リツイートの責任
昨日の記事で「ビン・ラディン殺害情報リーク」がいかに波及したかを整理した調査結果をご紹介しましたが、この調査を行ったSocialFlow社が、関連ツイートの流れをインフォグラフ化しています:
(オリジナルはこちら)
夜空の星のように見える点が個々のTwitterアカウント、線が情報の流れを示しているのですが、左上にあるキース・アーバーン氏(件のリーク・ツイートを投稿した人物)のアカウントからブライアン・ステルター氏(ニューヨークタイムズ紙の記者でフォロワー5万人超)のアカウントへと情報が流れ、そこからさらに情報が拡散した様が見て取れます。つまりステルター氏(あるいは他のフォロワー数の多いアカウント)がアーバーン氏のリークをリツイートすることで、情報がより広範囲に拡散したことを示しているわけですね。
では仮に、アーバーン氏の掴んだ情報が誤りで、結果的にステルター氏が誤った内容のリツイートを行っていたとしたらどうでしょうか。確かに情報の源はアーバーン氏であり、仮にそれを得たユーザーが何らかの不利益を被ったとしても、ステルター氏に何ら責任は発生しないという捉え方も可能だと思います。しかしステルター氏がリツイートしなければ、その情報に触れることがなかった可能性の高いユーザーが存在していることも事実でしょう。従って「デマ」が伝わった場合の責任の一端は、ステルター氏にあると考えることもできるのではないでしょうか。
さらに仮定を続けましょう。アーバーン氏が自分の掴んだ情報が誤りであることに気づき(※念のために繰り返しますが、実際には彼の得た情報は事実でした)、急いで訂正ツイートを行ったにも関わらず、ステルター氏がその情報をリツイートしなかったとしたらどうでしょうか?もちろんステルター氏以外の経路で、最初のニュースが誤りであったという情報を得るユーザーもいるでしょう。しかし先ほどと同様に、アーバーン氏とつながる唯一の経路がステルター氏であり、従って彼が訂正リツイートを行わないことで今度は逆に正しい情報が得られない人々も生まれる可能性があるはずです。
リツイートとは、自分のフォロワーに対し、彼らが日常的に接していない情報源へのアクセスを一瞬だけ開設する行為です。その際に流れた情報が誤りであると判明した時点で、何らかの訂正を行う責任をリツイーター(リツイート実行者)は負うのではないでしょうか。少なくとも十分な情報を渡していない時点で、「どう判断するかは情報を得た人の責任」と放置するのは無責任だと考えます。
もちろんここで言う「責任」とは、絶対に誤った情報を流してはならないといった類の話ではありません。スピード重視でリツイートした方が良い場合もありますし、ソーシャルメディア時代にはクレイ・シャーキーの言う「まずは情報を公にし、後から取捨選択する」というアプローチの方が現実的であるという考えにも同意します。しかしだからと言って、流れた情報の正誤についてリツイーターは一切責任を負わないというのは虫が良すぎるでしょう。「まずは情報発信」というアプローチは、「後で精査」という行為とセットになった場合にのみ許される行為ではないでしょうか。
もし後で精査できそうにない、しかし重要そうなので目の前の情報をリツイートしたいという場合には、せめて公式RTでリツイートすべきでしょう(この場合、オリジナルのツイートが削除されればリツイートも消える)。こうした意見の表明は「勝手な意見を押しつけるな!」として敬遠される傾向がありますが、新しく登場したソーシャルメディアというツールをより良いものにしていくためには、賛否両論含めた活発な議論が行われるべきだと思います。
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