、善戦しているのではないでしょうか。しかしこのドラマ、クォリティとはまったく別の視点で、業界内外で賛否両論の声が飛び交っているらしいのです。
::: ::: :::
このドラマの番宣用WebSiteの下部に、「On Air Link」というバナーが配されています。こちらは関西テレビの関連会社である関西テレビハッズが運営する物販サイト。リアル・クローズに登場する香里奈をはじめとする女優陣が着用する服飾品を販売し、アクセスが急騰しているようなのです。
このサイトの特徴は、ドラマのキャストが身につけているのと同じ商品が実際に購入できるという点にあります。目の前で香里奈が着ている商品が、ワンクリックで買える。まさに『リアル・クローズ』なわけです。
11月17日放送の第6話。ドラマの進行に合わせてWebSiteを見てみました。冒頭のシーン(10:01)では渋めのジャケット姿で香里奈が登場します。するとWebSiteにはそのシーンの写真と共に、SmackyGlamが提供するジャケットが掲載され、CHECK!ボタンをクリックすると、詳しい商品説明やサイズ表示とともに<購入はこちら>ボタンが表示されるのです。
シーンが進むにつれ、掲載される商品アイテムもどんどん増えていきます。22:09にはロングカーデガン姿の香里奈が登場。WebSiteにはやはりDeciousが提供するカーデガンが掲載されました。これ、9,870円というリーゾナブルな価格ということもあってか、ドラマが終わる頃には<売り切れました>となっていました。
ちなみに私は、居間のTVでドラマを横目に見ながら、机上のPCでWebSiteをチェックしました。中にはドラマはTVで、Webは携帯で、という方もいらっしゃることでしょう。これなら居間に座ったままで両方できちゃいますね。またデジタル対応TVでインターネット接続環境を整えている方なら、TVの画面半分にドラマ、半分にWebSiteを表示して、ドラマを見ながら気になる商品をチェックし、気に入ったら即購入することもできるということになります。
ドラマにおいては、衣装協力として多数のファッションブランドがスポンサードし、キャストが着ている服飾品を提供するというのはごく普通の形態だと思います。先の物販サイトでは、スポンサードしている企業の一覧がバナーで表示され、アイテム毎に提供ブランドがきっちり表示されています。これまではスポンサードしても効果が漠然としていたかもしれませんが、今回の物販サイト開設により、提供した服が実際に売れていくというダイレクトな販売・マーケティング活動ができる仕掛けが提供されているわけです。
視聴者側にとっても、「香里奈が着ているこのジャケット、欲しいなぁ、どこで売ってるんだろう…」「買いたいけど、近くにそのお店ないし…」みたいな要望が叶うという点で、ある意味画期的な場が提供されたことになり、喜んでいる女性ファンも少なからずいることでしょう。
::: ::: :::
賛否両論、と書きましたが、賛成論としては「モノが売れなくなっている昨今、消費者にダイレクトアプローチできることでスポンサードを獲得しやすい」「新しいマーケティング手法を提案している」などが代表的なところでしょうか。一方で否定的な見方としては「ドラマが物販に左右されることになり、クオリティが落ちる」「そもそもドラマは通販番組じゃない」「ドラマのフジ、らしくない」などなど。業界人の話から一般のブロガーまで、見方はいろいろのようです。
最近のドラマでは、キャストが番組の提供CMにも登場するパターンが目立って多くなっているような印象があり、個人的にはちょっとやりすぎじゃないかと感じています。たとえば、昨日(11月23日)放映された小栗旬・水嶋ヒロ主演の「東京DOGS」。主演女優の吉高由里子は、トヨタ車のCMで出てきます。さらにドラマ途中で勝地涼が最新の防水携帯を使用するシーンがナニゲに使われていましたが、提供CMではソフトバンクの防水携帯が紹介されているといった具合で、番組とスポンサードの関係性が直接的に露出してくるケースが増加し、その手法も手の込んだものが増えていますね。これもダイレクトな効果を期待するスポンサーの意向が強くなっているのではないでしょうか。
::: ::: :::
『リアル・クローズ』に話を戻しましょう。業界関係者の見方がどうであれ、大事なのは視聴者(購入者)のはず。視聴者の意向に沿っていれば、ドラマは受け入れられるし、リアル物販サイトで服も売れる。逆なら、視聴者もシラケて視聴率も低下し、服も売れない。答えは自ずと出てくるはずです。
その意味では、見ている側も賢い視聴者でなくてはなりません。便利な時代になったと、喜んでいるだけではいけないのかもしれませんね。。。