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『このビジネス書を読め!』――でも、ビジネス書って何だろう

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ディスカヴァー・トゥエンティワンさんが昨年から開始した「ビジネス書大賞」。2011年度の結果が発表され、その内容が『このビジネス書を読め! ビジネス書大賞2011』として発売されています。僕も審査員として参加させていただきましたので、遅ればせながらご紹介と思ったことをつらつらと。

このビジネス書を読め! ビジネス書大賞2011 このビジネス書を読め! ビジネス書大賞2011
ビジネス書大賞実行委員会

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2011-04-26
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今年度の第1位には『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』が選ばれ、以下5位まで次のような結果となっています:

  1. ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件
  2. もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
  3. 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
  4. フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
  5. イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

いずれも昨年話題となった本ばかりで、既にチェックしてるよという方も多いですよね。本書にはこの後に続く本も紹介されているので、興味のある方は確認してみて頂きたいのですが、考えてみたいのはそのランキング上位には上がってこなかった(しかし支持する人のいる)「ビジネス書」の方。その顔ぶれを見ると、ビジネス書ランキングのはずなのに、少し毛色の違った本もいくつか存在していることに気づきます。例えばマイケル・サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』などはその最たるものでしょう。もちろん同書は素晴らしい本ですが、ビジネス書ランキングに挙げて良いものなのでしょうか?

かく言う自分も、「私たちが選ぶビジネス書の名著」コーナー(昨年出版されたものに限定せず、好きなビジネス書を紹介してよいというもの)で『感染地図―歴史を変えた未知の病原体』を取り上げさせていただいています。推薦の理由は『このビジネス書を読め!』でご確認いただければと思うのですが、本書が書店のビジネス書コーナーに置いてあるかといえば、まずその可能性はないでしょう。しかし僕にとって、この本はまぎれもなくビジネスにおけるアドバイスを与えてくれるものであり、その意味でまぎれもない「ビジネス書」なのです。

考えてみればビジネスとは、あるいはもっと広く捉えて「働く」とは、私たちの人生において大きな部分を占めています。従って会計や財務、統計といったダイレクトにビジネスに結びつく要素だけでなく、心理学や文学、あるいは哲学といったものまでが、何らかの形で「働く」という行為に影響を与えます。むしろ何の影響も持たないという要素を探すことの方が難しいのではないでしょうか。

その意味であらゆる本が「ビジネス書」であり、ビジネス書ランキングに様々なジャンルの方が含まれているのも、実際にそこから仕事上で何らかの助けを得たという方が多いからでしょう。そして逆に言えば、いわゆる「ビジネス書」としてのフォーマットをどんなに深く追求した本であっても、読み手がそこから現実の行動を導き出すことができなければ「ビジネス書」にはならないのだと思います。

実は個人的には、『感染地図』のように一見仕事には何の関係も無いように見えながら、読み終えた後には教訓を手にしているという本の方が好みだったりします。根が怠け者なので、「これとこれとこれがポイントだよ!」と言われるとそれだけで安心してしまって、頭に残らないんですよね(笑)。ということで『感染地図』、オススメですよ!

感染地図―歴史を変えた未知の病原体 感染地図―歴史を変えた未知の病原体
スティーヴン・ジョンソン 矢野 真千子

河出書房新社 2007-12-11
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