ケータイが文化の多様性を守る?
「勉強ができなくなる」「ネットいじめを招く」など、日本では様々な罪を被せられているケータイ。しかし携帯電話があることによって、失われつつある言語が保存されるという意見があるそうです:
■ How the Lowly Text Message May Save Languages That Could Otherwise Fade (Wall Street Journal)
皆さんお馴染み、携帯電話の予測変換機能。これがあることによって、ごく僅かな数のキーでもスラスラと文章を打つことができます。それは他の言語でも同様で、予測変換があれば携帯電話でのテキストメッセージが盛んに行われるようになる――ならば失われつつある言語の保存に携帯電話が役立つのではないか、というのが記事のおおまかな趣旨です。
実際、アイルランドではゲール語の、イギリスではウェールズ語の入力が可能な携帯電話が登場しており、若い世代がこれらの言語に親しむ一因となっているそうです。特にテキストメッセージは、読むという受動的な役割でだけでなく、書くという能動的な役割でも言語が使われるようになるため、保存には有効なのだとか。しかし地球上に現存している約7,000の言語の中で、予測変換機能が対応しているのは80言語に過ぎないとのこと。予測変換機能はおろか、言語自体が対応していない(その言語特有の文字を入力できない)ものも数多くあるのでしょう。
マスメディアの発達によって、各地域の言葉や方言、独特の言い回しの衰退が促進されてしまいました。ネット上のコミュニケーションでも共通言語を必要とする場合がありますから、ある意味でメスメディアと同じ「同調効果」が生まれてしまうかもしれません。しかしネットはマスメディアとは違い、メッセージの発信者が多数存在することができ、またそれの受信者を簡単に見つけることができます。ごく少数の使い手しかいない言語がネット上で生き残っていく、という可能性も大きいのではないでしょうか。逆に「ギャル文字」のような新しい表現方法・文化が生まれるというのも、ネットの「文化多様化力」とでも呼ぶべきものを示していると思います。
ただそのためには、ネット上である言語や方言が使われることを容易にするツールがもっと普及しなければなりません。ケータイ+テキストメッセージ+予測変換というのは、その好例と言えるでしょう。少数のユーザーしかいない言語に対応するということは、企業にとってはおいしい話ではないでしょうが、なんとか非営利団体などと協力して対応を進めていって欲しいですね。