日本の中学生は「世界一テレビ漬」らしい
世界一テレビ漬。日本の中学生は1日平均2.5時間テレビを視聴。世界49ヵ国の中で最長でした。
昨日電車に乗っていたとき、某学習塾の広告が目に入りました。そこには上記のように、中学生の家庭生活を悲観する内容が。これは大変だ、やっぱり日本はもうダメかもしれない――
――と危機感を煽られてしまう前に、元データにあたることが重要ですよね。弾さんオススメの本『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』でも、「まずは生データに当たれ!」最初に出てくるアドバイスでした。ならばということで、元データとして明示されていた「TIMSS2007(国際数学・理科教育動向調査の2007年調査)」をググってみたところ、ありがたいことに国立教育政策研究所のサイトで日本語資料が公開されていました(※以下のリンク先はPDFファイル):
■ 国際数学・理科教育動向調査の2007年調査 (国立教育政策研究所)
こちらを見ると、確かに日本の中学生(中学2年生)のテレビ・ビデオ視聴時間は2.5時間。調査対象49ヵ国中最長……なのですが、学習塾の広告では語られていなかったデータもあります:
- 2003年度の調査と比べ、中学2年生のテレビ・ビデオ視聴時間は0.2時間減っている。
- テレビ・ビデオ視聴時間の国際平均値は1.8時間。日本の結果との差は0.7時間(約40分)に過ぎない。
- また米国(2.1時間)、英国(2.0時間)、香港(2.1時間)、シンガポール(2.3時間)など、テレビ・ビデオ視聴時間が2時間を超えている国も多い。
- 一方、「コンピューターゲームをして遊ぶ」時間を見ると、日本は0.8時間であり、国際平均の1.2時間よりも少ない。
- また「インターネットを使う」時間も、日本は0.8時間であり、国際平均の1.3時間よりも少ない。
- ちなみに「楽しみのために本を読む」時間を見ると、日本は国際平均と同じ0.8時間。また「スポーツをする」時間も、日本・国際平均ともに1.4時間。
どうでしょうか。確かに日本の中学生は世界平均より約40分長くテレビを観ているけど、4年前よりは減少している。またゲームで遊ぶ時間は国際平均より約25分、ネットを使う時間は約30分間少ないのだから、それほど不真面目とは言えないのではないか――こんな解釈もできるはずです。もっとも、「ゲームも内容によっては教育効果が見られることが証明されているし、ネットは次世代の必須スキルになる」と考えている僕のような人間にとっては、あまり好ましくない傾向に変わりないのですが。
いずれにしても、この結果だけで「日本の中学生はテレビ漬だ、マズいぞ」という危機意識を煽るのはちょっと乱暴かなと思います(まぁ「テレビ離れ」が叫ばれている中ですから、簡単に信じてしまう人も少ないと思いますが)。もしかしたら学習塾の広告だけに、「元データにあたる・データの読み方を考えるという習慣を付けてもらうため、あえて過剰な表現を使う」という学習効果を狙ったものだったりして?
【○年前の今日の記事】
■ ボトムアップ型ジャーナリズム (2008年5月14日)
■ 代替のある不幸 (2007年5月14日)