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クラウド化がカンニングを不可能にする?

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以前Yahoo!知恵袋を通じたカンニング事件が起きた際に、「クラウド化が可能にしたカンニングだ」というようなコメントがあったのですが、本当のクラウド時代には不正行為は消滅する運命にあるのかもしれません。実は記録された受験者の行動を分析して、カンニングをあぶり出すテクノロジーが開発されているとのこと:

Beating cheating (The Economist)

発想自体は以前からあったもので、CBT(Computer Based Testing、関連プロセスをコンピュータ上で行う試験のこと)化によってスタンドアロン環境であっても「解答時間が極端に短い」「スクロールして問題全体を見ていない」といった観点から疑わしい行為をチェックすることが可能でした。その発想をクラウド環境でさらに進めることで、より高度な行動分析が可能になるとのこと。

例えば他の受験者の解答傾向と比較し、極端に正答・誤答のパターンが似通っていれば怪しい、というような分析はすぐに行えるでしょう。また比較という点では、他の受験者だけでなく同じ受験者の過去のテスト結果と比較することで、急に得点が上昇するといった状況を自動的に感知することも可能です(もちろん精一杯頑張って急に成績が良くなるという受験者もいるでしょうが)。CBTを提供するテスト業者らは、過去の受験者たちが残してきた膨大な行動データを分析することで、様々な「疑わしい行動パターン」を感知できるようになっているのだとか。

さらに進んだ業者になると、ウェブカメラ+顔認識技術+ユーザーPCの状況を監視するソフトを組み合わせ、オンライン試験であっても不正が発生するリスクを極度に下げることを可能にしているのだとか。こうなると「大講堂に受験者100名+学生の監視バイト3名」などという環境よりも、よっぽどカンニングがしにくくなるのではないでしょうか(非人間的だ!という心理的反発は出てくるでしょうが)。ついでに試験が終わった後もウェブを監視して、テストに関するヒミツをばらす人がいないかどうかチェックしている業者まであるそうで、そこまでされると何だか「うへぇ」という感じですね(笑)。

ただ受験者にとっては、テスト中に囚人並みの監視状態に置かれるというのは悪いことばかりではないかもしれません。少なくとも不正行為が少なくなるというのは真面目に勉強している人々にとってはプラスですし、また行動分析技術が進めば「この受験者は今日たまたま調子が悪かっただけで、潜在的な学力はありそうだ」といった推測も可能になるでしょう。ネット上に残されている他の「デジタル足跡」(ブログの記事やSNSでの書き込みなど)とテスト結果を結びつけるという世界にまですすめば、よりテストから一発勝負的な要素が取り除かれることになるかもしれません。

ということで受験+クラウド+データ解析という組み合わせ、なかなか面白い話だとは思うのですが、デジタル化が遅れている日本の教育現場ではもう少し先の話になってしまうかも……。

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