代替のある不幸
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化石燃料の代替として期待されている、バイオエタノール。しかしここに来て、その弊害を指摘する声が大きくなっています。このブログでもオレンジジュースが値上げされることについてエントリを書きましたが、テレビや新聞のニュースで報道されているのをご覧になった方も多いでしょう。
僕はもちろん専門家ではありませんが、以下のような問題点があるようです:
- バイオエタノールの原料となる作物(トウモロコシやサトウキビ、麦など)の価格が高騰し、これらの作物から生産される食品(砂糖や小麦粉など)の価格に波及する。
- バイオエタノールの原料となる作物の価格が高騰し、他の作物から転作しようという農家が増える。結果として、他の食品の価格に波及する(オレンジ畑が減ってオレンジジュースが高くなる、など)。
- バイオエタノール生産時(原料の収穫・輸送・加工など)にCO2が発生するため、トータルの収支でどこまでCO2削減効果があるかは未知数。
化石燃料に代わるエネルギーを探すことは、もちろん大切なことです。しかし現時点で見る限り、バイオエタノールを代替としてしまうことには問題が残されていると言わざるを得ないでしょう。仮にバイオエタノールで化石燃料を100%置き換えられたとしても、CO2の増加やエネルギー不足に怯えなくて良くなる代わりに、食糧問題が危機的状況になってしまうかもしれません。
そしてもう1つ、まったく別の問題があります。バイオエタノールという代替燃料が実用化されたことで、「この代替燃料で本当に大丈夫か」という議論が行われるようになりました。しかし本来は、「エネルギー消費をどう抑えるか」という議論が真っ先になされるべきでしょう。バイオエタノール最大の問題、それは「いまの生活スタイルを変えなくてもいいんだ」というメッセージを(意図的ではないにせよ)人々に送ってしまうことではないでしょうか。
問題となるモノに、比較的安全だと思われる代替品を用意する。それは間違ったアプローチではありませんが、根本的な原因解決のアプローチを鈍らせてしまう可能性があります。バイオエタノールにせよ、もっと身近な問題にせよ、苦い良薬から目をそらすことがあってはならないでしょう。
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