官製フィルタリングに行く前に
当然ながら海外でも「子供とネットの関係」というのは問題になっているようで、昨日の日経MJでは、米国で登場した"KidZui (キッドズーイ)"という子供用ブラウザが紹介されていました。このブラウザ、ホワイトリスト形式で子供が有害サイトに触れるのを防ぐそうなのですが、いくつか興味深い点があります。ITmedia と TechCrunch 日本版でも紹介記事がありましたので、まずはそちらをどうぞ:
■ 子ども専用ブラウザ「KidZui」が登場 (ITmedia News)
■ KidZui―子供たちに安全なだけでなく有益なインターネットを提供するブラウザー (TechCrunch Japanese)
同ブラウザでは、保護者や教師を含む約200人以上の編集者が、厳密なガイドラインのもと選択した、50万強のWebサイトのみが閲覧できるようになっている。
(ITmedia News より)
とのこと。つまり国や企業が閲覧の可否を決めるのではなく、保護者や教師がガイドラインを設定しているのがポイント(ちなみに現時点では、ホワイトリストに収録されているのは約60万サイトに達しているそうです)。さらにリストに載っていないサイトにアクセスしようとすると、
KidZuiを利用する子供たちが未承認の外部サイトへのリンクをクリックするたびに、対象のページは「保留」されて、安全性評価システムに送られる。1時間以内に承認か拒否が決定される。
(TechCrunch Japanese より)
このようにリアルタイムで評価が行われるとのこと。しかしそんな労力をまかなうお金はどうするのだ?と心配になりますが、実は無料版とアップグレード版に分かれていて、いくつかの機能を使うためには月額4.95ドル(年会費だと49.95ドル)の料金を払う必要があります。この会費でチェック体制を維持しているわけですね。
さらに特筆すべきは、保護者用の画面/機能が設けられているところ。上にあるのがそのスクリーンショットなのですが、自分の子供がどんなサイトを閲覧したか、何を検索したかなどの情報がレポート形式で表示されます(会費を払えば、さらに詳細なレポートを確認できるとのこと)。またこの情報は、メール経由で受け取ることも可能になっています。
つまりこの"KidZui"という仕組み(ブラウザだけでなく、裏側にある運用体制や、保護者用機能も総合して)、かなり能動的に保護者たちが関わったもの/関わらなければいけないものとなっているわけですね。実際、フィルタリングのために年間約5,000円を支払ったり、詳細なレポートを逐一チェックしようという親はそれほど多くないでしょう。さらにこの仕組みが全ての問題を解決するものではないと思いますが、「頭ごなしに全面禁止したり、国や企業任せにしない」という点には学ぶべきものがあるのではないでしょうか。
日本では「官製フィルタリング」の導入はとりあえず見送られましたが、またいつ「やはり国が規制せねば!」という声が上がるか分かりません。それが不可避な状況が来てしまうかもしれませんが、できる限りそうなる前に、保護者も積極的にこの問題に関わっていかなければならないと感じます。