英ガーディアン紙、電子ブックシリーズ"Guardian Shorts"を開始
もう1つ続けて新聞社の取り組みを。英国のガーディアン紙が、有料の電子ブックシリーズ"Guardian Shorts"をスタートさせています:
■ Introducing Guardian Shorts (The Guardian)
Guardian Shorts is a new series of ebooks from the Guardian, providing detailed guides to topical news stories, public policy, sports and cultural events. The ebooks will demonstrate the best of Guardian journalism, with timelines, data and comment, curated and packaged for a quick, portable read.
Guardian Shortsは、ガーディアンがお届けする新しい電子ブックシリーズです。ニュースで話題のテーマや政策、スポーツ、文化イベントなどのトピックについて、詳しい解説を行います。ガーディアンが行ってきた報道からベストな部分を選び出し、時系列やコメントを加えた、素早く手軽に読める電子ブックです。
ということで、あるトピックについてガーディアン紙の記者が解説記事を書き、それをまとめて一冊の電子ブックにするという内容になるようです(イメージ的には「岩波ブックレット」といったところでしょうか)。1巻目のテーマは"Phone Hacking: How the Guardian broke the story"(電話盗聴事件―ガーディアンはどう報じたか)。同紙が暴露して大騒動となった例のスキャンダルを、記念すべき第1弾に持ってきたというわけですね。
ちなみにお値段は2.29ポンド(約300円)で、今後はトピックの内容に応じて1.99~3.99ポンド(約260~510円)の範囲内で上下するそうです。ボリュームは平均で3,000単語で、長いもので3万単語程度になる予定。現時点で対応しているフォーマットはKindleのみですが、地域による購入制限は設けられておらず、さらにiTunes BookStore版も間もなく登場とのこと。
気になるのは「既にガーディアン紙上/ウェブサイト上に掲載された記事がどの程度あるのか?」という点ですが、FAQを読むと、どうやら一部のコンテンツは過去にウェブや紙面で公開されたもののようですね。ただし各巻には必ず新しいコンテンツが追加され、さらに1821年にまでさかのぼる同紙のアーカイブからも引用がなされるとのこと。いずれにしても、最近話題の「キュレーション」、つまりバラバラのコンテンツをあるテーマに沿って分かりやすくまとめるという点が売りになるようですから、たとえ使い回しであっても新しい価値が生まれていることは確かなようです。
実際の話、新聞社は情報のスピードでネットと競うのではなく、コンテンツの蓄積や記者のスキルをベースにした解説や集約といった点で競うべきではないか?という意見が多くの人々から提示されてきました。今回のガーディアン紙の取り組みは、まさにその意見を具体化するものと言えるのではないでしょうか。さらに世界的に展開している電子ブックフォーマットを販売チャネルに選んでいるという点も、商売という観点から良い判断ではないかと思います。
いずれにせよ、ガーディアン紙にとって大胆な取り組みとなる"Guardian Shorts"。伝統的な新聞社に新たな地平を開くものになるか、注目を集めそうです。
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